第5話の法廷パート開始です。

■Trial, Part 1(法廷【その1】)

Gina
Ya know, 'er in the fancy dress.
...Susarto or 'owever you say it.
I donno.

ジーナ
いつも一緒にいる、
キモノの女の子だよ。
‥‥スサト‥‥だっけ?
よく知らないケド。


さあ1作目ラストの法廷だぞ! と気合いを入れているところに、ファンシードレスときたか。w
日本人の「ファンシー」のイメージは「可愛らしい」だと思うのですが、「意味が日本で変わってしまった外来語」ですね。
イギリス英語だとfancyは「装飾された」の意味合いです。
また、現在のイギリスだと「fancy dress」は「コスプレ」の意味なんだそうです。
「大逆転裁判」の時代だとアニメや漫画のコスプレはありませんから、他の職業の服装などを着る、「仮装用の服」のような意味合いになるんでしょうか。
Ginaにとって、寿沙都の着物や袴は「仮装用の服」みたいなものなんでしょう。
「スサト」も「Susarto」になっているし。すさーと?
日本人でも発音しにくいと評判(?)の「すさとさん」なので仕方がない。

Iris
And look! This trial has made the headlines, too!
'Pawnbroker Perishes in Pickpurse Plunder!'
See?
(中略)
And then, in tomorrow's papers, the headlines will be:
'Discharged Diver is Dauntless Do-Gooder!'
...Isn't that right, Runo?

アイリス
あと‥‥ホラ! 今日の裁判のコト。
デカデカと載ってるんだよ!
『スリの少女、善良な質屋を惨殺!』
‥‥だって!
(中略)
で! 明日の新聞の
見出しは‥‥ズバリ!
『善良なスリの少女、世界を救う!』
‥‥どう思う? なるほどくん!


新聞記事の見出しですが、英語版だと上の通り、

「Pawnbroker Perishes in Pickpurse Plunder!」:質屋、スリの強盗により死す!
「Discharged Diver is Dauntless Do-Gooder!」:元スリ、勇敢なる善行
※ここのDiverは俗語で「スリ」のこと。俗語かつ死語という説明もあります。この後も割と出てきます

頭文字で韻を踏んでいます。漱石さんの四字熟語の再来のようだ。w

その新聞記事、3DS/スマホ版からちょっと修正。
見出し部分の文章が英語版に合わせてありますね。

スマホ版↓





PS4版↓





Juror No. 5
Women indispensable in society. Stop.
Famale-centric future awaits. Stop.

5ゴウ
これからの女性は、進歩的な考え方で
ビビビッと行きますわよ。


電気通信士の5ゴウさんは、裁判中でもひたすらモールス信号を打つための器械(電鍵)を叩いていますが、英語版だと文章の終わりに必ず「Stop.」って言います。
調べてみたところ、どうやら、英語のモールス信号では、文章の最後のピリオドは「.」のモールス信号を打つのではなく、「Stop」のモールス信号を打つらしいのです。
日本語だと、ネット上にはあまり参考になる資料がなかったのですが‥‥英語だと「なぜ電報ではピリオドの代わりにSTOPという語が使われているのですか?」みたいな質問に答えているウェブサイトが見つかりました。
communication - Why exactly did telegraphs have to use "STOP" instead of a period and "QUOTE" instead of a quotation mark? (Or special codes.) - History Stack Exchange
以下意訳:
>1928年に発行された「HOW TO WRITE TELEGRAMS PROPERLY」という冊子には、STOPの使い方について次のように書かれています。
>句読点を使わずに意味を明確に伝えることができないと思われる場合には、「Stop」というワードを使うことができます。「Stop」は、「ピリオド」を意味する公式の電信用語として世界中で知られています。
>この言葉は、第二次世界大戦中に、小さなピリオドの打ち間違いによるメッセージの乱れや誤解を防ぐために、政府が広く採用したものです。
>政府の重要な命令は明確でなければならないと考えた役人たちは、ピリオドを示す「Stop」という言葉だけでなく、「comma」「colon」「semi-colon」と綴る習慣を取り入れました。また、クエスチョンマークを意味する「query」という言葉もよく使われていました。
‥‥と、いうことらしいです。
なお、ピリオドの意味のモールス符号「・-・-・-」も存在してはいます。この「.」は、後々、本作のモールス信号で実際に使われています。

裁判冒頭で提出される「Autopsy Report(解剖記録)」には、日本語版だと「執刀医サイモン」と書かれていました。
英語版だと、「Coroner: Dr Stevens」と書かれています。↓
おや、日本語版と名前が違う‥‥
この名前が「2」で再登場するまで、しばしお待ち下さい。



Nash
Name's Nash Skulkin!
Occupation is, erm... baddie. Profeshnal baddie.
Ringo
Name's Ringo Skulkin!
Occupation's, um...same as 'im.

ネミー
ネミー・ティンピラー!
職業は‥‥悪党、だぜ。
タリー
タリー・ティンピラー!
職業は‥‥右に同じ、だぜ。


ティンピラー兄弟こと、Skulkin兄弟登場。名前の由来については第5話解説の最初の回に書いておりますのでご参照ください。
彼らはコックニーで喋ります。
‥‥が、正直に申し上げます。
英語版のジーナやグレグソンのコックニーは、わからんことが出てきても、検索すればほぼわかる、いわば「模範的コックニー」です。
ですが、この兄弟は、コックニーに加えて、検索してもわからんスラングが山盛り出てくるので、解読に時間がかかるどころか、結局わからないものも多数あります。
検索してもわからんものはどうしようもないし、ここで時間をかけすぎるのもどうかと思いましたので、なんとなくそういうことかと考えつつ適度に流しながらプレイしています。
一番困るのは、上のセリフみたいに「Profeshnalってprofessionalの誤字なのか? スラングなのか?」ってやつです。w 私が写し間違えたのかと悩むことになるので。w

ということで、高難易度のコックニーとスラングの勉強をしたい方はぜひ、この兄弟のわけわからん英語に挑戦してみてください。
↓コックニーの押韻スラング一覧が掲載されていて便利です。
Cockney Rhyming Slang

Nash
Cor blimey, that's cold!
Don'tcha know wot we're goin' fru?
Ringo
It's our older bruv! Lost contact wiv 'im, we 'ave!
So we're scourin' every shady corner o' the capital!

ネミー
冷たいコトを言わないでくれよ。
だって‥‥オレたち。
タリー
生き別れになったアニキを探すため、
倫敦(ロンドン)のウラ社会に身を落としたんだぜ?


上の兄弟のセリフ、私にとっては、わからないコックニーとスラングだらけです。w
「Cor blimeyって何? これ英語?」
「fruって何? これ英語?」
「bruvって何? これ英語?」
「wivって何? ‥‥何度か出てきた気がしたけど忘れた」
っていうたびに、検索して調べなきゃならんというね。w
そんなことをしていると、セリフウィンドウ1つ分の文章を解読するのに30分とか1時間とかあっという間に過ぎてしまうため、ほどほどに流すことにしたのでした。w
一応、調べてわかった範囲で。
  • Cor blimey:《英俗》 [驚き・不快を表わして] えー!, ちぇっ! ちきしょう! ※「God blind me(罵り言葉。古い表現)」の短縮形。
  • fru:throughのことらしい。コックニーには、「th」の発音が[θ]の時には「f」に、発音[ð]の時には[v]になる、という特徴がある。だから、throughの「th」が「f」になってしまい、のこりの「rough」の部分が「ru」になっちゃったっぽい。
  • bruv:brother(兄弟)と同義のスラング。
  • wiv:withのコックニー発音。「th」が「v」の発音になっている。
他に、「'im」が「him」とか、「'ave」が「have」だとか、「wot」は「what」のこととか、「o'」は「of」だとか、諸々わかれば、なんとなく兄弟の英語が解読できる‥‥と思います。
検索して意味がわかるようなら御の字です。「fru」なんて、調べても載っていませんから、『「th」の発音が[θ]の時には「f」になる』ことと文意から必死に推測しただけです。

ちなみに「Cor blimey!」あるいは単に「Blimey!」は、この後も「ええっ! びっくり!」な意味でしょっちゅう出てきます。
また、この兄弟は裁判長を「guvnor」と呼びます。
これは「governor(長官、所長などの意味)」がなまったもの。俗語では「おやじ、親方、だんな」の意味もあるそうです。
「guv」という呼びかけもよく出てくるのですが、こちらはバンジークス、龍ノ介、グレグソンなど、男性への呼びかけとして使われ、辞書によれば「sirの少しくだけた表現。主にイギリスのロンドンにて用いられる。」だそうです。

'Appy to!
...Cos a Skulkin's never skulkin'!

おおせのままに。
‥‥ティンピラー!


ティンピラー兄弟がふたり合わせてポーズを決めるときのセリフ。
「Cos」はBecauseの省略形なので、
「おおせのままに! なぜならSkulkin兄弟は決して、こそこそ逃げ隠れしない(skulking)から!」
という感じですね。犯行現場から逃げたけど。

証拠品の、
「Photograph of Gina」(「店内記録写真《ジーナ》」)
「Post-Shooting Photograph」(「店内記録写真《事件後》」)
は、日本語版と英語版でほんのちょっとだけ違いがあります。
おわかりいただけるだろうか‥‥
日本語版↓





英語版↓





左上の時刻表示に注目。
日本語版だと「01:00 a.m.」
英語版だと「1:00 a.m.」
と、なっているんです。
「そこは変更しなきゃならんところなのか?」とツッコミたくなりますが、変更した以上、英語的には「01:00という時刻表示はおかしい」のでしょう。
ちなみに日本語版の「01:00 a.m.」の表記は、3DS版から変更なしでそのままです。

Ringo
It woz, Nash, it woz. Didn't even 'ave time to pull me
dukes out me Lucy Lockets.

タリー
“盗む”どころか、ポケットから
両手を出すヒマもなかったんだぜ?


このセリフも「?」って首をひねるやつ。
最後の「Lucy Lockets」って、なんだ? 人名?
なんで唐突に「duke(公爵)」が出てくるの?
この文章ですが、後になってなんと、あの6ゴウさんが意味を教えてくれることになります。この記事の最後の方で解説しますね。

Juror No. 6
As you see, I have unfortunate appearance.
I look like wicious criminal.

6ゴウ
ワタシ。見た目がこんな感ジ。
‥‥“ワルモノ”ソノモノ。


その6ゴウことデミトリ・デミグラスキー‥‥Vilen Borshevik氏(?)っぽい人は、日本語版と同じで、英語がよくわからないという設定。
上のセリフは、「vicious(悪い)」が「wicious」という綴りになっているのですが、これはロシア語訛りの英語の表現です。
ロシア語訛りの英語だと、「v」と「w」がごっちゃになりがちなんだそうです。

Juror No. 4
But when I'd finished the procedure, I...
Well, I couldn't find my scalpel anywhere.

4ゴウ
終わってみると‥‥なんと。
手術刀(ランセット)が見あたらないのじゃよ。


日本語版の「lancet(ランセット)」と、英語版の「scalpel」の違いなのですが、検索してみると、どちらも手術に使うメスのことで、lancetは両刃、scalpelは片刃だよ、という説明がある程度。あまり具体的な説明がない‥‥。
それとは別に「The Lancet」という1823年創刊の医学雑誌があります。雑誌名は手術刀の「lancet(ランセット)」から取られたものです。
この雑誌ですが、原作ホームズの短編集第5作「The Case-Book of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの事件簿)」に収録された短編「The Adventure of the Blanched Soldier(白面の兵士)」の中に登場します。

You will remember, Mr. Dodd, that I felt round for points, asking you, for example, about the paper which Mr. Kent was reading. Had it been The Lancet or The British Medical Journal it would have helped me.

ドッドさん、覚えているでしょう? 例えば、私はケントさんが読んでいた新聞について質問し、確証を得ようとしました。それが『ランセット(The Lancet)』や『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(イギリス医師会雑誌)』であれば、私の助けになったのですが。

――短編集第5作「The Case-Book of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの事件簿)」に収録された短編「The Adventure of the Blanched Soldier(白面の兵士)」より

原作にちなんで、日本語版で手術刀に「ランセット」というルビを振ったのかどうかはわかりませんが、英語版では「scalpel」が採用されました。理由はわからん。

※追記 ツイッターにて教えていただきました、ありがとうございます!
>両刃のランセットは瀉血(しゃけつ、静脈を切開して血抜きすること)用の手術刀で、片刃のメス(scalpel)は皮膚や筋肉を切開するための手術刀です。弾丸摘出手術だったから、スカルペルに訳したほうがしっくりくるんでしょうね。

Ryunosuke
Juror number six, you've got the wrong end of the stick.
Juror No. 6
...I do not have stick. I have mouse.

ナルホド
‥‥6号さん。あなたは、
大きなカン違いをしています。
6ゴウ
“カン違い”‥‥デスカ?


get the wrong end of the stick:取り違える、すっかり誤解する
Ryunosuke「6号さん、あなたは大きなカン違いをしています。」
Juror No. 6「ワタシ、棒は持ってイナイ。ワタシはネズミを持ってイル。」
英語版では、慣用句としての「get the wrong end of the stick」を理解できなかったJuror No. 6が、「stickは持っていない、持っているのはmouseだ」とボケているんですね。

Juror No. 6
This does not agree with what brothers said in testimony
before.
They said they did not even have time to pull 'dukes'
from 'Lucy Lockets'.
My phrasebook says 'dukes' is meaning 'hands' and
'Lucy Lockets' is meaning 'pockets'.

6ゴウ
シカシ‥‥あのヒトたちは、
さっき。こう言ってマシタ。
“店に入ったとたん、
事件が起こった”‥‥
“あの店では、なにも手を
触れなかった”‥‥と。


ここでタリーことRingoの、謎セリフの意味の回答です。
Juror No. 6「このコトは、以前あの兄弟が証言した内容と一致シマセン。
彼らは、『Lucy Lockets』から『dukes』を出す時間はなかった、と言いマシタ。
慣用表現集によると、『dukes』は『手』のコト。そして『Lucy Lockets』は『ポケット』を意味シマス。」

ということで、Ringoの
「Didn't even 'ave time to pull me dukes out me Lucy Lockets.」
を意訳すると、
「ポケットから手を出すヒマすらなかったぜ。」
になります。
日本語版とだいたい同じ意味だったのです。
「duke」には「公爵」以外に、dukesという複数形で「こぶし、げんこつ」という俗語での意味があります。
「Lucy Locket」は、イングランドの古い童謡のタイトルです。以下が詳しいです。
ルーシーロケット Lucy Locket 歌詞の意味
「ルーシーロケットがポケットを失くした」という歌詞にちなんで、「Lucy Locket」がポケットを意味するようになったらしいです。
Cockney Rhyming Slang
上の、コックニーの押韻スラング一覧にも「Lucy Locket」が掲載されています。

‥‥ということで、スラングやコックニーとの激闘は続きます。
次回、法廷【その2】へ。

次 法廷【その2】



英語版「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」解説

■大逆転裁判1

○Episode 1 The Adventure of the Great Departure(第1話 大いなる旅立ちの冒險)

1.法廷【その1】(1)
 法廷【その1】(2)
2.法廷【その2】
3.法廷【その3】

○Episode 2 The Adventure of the Unbreakable Speckled Band(第2話 友とまだらの紐の冒瞼)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.探偵【その2】
3.探偵【その3】

○Episode 3 The Adventure of the The Runaway Room(第3話 疾走する密室の冒險)

1.探偵【その1】
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.法廷【その3】

○Episode 4 The Adventure of the Clouded Kokoro(第4話 吾輩と霧の夜の冒險)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.探偵【その2】
3.法廷【その1】
4.法廷【その2】

○Episode 5 The Adventure of the Unspeakable Story(第5話 語られない物語の冒險)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.探偵【その2】
3.探偵【その3】
4.探偵【その4】
5.法廷【その1】
6.法廷【その2】
7.法廷【その3】
8.法廷【その4】(1)
 法廷【その4】(2)

Escapades(番外編 ランドストマガジン)解説へ

英語版「大逆転裁判2」解説へ