イタリアのボルツァーノで開催されている、2021年ブゾーニ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
8月28日は、ソロファイナルの第1日。
ちなみに、2021年ブゾーニ国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選詳細発表)
(2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選通過者発表)
以下、使用されたピアノはいずれもスタインウェイ/Passadoriである。
1. Illia OVCHARENKO (2001 - Ukraine)
R. SAUNDERS: Shadow
J.S. BACH/F. BUSONI: Choralvorspiel "Nun komm, der Heiden Heiland", BWV 659 - BV B 27 n.3
L.v. BEETHOVEN: Sonate n. 26, op. 81a
F. LISZT: Sonata in si minore/h-Moll, S. 178
力強いタッチとメランコリックな音色を持つ。
洗練された、というよりは荒々しいところのある演奏だが、この日はどの曲も粗くなりすぎずによくまとめられていると思う。
2. Jae Hong PARK (1999- Republic of Korea)
D. SCARLATTI: Sonata in si minore, K. 27
É. TANGUY: Passacaille
J.S. BACH/F. BUSONI: Choralvorspiel "Wachet auf, ruft uns die Stimme", BWV 645 - BV B 27 n.2
L.v. BEETHOVEN: Sonate n. 29, op. 106
ベートーヴェン晩年の大作だからといって思わせぶりなことはせず、リストのソナタに通じる技巧的大伽藍として真っ向勝負した名演。
他の曲はそこまでのインパクトはないにしても悪くない。
3. Junhyung KIM (1997- Republic of Korea)
T. HOSOKAWA: Etudes I – 2 Lines for piano
L.v. BEETHOVEN: Sonate n. 22, op. 54
F. LISZT: da/aus Années de pèlerinage – I n. 6: Vallée d'Obermann
J. BRAHMS/F. BUSONI: Choralvorspiel op. 122, n. 4 "Herzlich tut mich erfreuen"
J.S. BACH/F. BUSONI: Choralvorspiel "Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ", BWV 639 – BV B 27 n. 5
I. STRAVINSKIJ: Trois mouvements de Petrouchka
音色は単色系だが、その分を緻密で丁寧な音楽表現で補っている。
ただ、「ペトルーシュカ」はさすがの彼でもやや苦しそうな箇所があり、全体的に弾けているほうだとはいえ印象はやや尻すぼみか。
4. Lukas STERNATH (2001- Austria)
J. S. BACH/F. BUSONI: Choralvorspiel "Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ", BWV 639 – BV B 27 n. 5
W. A. MOZART: Sonate n. 2, KV 280
T. HOSOKAWA: Etudes I – 2 Lines for piano
F. MENDELSSOHN: Variations sérieuse, op. 54
F. MENDELSSOHN/S. RACHMANINOV: da/aus Ein Sommernachtstraum: Scherzo
S. RACHMANINOV: Sonata n. 2, op. 36 (Ed. 1931)
端正な様式の中で情熱を爆発させるタイプで、特にメンデルスゾーンとラフマニノフが良い(モーツァルトはやや典雅さに欠けるか)。
きわめて緻密とは言わないが、完成度もそれなりに高い。
5. Serena VALLUZZI (1994- Italy)
C. WUORINEN: Etude for Chords and Dynamic Balance
L.v. BEETHOVEN: Sonate n. 11, op. 22
J.S. BACH/F. BUSONI: Choralvorspiel "Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ", BWV 639 – BV B 27 n. 5
S. RACHMAININOV: Sonata n. 2, op. 36
セミファイナルと異なり彼女の野性味がよく出た選曲で、特にラフマニノフは凄みがある(終楽章コーダでバスを外しがちだが。なお改訂稿でなくルガンスキーに似た初稿折衷版を用いており、個人的に好み)。
6. Xiaolu ZANG (1999- China)
T. HOSOKAWA: Etudes I – 2 Lines for piano
J.S. BACH/F.BUSONI: Chaconne, BWV 1004
L.v. BEETHOVEN: Sonate n. 28, op. 101
S. PROKOF’EV: Sonata n. 7, op. 83
明るくロマン的な演奏で、技巧的にもまずまず安定している。
特にプロコフィエフは若々しい情熱に満ちている(重戦車風の無機質な感じは出ていないが、こういう人間臭いのも悪くない)。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が室内楽ファイナルに進んでほしいと思うのは
2. Jae Hong PARK (1999- Republic of Korea)
4. Lukas STERNATH (2001- Austria)
5. Serena VALLUZZI (1994- Italy)
6. Xiaolu ZANG (1999- China)
あたりである。
次点で、
1. Illia OVCHARENKO (2001 - Ukraine)
3. Junhyung KIM (1997- Republic of Korea)
あたりか。
個々人の出来の印象がセミファイナルとはけっこう異なっている。
やはり選曲は大事ということか。
ともあれ、実力としてはみな横並びに近いように思われる。
次回(8月29日)はソロファイナルの第2日。
ソロファイナルの最終日である。
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