今日はUFOの日だそうです。アメリカで初めて「空飛ぶ円盤」が報告された日が1947年6月24日。ケネス・アーノルドという人が自家用の飛行機で見たものの報告で、新聞にも取り上げられました。
9機の編隊をくんだ尾翼のない飛行物体が、ジグザクに飛んでいたという報告だそうです。彼の報告によれば物体はひらぺったい円形で、三日月形のものも混じっていたとか。
諸説ありますが、どうやらアメリカ・シロ・ペリカンの群れだったのではないかというのが、有力な説のようです。その動画も見ましたが、たしかにグライダーが編隊を組んで飛んでいて、ときおりひらりひらりと向きを変えます。
このスタンプがかわいかったので、UFOにまつわる記事を書くことにしました。UFOなどの疑似科学的現象については、このブログでも、ときどき、話題にしているので、他記事とも読み比べてみてください。
さて、ぼくの描いた冒頭のイラストも、今日アメブロでもらえたスタンプも、特徴のある形の円盤ですが、これは「アダムスキー型円盤」と呼ばれるもの。こちらもイギリス生まれながら、ほとんどをアメリカで暮らしたジョージ・アダムスキーが、1952年に宇宙人(金星人)に遭遇したという記録『空飛ぶ円盤同乗記』を1953年に出版したことで有名になりました。
ぼくもこの本の邦訳を持っていたのですが、なくしちゃったんですよね。この本に登場する金星人は、男女とも長い髪の美男美女。ぼくがこの本を手に入れて読んだのは、たしか、高校生〜大学生くらいのときだったと思うのですが、「金星人」という字面に衝撃を受けました。だって、金星人ですよ、金星人!
アルファ・ケンタウリから来たとか、プレヤデス星団から来たとか、そういういかにもの設定ではなく、お隣の惑星、金星!
うーん・・・美女金星人や美女火星人が出てくるのはバロウズのヒロイック・ファンタジー(当時はそういう呼び名がなく、スペースオペラと呼ばれていました)くらいですよ。当時のSF小説はもう少し宇宙についてきちんとした知識を手に入れた上で想像力を働かせ、傑作が量産されていましたが・・・
こともあろうに、金星人・・・
すごいです。
ちなみに、東宝のゴジラシリーズでも、金星人を名乗る宇宙人が登場するのがありますが・・・あれは、わざとだと思いますので、比較しないでおきます。
今、宇宙人と言えば、小さな体にでっかい目の「グレイ」と呼ばれる宇宙人像が一般的ですが、一昔前は、アダムスキーの広めた金星人タイプの美男美女宇宙人が主流でした。宇宙人の世界も、流行廃りがあるようです。やはり、最初に有名になったものが再生産されるからでしょうか。
ところで、アダムスキーの『同乗記』は、数年前に本人が出版したSF小説(売れなかった)とそっくりの内容だそうです。だとすると・・・当時のSF小説のレベルには届かない発想で描かれた小説だったのでしょうね。
それはともかく、アーノルドとアダムスキーの報告がアメリカでUFO騒ぎの一大ブームを生みます。それは最終的には世界各国に飛び火しますが、その最初はアメリカという国に特有のブームだったと考えられます。
超常現象と一口にいっても、さまざまです。国や地域の文化的要素と切り離せない側面があります。
アメリカですごく人気のある「星占い」は、一時はある大統領が夫人の星占いで政策を決めていると噂されたほどですが、日本ではほとんど影響力がありません。その一方で、日本人が信じている血液型性格判断は、アメリカではナンセンスの一言で片づけられます。(実際、血液型性格判断は、第二次大戦後の日本で出版されたとある本により爆発的に広まった「歴史の浅い」疑似科学で、日本以外の国でこれを信じている人はありません)
インテリジェント・デザイン(形を変えた神の生物創造説)も、キリスト教保守派の国アメリカでは猛威をふるっていますが、神仏をいっしょくたにしても平気な日本で話題になることはありません。日本人は、地動説や進化論を、最初から抵抗なく受け入れていますしね。
また、永久機関がらみの詐欺ビジネスも、日本ではめったに引っかかる人がいません。アメリカでは、定期的に大きな話題になっています。
アメリカと日本で、等しく話題を呼んだのは、ユリ・ゲラーから始まった一連の超能力ブーム(スプーン曲げブームでもあった)でしょうか。
ユリ・ゲラーの場合は、あまりにもへたくそな手品師だったため、逆に見抜けなかった面があります。それに対して、第二次超能力(というか、ハンドパワー?)ブームを呼んだマリックさんの一連の「超魔術」は、見事な腕前でした。(おかげで、ぼくはスプーン曲げやスプーン折りのトリックに気がつくことができました。最初の番組を見た後、これなら自分にもできるなとわかったのです。スプーンを作っている会社に電話をかけまくったら、ある親切な会社が、ぼくの疑問に答えてくれました)
・・・UFOなどの話題も、そのうち、ゆっくり扱ってみたいとも思っていますが、今日は、ずいぶん前に別のブログに載せた記事を再録することにしておきます。
以前、それを話題にした記事を書いたところ、もとの記事を見たいといわれましたが、ずっとそのままにしてあったので、UFOの日に、それをこちらに再録するのも、悪くないかな・・・と考えたからです。
では、どうぞ・・・
文体がこのブログとは違いますが、そのまま再録してあります。
*** *** ***
「日経サイエンス」はアメリカの「サイエンスティック・アメリカン」の日本語版であるが、日本独自の研究論文も掲載されている。1988年9月号に掲載された論文(永延幹男:調査船「開洋丸」の見た未確認飛行物体)は当時大変な話題となった。本格的な科学の専門誌にUFO関係の論文が載るのはおそらく世界初の出来事だったからだ。(この記事を掲載するちょっと前に雑誌名を「サイエンス」から「日経サイエンス」に変更している。裏事情は知らないが、読者側からは日本独自の記事編集に踏み切るという意思表示と感じた)
編集部は批判を覚悟で永延の報告を「その信頼性は高い」として掲載した。内容は、農林水産省所属の海洋水産資源調査船開洋丸で、1984年12月18日、21日の二回、目視できない巨大な飛行物体がレーダーに観測され、時速500km(秒速1.4m)の超高速移動が確認されたというもの。船の回りを円を描いて飛行したとも書かれている。にもかかわらず、まったく実体が見えなかったというのだから、大変な事態である。
観測の専門家がUFOを目撃するという事態が滅多にないことであり、論文の記述も冷静で的確なものである。編集部の英断に拍手を送りたい。
だが、この論文はぼくにとって、長い間大きな謎でもあった。一つは他のUFO目撃談と全く異質な報告内容であること(つまり目撃例が他にほとんどないこと)、もう一つはレーダーにはかかるが目には見えない巨大物体という存在が自然現象として考え得るかということである。
科学の基本に「再現性」というのがある。実験なら何度実験しても同じ結果が出る、自然現象なら特定の条件下で観測すれば同じ結果になるというものだ。UFOは本来どちらの条件も満たしていないが、あえていうなら全世界に一定のUFO像が共有され、似たような報告がなされていることが、現象の普遍性を支えているともいえる。(これをユングは心理学の観点から人類共通の幻覚=原型として捕らえている)
ところが、開洋丸の報告は一般のUFO報告とは一線を画している。明らかに異質な報告だ。だからこそ信頼できるという見方もあるだろうが、これは重要な要素「再現性」という点で厳しい。
さらに、肉眼では見えないのにレーダーに引っかかる物体というのがどうしても理解できなかった。そもそもレーダーも人間の目も波長の違いだけで見ているモノは同じ電磁波だ。レーダーの方が波長が遙かに長い。物体は物体のスケールより長い電磁波に対しては「透明」になる。だから、この物体が肉眼で捕らえられなかったというのは、可視光の波長(数百ナノメートル)よりも小さいことになる。しかし、一方でもっと長い波長のレーダー用電波(波長数センチから数メートル)に反応するのだから、おかしなことになる。
もちろん、「光に対して透明」というのは他の理由も考えられるのだが、とってつけたような説明になるので割愛する。
長い間、ノドに突き刺さった魚の小骨のように気になっていたのだが、最近カール・セイガン(ボイジャーに人類の記録CDを載せた科学者)の「カール・セイガン科学と悪霊を語る」を読んで、すっきりした。
セイガンはこの著書の中で、UFO誤認の様々な例の一つとして、レーダーにだけ映るUFO現象として「電波の異常伝播」を挙げている。
大気温度の逆転層のため、電波の経路が曲がり、実体はないのにレーダーが捉えてしまう現象である。蜃気楼の電波版だと思えばいい。昔からレーダーの「天使」と呼ばれていたという。
これなら肉眼で見えないのにレーダーにだけ反応したこと、通常では考えられない速度で移動したこと、空母ほどの大きさであったことなど、質量を持った実体では考えられない状況がすべて説明できる。
UFOとはそもそも未確認飛行物体(unidentified flying object)の略だから、肉眼だろうとレーダーだろうと、特定できなければなんでもUFOである。この辺の事情はまたいずれ。
(2008.1.16記す)
*** *** ***
ところで、この記事を載せたところ、当時、あるコメントが寄せられました。それは、ぼくの書いた文章に事実誤認があると書かれたコメントで、よく読んでみると、サイエンスの記事は観察の専門家が書いたものであって、そのへんのUFO愛好家が見た報告ではないのだから、専門家の書いたものを間違いだと断定するのは失礼だ、という感じの内容でした。
ファインマンも言っていますが、専門家のいうことを盲信するところに科学はありません。科学にとって一番大切な能力は「疑問に思う心」だと。ぼくも、そう思います。
日経サイエンスでは、この記事が掲載された号の後、それを補足するなど、この記事に関わる続報の記事はいっさい書かれていません。
サイエンスのこの記事は、あったことをそのまま精密に記録しています。その記録は、目視できないがレーダーには映る飛行物体の記録があったというもので、それほどの物体が移動しているのに、甲板に出た人が強い風を感じることもなかったのです。専門家による正確な記録だったからこそ、それがレーダー現象の記録であることが見えてくるのです。しかも、記事を書いた人は事実の記録を残しただけで、いっさいの予断をしていません。
まさに、科学的な態度でしょう。
こわいのは、それを勝手に解釈し、本人のいっていない現象が起きているのだと盲信することではないでしょうか。
※うかつにも、アメリカ・シロ・ペリカンをアメリカ・シロ・ペンギン(!)と、書き間違えていました。気がついてさっそく直しましたが、冷や汗ものです・・・空を飛ぶペンギンって・・・(笑)・・・それこそUFOよりめずらしい・・・
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