これまでのお話
実家をしまう ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯
木々の伐根や敷地の残留物の掘り起こしは、私達が母屋を片付けている間に行われた。
解体業者さんだけが来て作業してくれた時もある。
残留物は少し残っていたようだが、これからも他の作業の合間に行われる予定だそうだ。
また今後、敷地内にある井戸、氏神様、母屋の神棚も撤去しなければならない。
以前、敷地内に井戸があることを解体業者さんに告げた時、彼はボソッと言った。
「こえ~な 」
その時、私は「おっやっぱり井戸を埋めるって怖いんだ」と思った。
また、以前実家の土地に家を建てようと思ったことがあり、ハウスメーカーの人に来ていただいたことがある。
その時もその人が、「井戸は怖いですからね。」と言っていたのを思い出した。
結局、家は建てなかったけど・・。
オカルト好きの私としては、井戸の怖い話はたくさん知っている。
だからもちろん、井戸を埋める際のお祓いはしようと思っていた。
けれど、解体のプロの方やハウスメーカーの人が声に出して「怖い。」と言ったことによって、井戸の恐ろしさが信憑性を帯びた
井戸は昔から人々のライフラインだった。
中には井戸を持たない世帯もある。
そういう世帯は、井戸を近所に借りに行かなければならない。
そうした時、井戸を貸す側は、借りる相手が気に入らなければ、いくらでも嫌がらせができたらしい。
特に借りる側は、どんな仕打ちにでも耐えて、頭を下げて借りなければならないのだ。
井戸はライフラインだから。
そういういざこざで、井戸には人々の怨念が籠るそうだ
その怨念は永いこと井戸に残っているとのこと・・・
だって、水を手に入れられるかどうかは、人の命にかかわることだから・・・。
ま、オカルト的に言えばだけど。
とりあえず、うちのご祖先様がご近所と仲良く井戸を分けて使っていて、怨念が極力少ないことを祈る
科学的に言うと、水脈のそばの電磁波が健康に影響するとかなんとか・・・
詳しくはないけど、そんな話を聞いたことがある
でも永い間解体業をやっている方が怖がるということは、やっぱり井戸を埋める前のお祓いは必須だと思った。
今回は井戸、氏神様と神棚、3か所一辺に、樹木伐採時にお祓いをお願いした神主さんに頼もうと思った。
神主さんにもう一度連絡してみた。
今回もとても快く引き受けてくださった。
奥様も神職資格をお持ちで、今回は一緒にお祓いして下さることになった。
以前は冬だったけど、今回は夏である。
だから、尾頭付きの魚は生ではなく、煮干しで良いことになった。
一度経験しているので、今回は余裕をもってお願いできたし、供物もちゃんと用意できた。
初穂料は平均的な金額×3にした。
お祓い後、神主さんたちがお帰りになってから、奥様から連絡があって、「こんなにたくさん・・。」って恐縮されたけど、400年の歴史を仕舞うのだから、徹底的にやりたいと思って3か所分お包みした。
お祓いの予約時に、神主さんが、
「お祓いに参加する人は何人ですか」
と訊いてきた。
参加者の人数によって、お供えする木の数が変わるらしい。
私は今回も私ひとりでいいと思っていたのだけれど、そう言われれば、母や弟も参加した方がいいのかもしれないと思い直した。
弟は平日で来られなかったが、母は参加することになった。
また、「もしかすると解体業者さんも参加したいかな」と思い、訊いてみた。
すると、「ぜひ参加したい。」とのことだった。
この返事で、「やっぱり井戸を埋めることって、恐れられているんだ お祓いって大切なんだ」と思った。
神主さんには3人で参加する旨伝えた。
お祓いの日、神主さんと奥様が来てくださった。
解体業者さんも御神酒を持ってきてくださった。
母は立っているのが辛いので、椅子に座って参加した。
神主さんたちの衣装は薄いので、蚊がたくさん飛んでいる場所では気の毒だった。
虫よけスプレーをして頂いた。
私達も虫よけスプレーをした。
でも神主さんたちは、蚊がいることなんて全く意に介さず、本当に厳かにお祓いをしてくださった。
お二人ともよく通った美しい声でお祓いして下さり、その場がスッキリと清められている気がした。
こうして、氏神様と井戸を撤去することができるようになった。
また、大昔から居間にあって、かまどの煙ですっかり黒くなっていた神棚は、神主さんが持って帰ってくださった。
実家から神様がいなくなったのは、ちょっと寂しかった。
だけど、心は本当にスッキリした
お祓いって、いいな~
不用品でグチャグチャだった実家も、片付けてお祓いをしたら、清められているような気がした。
空気がきれいになるっていうの
そして実家を既に出ている私達の気持ち胸のつかえ胸のモヤモヤなんか重い物
表現が難しいけど、私達もスッキリしたような気がした。
今まで、「ミニマリストってどうよ」
って思っていたけど、片付けって本当に心にも身体にも良いのかもしれないと、実家じまいが進んでいくにつれ実感した。