2019年ブゾーニ国際ピアノコンクールが終わって | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノで開催された、ブゾーニ国際ピアノコンクールが終わった(公式サイトはこちら)。

これまで、ネット配信を聴いて感想を書いてきたが、とりわけ印象深かったピアニストについて、改めて備忘録的に記載しておきたい。

ちなみに、2019年ブゾーニコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

2018/2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選開催中

2018/2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選通過者発表

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

セミファイナル 第3日

ソロファイナル 第1日

ソロファイナル 第2日

室内楽ファイナル 第1日

室内楽ファイナル 第2日

グランドファイナル

 

 

Marek KOZAK  (08/06/1993 Czech Republic)

 

爽やかで歯切れのよいピアニズムを持ち、技巧的にも安定している。

ベートーヴェンのソナタ第13番、ショパンのマズルカ風ロンドとスケルツォ第3番、モーツァルトのソナタ第17番、ラフマニノフのソナタ第2番あたりが印象的。

 

 

Shiori KUWAHARA  (11/10/1995 Japan)

 

今大会の第2位。

そして、私の中での個人的な今大会のMVP。

力強く、余裕のある音を鳴らすことのできる人である。

技巧的にも相当なものだし、ロマン的な味わいも豊か。

ロマン的といっても、甘美というよりはすっきりとした辛口のテイストである。

「ショパン弾き」というよりは「リスト弾き」といった感じ。

このタイプの弾き手として、日本でも最高峰の一人だと思う。

リストのダンテソナタ、ストラヴィンスキーのペトルーシュカ、バッハ/ブゾーニのシャコンヌ、ラヴェルのラ・ヴァルス、シューマンの五重奏曲、ラフマニノフの協奏曲第3番あたりが印象的。

特にペトルーシュカとシャコンヌが鮮烈で、前者はポリーニ盤に、後者はB=ミケランジェリ盤に匹敵するとさえいえるかも。

 

 

Arina LAZGIIAN  (01/11/1991 Russian Federation)

 

ロシアらしい、大柄で情熱的な音楽づくりが特徴。

ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」、リストのダンテソナタあたりが印象的。

 

 

Valentin MALININ  (25/08/2001 Russian Federation)

 

今大会の第5位。

ドラマティックというよりはシニカルな音楽性、軽快で自在なタッチを持つ。

その正確でスマートな演奏はときに無機質に聴こえるほどで、アムランやプロコフィエフ、ショスタコーヴィチの曲がよく合っている。

といっても決して非音楽的な演奏ではなく、抒情的な曲でも聴かせる。

シューマンのロマンスop.28-1と2、スクリャービンの悲劇的詩曲とワルツop.38、アムランのエチュード「パガニーニ/リストによる」、ハイドンのソナタ第40番、バッハ/ブゾーニのコラール前奏曲、プロコフィエフのソナタ第6番、ショスタコーヴィチの五重奏曲あたりが印象的。

 

 

Seung-Hyuk NA  (27/08/1997 Korea, Republic of)

 

ロマン的な演奏だが、やや思慮深いような丁寧さがある。

その思慮深さのためか渋い選曲が多いが、彼にはそういった曲よりも、華やかな曲での丁寧な解釈のほうが合う気がする。

ブゾーニのソナチネ第2番、ラフマニノフの「楽興の時」あたりが印象的。

 

 

Georgijs OSOKINS  (25/04/1995 Latvia)

 

言わずと知れた、個性の強いロマン的ピアニスト。

しばしば違和感を感じるものの、抗えない魅力があるのも確か。

ブゾーニの「バッハによる幻想曲」、ショパンのマズルカop.41-4とop.50-3と「パガニーニの思い出」とソナタ第3番、リストのダンテソナタ、シェラーの前奏曲1と3あたりが印象的。

 

 

Jae Hong PARK  (06/06/1999 Korea, Republic of)

 

卓越したテクニックを持つ、スマート系技巧派ピアニスト。

彼が1次で落ちたことが、今大会のレベルの高さを物語っている(通過してもおかしくない出来だったが)。

ブゾーニのショパン変奏曲、アルベニスの「イベリア」第2巻「アルメリア」、リストのダンテソナタあたりが印象的。

 

 

Jihyung YOUN  (13/01/1999 Korea, Republic of)

 

繊細で抒情的な、優れた表現力を持つピアニスト。

ラモーの「雌鶏」、ラヴェルのスカルボ、ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」あたりが印象的。

 

 

Vitaly STARIKOV  (08/05/1995 Russian Federation)

 

端正な音楽づくりを得意とするピアニスト。

ドイツ物など渋い選曲が多いが、むしろそういった曲でこそ本領を発揮する(逆に派手な曲ではやや物足りない)。

その点で、同じロシア系ピアニスト、アレクセイ・ゴルラッチと双璧。

ショスタコーヴィチの前奏曲とフーガ第15番、チャイコフスキー/ラフマニノフの子守歌、ブラームスのソナタ第2番、バッハ/ブゾーニの前奏曲とフーガBWV532あたりが印象的。

 

 

Xiaoya WAN  (25/09/1999 China)

 

アーティキュレーションのはっきりした、歯切れのよい演奏をする。

モーツァルトのソナタ第14番、プロコフィエフのサルカズムあたりが印象的。

 

 

Deren WANG  (27/03/1997 China)

 

決して力まない、品の良い抒情的な音楽性を持つ。

バッハの幻想曲とフーガBWV904、シューマンの謝肉祭あたりが印象的。

 

 

Giorgi GIGASHVILI  (12/11/2000 Georgia)

 

今大会の第3位。

かなりデフォルメが強いが、新鮮で面白みのある演奏をする。

ショスタコーヴィチのソナタ第2番、プロコフィエフのソナタ第7番と協奏曲第3番あたりが印象的。

 

 

Sergey BELYAVSKIY  (02/11/1993 Russian Federation)

 

ロシアらしい広々とした美しい音とパワーを持つピアニスト。

シューマンの謝肉祭、リストのスペインの主題「密輸入者」による幻想的ロンドS.252あたりが印象的。

 

 

Giovanni BERTOLAZZI  (03/03/1998 Italy)

 

今大会の第4位。

地中海風の明るく開放的な音と表現が魅力。

ドビュッシーの「霧」「オンディーヌ」、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」ソナタ、ラフマニノフのソナタ第2番、シューマンの五重奏曲あたりが印象的。

 

 

Nicolò Ferdinando CAFARO  (02/03/2000 Italy)

 

今大会の第6位。

かなりの実力者で、洗練された正統的な演奏をすることから、同じイタリアの名ピアニスト、ステファノ・アンドレアッタ(Stefano Andreatta)に並ぶ存在といえそう。

ドビュッシーの「アナカプリの丘」「雪の上の足跡」「花火」、ベートーヴェンの「告別」ソナタ、プロコフィエフのソナタ第7番、フランクの五重奏曲あたりが印象的。

 

 

Emanuil IVANOV  (06/11/1998 Bulgaria)

 

今大会の優勝者。

スラヴ系の深みのある美しい音色を持つ。

技巧的にも音楽的にも完成度が高い。

曲による出来不出来のムラも少なく、最後まで堂々たる演奏を聴かせてくれた分、実力者の多かった今回のコンテスタントの中でもやや突出しており、優勝にふさわしい。

ヴラディゲロフのソナチネ・コンチェルタンテ、リストのダンテソナタ、ベートーヴェンのソナタ第18番、バッハ/ブゾーニのコラール前奏曲「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」、ブラームスのヘンデル変奏曲、フランクの五重奏曲、サン=サーンスの協奏曲第2番あたりが印象的。

 

 

以上のようなピアニストが、印象に残った。

今大会では、最近勢いのある東アジアのピアニストはもちろんのこと、やや落ち目とも思われた東欧のピアニストにも、うまい若手がまだまだけっこういることが分かって良かった。

また、今大会は、コンテスタントのレベルが高かった(いまいちな人がほとんどいなかった)のみならず、その審査がおしなべて納得のいくものだった。

これは、私には大変珍しいことである。

今回の審査員たちと気が合うのかもしれない。

記念に、というわけではないが、今回の審査員を列挙しておく。

 

Till Fellner  (Pr. Austria)

Paolo Arcà  (Italy)

Abdel Rahman El Bacha  (Lebanon)

Nicolas Hodges  (United Kingdom)

Benedetto Lupo  (Italy)

Roland Peelman  (Australia)

Anne Queffélec  (France)

Liu Shikun  (China)

Dang Thai Son  (Viet Nam)

George Steel  (United States)

Tatiana Zelikman  (Russian Federation)

 

確かに、名を見ただけでも、確かな審査員団という感じがする。

それにしても、日本人審査員が一人もいない中で次々と勝ち抜き、第2位を獲得した桑原志織の才能は、やはり本物だと言えるだろう。

 

 


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