火星人がいっぱい1 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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火星人02
 

とっぴ「やほほーっ」
ひろじ「やあ、ひさしぶり」
とっぴ「久しぶり、じゃないよ。最近、ひろじさん、ぼくらのこと、忘れてない?」
ひろじ「いやいや、そんなことはないんだけど・・・」
あかね「わたしたちと話すと、長くなるからめんどくさいんでしょ?」
ひろじ「いや、いや、いや・・・あはは」
あかね「ひろじさん、考え方を学ぶのは対話からなんだって、力説していたでしょ。なのに、わたしたちとの対話を避けるのは、おかしいでしょ」
ろだん「そうだな。おれ、けっこう、ここに来て話すの、おもしろくなってきてたのに」
ひろじ「ハイ・・・ハイ・・・すみません」

とっぴ「あれ、ひろじさん、何を持っているの? CD-ROMと・・・本・・・『わたしたちはなぜ科学にだまされるのか』・・・?」
ひろじ「うん、こっちのCDーROMはサイエンスのバックナンバーだよ。5年間分が1枚になっているので、手に入れたんだ。2000~2004年と、2005年~2009年の2枚。雑誌がたまって置き場所に困っていたから、こういう電子書籍は助かるよ」
あかね「本は? おもしろそうなタイトルの本だけど」
ひろじ「アメリカのメリーランド大学のロバート・L・パークという人の本だよ。メリーランド大学は自然科学教育にも熱心で、ウェブサイトで「いきわく」みたいな実験を紹介しているんだ。パークさんはアメリカでは詐欺師まがいのトンデモな人たちのウソを糾弾する記事をたくさん書いている人でもある。この本の原書名はVOODOO SCIENCE、つまり呪術的な科学、という意味で、日本語に訳せばトンデモ科学、とでもなるのかな。邦訳のタイトルは、現代の意味とはちょっとニュアンスが違うかもね」

とっぴ「でさ、冒頭のイラストの・・・ステキなおねーさんは誰なの?」
あかね「なに、それ。それが聞きたかったの?」
ひろじ「これ? ああ、前に授業で使ったプリントに載せたイラストでね。SF小説に出てくる火星人の姿を書いたんだ」
とっぴ「ええ? 火星人っていえば・・・タコみたいなのじゃないの?」
あかね「何それ、タコって」
ひろじ「とっぴくんは、よほどそういうの好きなんだね。火星人といえばタコっていうのは、昭和の時代の感覚だからなあ。タコ火星人は、H・G・ウェルズの【宇宙戦争】に登場する知能の高い、われわれより進化した宇宙人の姿だよ。脳が大きくなり、科学技術が発達して運動をしなくなるので四肢が弱る。それを映像化すると、こんな感じになる」
 

 

火星人01

 


とっぴ「わ、なんか気持ち悪い。さっきのおねーさんの方がいいな」
ひろじ「冒頭のイラストはE・R・バロウズの【火星シリーズ】に出てくる火星の王女をぼくのオリジナルで描いたものだよ。本に載っているイラストはもっとすばらしいけど、無許可でプリントに使うのは気が引けてね。原作のイメージから勝手にイラスト化して使ったんだ」
ろだん「なんか、ぴんとこないな。宇宙人っていえば・・・ほら、なんてったっけ・・・小さくて、目がでっかくて・・・ひょろひょろしている・・・」
むんく「グレイ」
とっぴ「そうそう! UFOで墜落して、宇宙人がつかまって・・・解剖される映像が・・・」
あかね「もう! ・・・やめてよ、そういうの。とっぴはいつもそういうのをおもしろがるんだから。偽物に決まってるでしょ」
とっぴ「まあ・・・あの映像は有名な映画監督が作ったウソ映像だったって、監督がばらしてたけど」

ひろじ「このパークさんの本には、今話題にあがった【グレイ】の話が紹介されているよ。いわゆる【エリア51】の話だね。UFOが墜落して、宇宙人の死体が軍によって持ち去られたという都市伝説」
とっぴ「それだよ。さっきの解剖の映像!」
ひろじ「軍が情報を出し渋ったので疑念がますます高まって収集がつかなくなったんだけど、パークはある事実が公表され、UFO信者もそうでない人たちも、衝撃を受けたと書いている」
ろだん「興味あるな。どんなことが公表されたんだ」
ひろじ「当時の軍はソ連との軍拡競争のまっただ中にあった。ソ連の核実験の様子を地球を伝わる音の低周波を観測することで調べようというプロジェクトが進み、そのための装置を積んだ極秘の気球が上げられた。ロズウェルの【事件】は、その残骸を引き上げるのを目撃され、UFO騒ぎが広まるのを、機密上の目的から、軍が放置(もしくは歓迎)したことから広まったんだって」

ろだん「おれ、そっちの話の方がおもしろいな」
とっぴ「でもさ、UFO自体はあるんじゃない? いろいろ目撃例もあることだし」
あかね「幽霊の話のときみたいに、ごまかされないわよ。UFOだって、目の錯覚や、思い込みに決まってるわ」
ろだん「おれも、そう思うな」

とっぴ「え、みんなUFOって、信じないの? だってさ、宇宙はこんなに広いんだから、どこかにぼくらと同じように、文明があったって、不思議じゃないだろ。それとも、この広い宇宙で、人間みたいな生き物がいる星は地球だけだっていうの? それこそ、根拠がないじゃん」
あかね「とっぴったら、こういう話題になるとむきになるんだから。科学の話題ならつきあうけど、科学もどきの話はやめて。つきあいきれないから」
ひろじ「まあまあ・・・じゃあ、科学の話題で、UFOの話題、ならいいかな」
あかね「え・・・そんなの、あるの?」

ひろじ「こっちの本を見てごらん」
あかね「サイエンス・・・1988年9月号・・・なにこれ?【ぷらすわん・調査船開洋丸の見た未確認飛行物体】って・・・UFOの記事?・・・科学雑誌に?」
とっぴ「ええーっ、見せて見せて!」
ろだん「本当だ・・・ちゃんとした科学記事だぜ」
ひろじ「報告を書いた人は信頼のできる科学者で、サイエンスはそういう疑似科学の記事はいっさい載せない雑誌だったから、当時、すごく話題になった。科学雑誌にはめずらしく、店頭に並んでまもなく、どの本屋さんでも売り切れてしまったくらいだ」
とっぴ「ふふーっ、へへへーん」
あかね「なによ、その勝ち誇ったような目は!」
ひろじ「ぼく自身にとっても、この記事は大きな謎だったんだ。海洋現象観測の専門家が、こういう雑誌にこの手の記事を載せるのは、覚悟がいる。記事の内容も科学の手法をていねいになぞった本格的な内容だった」
とっぴ「ほらほらほら」
あかね「まさかとは思うけど、もうちょっと詳しい話を聞きたいわ」
ひろじ「うん。こちらの記事はデータ化されていないから、CD-ROMでは手に入らないし、日経サイエンス(当時の雑誌名はサイエンスで、アメリカで刊行されている【サイエンティフィック・アメリカン】の日本版。このUFOの記事を掲載してしばらく後、日経サイエンスという雑誌名に変更された)のウェブサイトでも、記事がデータ化されているのは2000年以降だから、今は記事内容を読むのは難しいかな」

あかね「それで? どういう話なの?」
ひろじ「かいつまんでいうと、1984年12月に、二回にわたって、開洋丸のレーダーが異常な飛行物体をとらえた、という報告だよ。ところが、レーダーに移っている飛行物体の姿は肉眼では見ることができない。レーダーの飛行物体は通常の飛行機などでは考えられない動きをしていたので、報告者たちは【未確認飛行物体】の観察例として、科学的に価値があるものと考えて、記録の雑誌公開に踏み切った、ということだった」
とっぴ「ほらほら、やっぱり、ほらほらほら!」
あかね「いちいち、自慢しないで! ・・・わたし、なんだか、その記事、信じられないわ。何かの見間違えじゃないかしら」
とっぴ「それはないよ。報告している人は、その道の専門家だよ。間違うはずないじゃん!」
あかね「それはそうだけど・・・」
ろだん「いや、待てよ。それはどうかな。専門家だって、間違うことはあるぜ。だって、科学の歴史って、間違いの連続だったんだろ。実験してると、そう思うよ。たくさんの間違いの中から、真実を見つけ出すのが科学だって。実験なんて、そうそう理論通りにうまくはいかないんだからさ」

ひろじ「ろだんくんは、こういうとき、本当に心強いね。ぼくもそう思うよ。でも、ぼく自身も長く疑問だったんだ。肉眼で見えなくて、レーダーでしか見えない物体って、何なんだろうって」
とっぴ「どういうこと?」
ひろじ「そもそも、物体が見えるってことは、光を乱反射するからで、言い方を変えれば、光によって影ができるということでもある。光は波だから、波によって影ができたり反射したりするのは、物体が波の波長に対して大きい場合に限られる。物体が波の波長程度の大きさになると、波は反射せず、散乱するようになる。この場合、物体の姿を波によって見ることはできなくなる。散乱現象のもっとも代表的なのは大気中の分子のゆらぎやチリによる散乱で見える青い空だけど、この現象では、空に浮かんでいるチリの像は決して見えないね。だから、肉眼で見える物体は可視光の波長よりかなり大きい物体に限ることになる」
あかね「そりゃ、そうなるわね」

ひろじ「逆にいえば、肉眼で見えない物体というのは、可視光の波長程度より小さい、ということだよね。レーダーで使っている電波の波長は可視光よりずっと長いから・・・」
あかね「あ! レーダーでは、物体が見えない!」
とっぴ「え? え?」
ひろじ「だから、肉眼で見えないのにレーダーで反応するというのが、どうしてもわからなかったんだ。まあ、屈折率の関係や反射率の関係で、大きさだけでなく、材質によってもいろいろ条件が変わるから、可視光にとっては透明でも、レーダーの電波にとっては不透明なものも、もちろん考えられるけどね」

とっぴ「で? ・・・どうなの、このUFO現象は?」
ひろじ「サイエンスでは、この記事の続編はなかった。もともと、日本のサイエンスが独自に載せた記事だから、サイエンティフィック・アメリカンの観点からしたらルール違反ということになるだろうね。ネイチャーと違って、サイエンティフィック・アメリカンは、この手の記事は滅多に載せないから」
とっぴ「なんだか、もやもやするなあ」
ひろじ「とっぴくんのもやもやが始まったね。でも、ぼく自身にとっては、それからずいぶん経って、解決がついたよ」
とっぴ「え! 何?」
あかね「どういうこと」
ひろじ「カール・セイガンという科学者が晩年に書いた本【カール・セイガン科学と悪霊を語る】に、これと似た現象の記述がはっきり書かれていたんだ」

とっぴ「その話、聞きたい!」
ひろじ「セイガン博士はUFO現象の様々な例の一つとして、レーダーにだけ映るUFO現象を書いているんだ。アメリカ空軍は、こうした事例を山のように持っているから、経験も豊富なんだろう。これは昔から【レーダーの天使】と呼ばれる、関係者の間ではよく知られた現象なんだって」
ろだん「おもしろくなってきたな」
ひろじ「蜃気楼というのを知っているだろ。大気の逆転層など、大気の密度の変化によって、光の進路が曲がり、物体の像が別の場所に現れる現象だ。【レーダーの天使】はこの現象のレーダー版だと思えばいい。電波も光と同じものだから、大気の密度が違えば屈折する。そこに実体がなくても、電波の像がそこに現れれば、レーダーにかかるし、気象条件によって現れる象だから、通常の物体とはかけ離れた運動をする。尋常じゃない速度で動いたり、あり得ない大きさになったり」
とっぴ「うわあ・・・」
あかね「それなら、わたしも理解できるわ!」

ひろじ「でも、気をつけなくてはいけないことは多いね。科学の本質を知らないと、いろんな誤解を招く。他のブログで、この話を内容だけ紹介したことがあるんだけど、それにおもしろいコメントがついたんだ。貴重なコメントだったんで、削除せずに今でも残してあるんだけど」
ろだん「どういうコメントなんだ。ちょっと、知りたいぞ」
ひろじ「そこには、だいたいこんなことが書かれていた。サイエンスのその記事は、その道のプロ、専門家が書いたものだから、間違えるはずはない。だから、UFOは幻でなく、専門家が見たといっているんだから、存在したに違いない・・・って」
とっぴ「それは、おかしいよ!」
あかね「あれ、とっぴ、さっきまでといってることが反対よ」
とっぴ「違うよ。ぼくがいいたいのは・・・専門家が書いたものだから信じられるっていう姿勢が、科学じゃないと思うんだ・・・誰かがいうことをそのまま信じるのは、科学じゃなくて、宗教だろ!」
あかね「・・・とっぴ、ときどき、すごいこというのね」
ろだん「おれも、ちょっと感動した・・・」

むんく「疑問を持つことが科学である」
ひろじ「むんくくん、ファインマンの言葉を覚えていたんだね。その通り、自然科学の本質は、ありとあらゆることを疑いの目で見て、その中から真実を探し出すことにある。残念ながら、本職の科学者といわれる人の中にも、その作業をおろそかにしたり、意識的にごまかす人がいる。こういう人たちは、科学の名を騙っているだけだと思うよ」
あかね「そうね。気をつけないと、その誘惑に負けることがあるかもしれない・・・」
ろだん「まあ、知っていてウソをつくのはしないだろうけど、いちばんそういう勘違いをやらかしそうなのは、とっぴだと思うけどな」
とっぴ「えーっと・・・」
ひろじ「今日は思わぬ話になったね。でも、科学を学ぶのにもっとも大切な話でもあったと思うよ」
とっぴ「そう、それ!」
あかね「調子いいわよ、とっぴ!」

 

 

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