これまでのお話
実家の柿の木が樹齢１００年以上ということで、その木の伐採に当たり、私は急に祟りを恐れた
そこで、地元で出張でお祓いしてくださる神主さんを見つけて、連絡してみた。
しかし、それは伐採の２日前の事である。
もしお祓いしていただくのであれば、可能な日は伐採の前日、たった１日しかない。
なんで早く思いつかなかったのだろう。
それまでダラダラしていた自分の怠慢を悔いた。
私は連絡がついた神主さんに訊いてみた。
「あのー、あさって庭の樹木の伐採をするんですが、その木の樹齢が１００年を超えていまして・・。
最初はお祓いとか考えていなかったんですが、あまりにも歴史のある木なので、急に怖くなりまして・・。
突然で申し訳ありませんが、今から伐採までの間に、お祓いとかしていただけますか
」
なんて無理な問い合わせ
神主さんにだってご都合というものがある
大変申し訳ない
すると神主さんが答えてくださった。
「明日の午前中、時間は朝早くなりますが８時くらいでしたら、お伺いできます。」
な、なんと
お祓いしてくださる
絶対にやってもらった方がいいと思った私は、
「ぜひお願いします。」
と言った。
こうして、樹齢１００年を超える樹木の伐採の前日、その木を含めた他の樹齢の永い木々のお祓いをしていただけることになった。
それから、神主さんが言った。
「お祓いに際して、ご用意していただくものがあります。
まず、尾頭付きの魚３尾（５尾だったかもしれない）。
野菜、果物、それぞれ直径30ｃｍのお皿に盛りつけられるくらい。
昆布
お米、２合（だったような気がする）。
お酒、720ｍｌ１本（だったような気がする）。
塩・・・。」
それぞれの量の詳細は忘れた。
私はすぐにそれらを購入するためスーパーに行くことにした。
でも、
尾頭付きの魚って、買ったことないな。どれがいいんだろう
とか、
大根って30ｃｍの皿に乗るか
きのこは野菜だったっけ
果物の産地は日本の方がいいのかな
とか、
昆布って大きさ色々あるけど・・
お酒は純米吟醸がいいのかな
塩は粗塩か
など、色々な疑問が湧いた。
そこで、
新鮮な魚に特化したスーパーを選んだ。
尾頭付きは、いわししか見つからなかったのでそれを買った。
大根もきのこも買うことにする。
果物はなるべく日本産のものにした。
バナナとかは、なんか違うよね
昆布は日高昆布にした。
お米は家のお米がそれなりに良いお米だったので、それをジップロックに入れて用意した。
でも無洗米でいいのか、ちょっと悩んだ。
お酒は純米吟醸にし、塩は良さげな粗塩にした。
神様にお供えするものだから、なるべく良いものを選んだ。
また、神主さんにお祓い料はいくらなのか訊いてみた。
すると、
「お気持ちで。」
と言う。
お気持ち
いったい、いくらなの
そうなんだ こういう時ははっきり金額を言わないんだね。
どうしたらいいのか少し悩んだ。
で、ネットで調べて平均的な金額を選んだ。
初穂料を入れる祝い袋も購入し、必要事項を記入した。
そうして翌日、樹木の伐採のためのお祓いすることになる。
お供え物は何度も間違えがないかどうか確認した。
なぜなら、チャンスはたった１日しかなかったので、やり直しはきかないからだ。
お祓いの時間は朝の８時で、スーパーは開いていないから、買い直しもできない。
前日はとても緊張した。
でも、お祓いしてもらえることになって良かった。
寒い寒い冬の朝。
きっと時間外労働だろうと思う。
そんなお祓いを引き受けてくれた神主さんに心から感謝する。
そして翌々日、柿の木と一緒に伐採される予定の梅の木は、満開の花を咲かせていた。
