一から学ぶ東洋医学 No.36 蔵象(4)脾 脾の生理と病理 | 春月の『ちょこっと健康術』

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おはようございます ニコニコ

 

昨日はよく雪が降りました。 我が家の庭も真っ白になって。 お~い1号と2号は大はしゃぎ。 夕べも今朝も、庭を駆けずり回ってました。 

 

さて、蔵象もようやく脾に入ります。 脾は消化器系の要。 消化管として働き、その中を飲食物が通過していくのは、胃や小腸・大腸ですが、それらが消化管としての機能を果たせるのも、脾気の作用があってこそです。

 

1 脾とは?

 

まずは、陰陽 医学への応用人体の五行五行 医学への応用などにあるにまつわる情報をまとめておきましょう。

 

・ 脾は臓であり、裏にあってに属す。 五臓の中では、横隔膜の下にあって、陰に属す。

・ 脾は気血生化の源であり、自然界との関係では長夏に相応する。

・ 脾はに開竅する。 脾の液は(せん)。

・ 脾の体は肌肉、華はにある。

・ 脾はを蔵す。 脾の志は

・ 脾と関係の深い五味は、甘味

・ 脾土は、心火を母、肺金を子とする相生関係と、肝木に克され腎水を克す相克関係を成す。

 

これから学ぶ脾の特徴もまとめておきましょう。

 

・ 脾の生理特性: 昇清(しょうせい)、喜燥悪湿(きそうおしつ)

・ 脾の生理作用: 運化(うんか)、統血(とうけつ)

 

『黄帝内経(こうていだいけい)』の『素問 四気調神大論篇』には、長夏の養生法は残念ながらありません。 でも、カラッと暑い夏(の夏)と、湿って蒸し暑い夏(の長夏)を分けたことで、結果オーライでしょ。 五行をうまいこと運用できてますからね。

 

長夏は夏の終わりで、蒸し暑い時季。 収穫の秋に向かって、稲穂が重みを増し、果実が熟し始めるころで、立秋前の18日間です。 ということは、心の病証(1)に、夏の3か月は5月5日から8月6日までって書いたけど、五行で分ければ夏は7月19日まで。 7月20日の土用から立秋前日の8月6日までが長夏になりますからね。

 

『四気調神大論篇』には記載がないので、どうすればいいか? ひとつは、長夏も夏の一時期で、暑さはあるから、夏の養生法を参考にする。 中国では晩夏に相当しますが、日本では梅雨と台風シーズンがあるので、夏の前後になりますかね。

 

もうひとつは、五行を活かす。 自然界・飲食物の五行にある通り、春に芽を出し()、夏に成長()、長夏に実を結び()、秋に収穫()され、冬に貯蔵()されるという五化(五能)があります。 は変化を表していて、花が実に変化する。 春の生気、夏の長気に対して、長夏の化気とできるんじゃない?

 

そこから考えればと思ったけど、おやおや、『四気調神大論篇』の夏の養生法に、「万物は花咲き実を結ぶ」とありました。 ということは、五化のは、夏の長気に収束されちゃうじゃない。 ムムム…。

 

夏を引きずりつつも、そこをあえて分けてみたら、どうかしらね? 夏に乾いていたのが、湿り気を帯びてくるのが長夏。 それで実を結ぶとなれば、キーワードは、夏の「明るくGO!GO!」を受けて、「明るく変身!」とか、「変化を恐れずGO!GO!」とかですかね。

 

2 脾の生理特性

 

(1) 昇清

 

脾気には、上に向かう特徴があります。 そこから、生理物質を上昇させる、組織や器官を引き上げて正常な位置に保つという役割を持つことになりました。

 

(a) 生理物質を上昇させる

 

昇清の清とは、清なるもの、清気のことであり、水穀の精微を指します。 脾は、飲食物から水穀の精微を取り出して、心肺のある胸部へ送る、つまり上昇させる。 で、心や肺の機能を受けて、血や気が化生されて、全身へと送られる。 脾に昇清という生理特性があるから、それが可能となるのです。

 

脾の機能が失調して、昇清がうまくできなくなると、生理物質を十分に上昇させることができず、引いては生理物質の循環も悪化します。 その結果、頭部を滋養できなければ、眩暈や頭痛が起こり、全身の滋養が低下すれば、易疲労や倦怠感などが生じます。 また、消化吸収にも影響して、慢性の下痢を引き起こします。

 

肝にも、昇発という上昇させる性質がありましたね。 肝の機能が失調すると、眩暈や頭痛が起こるとも。 気機としては、同じ上昇ですが、大きく違うのは、肝の場合は亢進しやすいけど、脾の場合は低下しやすいという点。 なので、眩暈や頭痛と言っても、その様子は異なっていて、肝は実証性、脾は虚証性となります。

 

(b) 組織・器官を正常な位置に保つ

 

組織や器官は、五臓の気機の協調によって、正常な位置を保っていますが、特に、脾の昇清が深く関わっています。 下がるほうは、重力でも下がりますけど、上げておくには、それなりの働きが必要。 その働きを脾の昇清が担っていると、古代の医家たちは臨床経験から割り出したのでしょう。 脾が弱って、昇清が低下した状態では、胃下垂、子宮脱、脱肛などの内臓下垂が起こりやすくなります。  

 

(2) 喜燥悪湿

 

読んで字のごとく、乾燥を喜び、湿気を嫌う性質です。 水穀の精微は水と穀ですから、水穀の精微をつくりだす脾には、水もたっぷり存在する。 つまり、水液は過剰になりやすい。 そうなるのを防ぐのが、温燥をもたらす陽気の働きなので、喜燥悪湿となります。

 

脾は、水液が溜まりやすいからこそ、水液をさばいて停滞しないようにする役割も担うワケですが、水液過剰で痰湿が生じると、脾陽の働きが弱められてしまうため、後述する脾気の運化作用に影響して、大便溏薄となります。

 

3 脾の生理作用と病理

 

(1) 運化

 

運化の運は運搬、化は変化という意味です。 飲食物を水穀の精微に変化させて、心肺のある胸部へ運ぶ作用を運化と言います。

 

(a) 飲食物を水穀の精微に変化させる

 

水穀の精微は、飲食物に含まれ栄養物質。 体内では後天の精となり、さらに気、津液、血に化生し、腎精ともなる。 このあたりは、精の生理と病理で解説していますが、書き忘れていることがありました。 それは、気・血・津液に化生しなかった後天の精は、五臓に分配されて、その残りが腎精になるってこと。 

 

後天の精は五臓に分配される。 分配された後天の精は、五臓で何をしているか?というと、気血に転化したり、五臓を滋養したり…ですから、結局、腎精との線引きは難しくて、ぶっちゃけ分ける必要はないかなぁ…と思います。

 

さて、本題に戻りましょう。 飲食物から、水穀の精微を取り出す。 すなわち、後天の精を化生するのが、脾の運化作用となります。 そして、気・血・津液は後天の精から化生するので、水穀の精微を取り出す脾は、「後天の本」とか「気血生化の源」と呼ばれます。

 

運化が失調すれば、飲食物の消化・吸収が悪くなるので、食欲不振となります。 消化・吸収できないから、食べられない。 そんな状態になれば、生理物質の化生にも影響します。

 

気血の化生が少なければ、身体が弱ってくるのは必定。 倦怠感や無力感を生じ、病気にもかかりやすくなるし、いずれ痩せてやつれてしまいます。

 

津液の化生が少なければ、飲食物に含まれる水分はそのまま下へ、胃から小腸・大腸へと送られる。 となれば、便が水っぽくなって、大便溏薄となります。

 

また、水液の停滞も引き起こしやすくなりますから、痰湿が生じやすくなる。 痰湿が生じれば、喜燥悪湿に反してしまうので、脾陽の働きが鈍って、さらに運化が悪化するという悪循環に陥ります。

 

(b) 水穀の精微(後天の精)を心や肺に運ぶ 

 

脾の昇清という生理特性によるものです。 心と肺は横隔膜より上、脾は横隔膜より下にありますからね。 心と肺に運ばれた後天の精は気血となって、全身へと送られるのは前述のとおり。

 

運化が失調すれば、生理物質の化生が不足します。 気が不足すれば、息切れ、易疲労、倦怠感などが、血が不足すれば、眩暈や不眠などが起こります。

 

(2) 統血

 

脾気の固摂作用によって、血が脈から漏れ出ないようにする作用です。 したがって、脾の統血が失調すれば、血が脈から漏れやすくなる。 つまり、皮下出血、血便、血尿、崩漏(不正性器出血)など、種々の出血症状が起こりやすくなります。

 

4 脾の関連領域

 

(1) 口と涎(せん)

 

人体の五行にあったように、口は脾の官(脾が主る感覚器)で味覚に関与しており、涎は脾の液として口を潤しているので、消化・吸収機能の一端を担っていると言えます。 また、口は胃への入り口であり、胃に入った飲食物が脾に運化されるので、胃の状態も口に反映されます。 そのため、脾胃の不調は、↓下記のような症状となります。

 

・ 涎による潤い不足 → 口乾や口淡(味覚鈍麻)

・ 胃熱の上昇 → 口内炎、歯肉炎、口渇

 

(2) 肌肉と唇

 

肌肉は脾の体(脾が主る身体組織)で、唇は脾の華(栄養状態を表す部位)です。 唇は、肌肉の一部であり、口を形成する一部分でもあります。 なので、唇の色艶は、脾の状態を反映するのです。 脾の不調は、↓下記のような症状を引き起こします。

 

・ 肌肉の滋養不足 → 四肢の無力感、萎縮

・ 唇の滋養不足 → 唇の乾燥、唇の色艶が悪い

 

(3) 

 

神の生理と病理にあるとおり、『黄帝内経』の『霊枢 本神篇』に、「脾は営をおさめ、営は意をやどす(脾蔵営、営舎意)」とあります。 この場合の営は、栄養物質であり、営気のこと。 つまり、脾の運化がちゃんと機能していれば、営気は充実して、意も正常に働くということになります。

 

意は、思考・推測・注意力・記憶などの精神活動です。 意の機能が失調すると、思考がまとまらない、順序立てて話をすることができない、注意力が散漫になるなどの状態になります。

 

(4) 

 

思(し)は、思考・思慮のことであり、情志に入ってはいますが、思惟活動ですね。 情志としてとらえるならば、ちょっとしたことで思い悩むとか、すぐ考え込むとか、そんな感じでしょうか。 気機を鬱結させる作用があります。

 

過ぎたことをクヨクヨ思い悩むとか、起きてもいないことを心配して、あれこれ取り越し苦労するとか、思慮も過度になると、気機が鬱結して、脾の運化を阻害します。 また、脾の運化が失調すると、思慮過度となります。

 

(5) 甘味

 

『黄帝内経 素問 陰陽応象大論篇』に、「中央は湿を生ず。 湿は土を生じ、土は甘を生じ、甘は脾を生じ、脾は肉を生じ…」とあり、甘味が五行ので、も同じくとされました。

 

甘味には、気血を補う、調和させる、肌肉や臓腑の緊張を緩める、痛みをやわらげるなどの作用があるとされています。 適度に摂取すれば、脾胃を調和してくれますが、過剰になれば、脾の運化が失調し、肌肉が緩みすぎてプヨプヨになります。

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

 

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