UFO騒動は、1950年にアメリカのニューヨーカーなどの報道で始まりました。
空飛ぶ円盤(フライング・ソーサー)という名称も、このとき生まれたものです。
フェルミのパラドックスは、この年、ニューヨーカーの報道を受け、宇宙人の存在について、科学者仲間で雑談したときに生まれました。フェルミは、イタリアの物理学者で、いろんな逸話のある人です。
1938年に中性子照射による放射性同位元素の発見で、ノーベル賞を取っています。理論物理をやっている人には、それ以上に、電子などを示すフェルミ粒子の方がしっくりくるのではないでしょうか。パウリが見つけた「パウリの排他則」に従う電子のような素粒子は、フェルミとディラックの統計にしたがうので、フェルミ粒子と呼ばれます。(光子のような素粒子はボースとアインシュタインの統計にしたがうので、ボース粒子といわれます)
1950年のUFO騒ぎを受けてした雑談の中で、フェルミが放った「それにしても、みんな(宇宙人)、どこにいるんだ?」という一言が、のち、フェルミのパラドックスとして有名になりました。
この一言は、地球外知的生命(ET)の恒星間飛行について述べたセリフです。
フェルミは、もし、ETが実在するなら、当然、地球にも来ていなくてはいけないはずなのに、なぜわれわれはETを見ることがないのか、という疑問を呈したのです。
一方、アメリカの報道機関はフライング・ソーサーについての無責任な記事を垂れ流し、UFOはアメリカの文化の1つになりました。
その中でも有名なのは、アダムスキーという新興宗教の人が、私は金星人に遭遇し、その文化にふれた、というような本を出版たことでしょう。このとき、アダムスキーが紹介したUFOの図がのちに「アダムスキー型円盤」と呼ばれる、下部に3つの半球があるタイプのUFOです。
アダムスキーの本によれば、その「金星人」は美しい金髪と、男女ともととのった容姿の人々だったそうです。
ところで、宇宙人という発想については、アメリカのUFO騒ぎより50年ほど前、1898年に、イギリスで出版されたH・G・ウェルズの『宇宙戦争』があります。火星人が地球に攻め入るというSF小説です。ジョージ・パルの映画が有名ですが、あのスピルバーグもリメイクしています。
さてさて、宇宙人報道の真偽はともかくとして、地球外知的生命については、科学の世界でもわりとマジメに考えられてきています。今回の「これ、科学?」第4話では、それを扱いました。
UFOは「未確認飛行物体」であって、「宇宙人の乗り物」という意味ではありません。それが、いつの間にかゴシップ誌の記事同様に「UFOは宇宙人の乗り物」という間違った「常識」が幅を効かすようになりました。
ぼくが以前、開洋丸の事件を「アメリカ空軍ではよく知られているレーダーの天使と呼ばれる電磁波の蜃気楼現象の克明な記録にあたる」とブログで書いたとき、ヒステリックに「専門家が観測して専門誌に書いているのだから、UFOを見たということを認めないのはおかしい」旨のコメントをいただいたことがあります。『サイエンス』の該当記事を読めば、執筆者がそのような主張をせず、出会った現象について非常に克明な記録をしていることが明らかだと思うのですが・・・(ざんねんながら、このブログはアメブロではありませんので、そのコメントをみていただくことはできません。ただ、この記事についてはアメブロでも「UFOの日に思うこと」という記事に書きましたので、そちらをご覧ください)
そのコメントを書かれた方は、科学とは何かという根本がおわかりになれなかったのでしょう。
その方には、ぼくの敬愛する物理学者ファインマンが「科学とは、専門家を信じないことだと定義してもいい」とまでいっている意味を、理解していただきたいですね。
これはあくまでもぼくの妄想なのですが、『日経サイエンス』が『サイエンス』から誌名を変更したのは、さきほどの「開洋丸」の記事を載せてまもなくのことでしたから、UFOや超能力のことは確証がないかぎり掲載しないという本家の「サイエンティフィック・アメリカン」誌との間で、何か問題が起きたのかもしれません。
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