これまでのお話

実家処分を決意するまで

実家をしまう              

 

2階建ての納屋の掃除は長いこと続いた。

弟と夫は週末の都合の良い時しか来ないので、合計1ヵ月半くらいはかかったように思う。

 

父の荷物が、納屋の一番奥の収納部からたくさん出てきた。

主に本と写真だった。

 

本は世界名作全集とか百科事典みたいなものが多く、全40巻セットとか30巻セットとか、なかなかボリュームがあった。

 

もしかするとそれらは、メルカリで売れるんじゃないかと調べてみたけれど、他の出店者たちの例では、どれも送料のみの請求で、本の本体はタダ同然で売られている感じだった。

なので、私達はそれらをメルカリで売るのはあきらめた。

 

本は一部湿気でしおれているし、カバーが傷んでいるものもある。

 

なので、結局それら全ての大全集的な本たちは、紙のリサイクルの日に捨てた。

物凄い量だったと思う。

大全集的なものだけで、150冊とかあったも・・・。

 

父は私たち子供のためにこれらの本を買ったのかもしれない。

ただ父には申し訳なかったが、私たち子供は、それらに興味がなかったと思う。

 

父はそれらの本を購入しては、しばらく私達が興味を引くような目につく場所に並べて、様子を見ていたのかもしれない。

でも、何年たっても、誰も手に取らず・・・えーん

 

やがて父の期待もそがれていき、ある年の3月、荷物を整理する日に、父はそれらの本を納屋の奥にしまったのだろう。

 

父はこれらのたくさんの本を、私達に喜んでもらいたかったのかもしれないが、今回、1ページも私たちにめくられることもなく、捨てられていく本が殆どだった。

 

これもまたこれで、虚しいな、と思った えーん

 

私たち子供3人は、誰も父と母の成績や学歴を越えられなかった。

 

父や母は子供の私達から見たら学歴的に凄い人だったので、その二人から生まれた子供たちだから、父母の期待も相当大きかったことと思う。

 

子供たち3人とも父母からの期待に応えられず、まあ、愛されていたのかもしれないが、あんまり父母から褒められた記憶もなければ、こちら側が喜ばせた記憶もない。

 

実家をしまうのって、なんかモヤモヤする。

特にうちみたいに荒れ果てた実家は・・・。

 

今回父が、私達が本に興味をもつことを期待していたけれど、段々と諦めて本を納屋にしまい込む姿まで想像できてしまった。

父に見放されて納屋にしまい込まれる本たちが、ふと自分と重なった。

 

実家で大切にされていなかった物をみていると、実家にかつて存在していた自分も粗末に扱われていた様に思えて、悲しかった。

自分の子供たちにはこんな思いをさせないように、私自身は、今の自宅をきれいな実家にしていこうと、心から思った。

 

そして今回の実家じまいで、父から期待された形跡も消し去って、この歳になってやっと父からも解放されたように思った。

実家をしまうのって、気力も体力も、相当必要だな、と思った。

なんだか、とても切ない。

 

実家と共に消される運命の百合たち。