2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール セミファイナル 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノで開催されている、ブゾーニ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

8月29日は、セミファイナルの第2日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

オン・デマンド配信も聴ける(No.4No.5No.6)。

ちなみに、2019年ブゾーニコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

2018/2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選開催中

2018/2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選通過者発表

セミファイナル 第1日

 

 

1.

Seung-Hyuk NA  (27/08/1997 Korea, Republic of)

 

F. BUSONI Sonatina Seconda BV 259

F. SCHUBERT 4 Impromptus op. 90

 

ピアノはスタインウェイ。

シューベルトの4つの即興曲、悪くはないのだが、こういった渋い曲が合うタイプのピアニストではあまりなさそう。

ロマン派の技巧的に華やかな曲を選んでいれば、より良く持ち味が出せたのではないだろうか。

ブゾーニも併せ、テクニック的に確かなものを持っていそうな印象を受けた。

次はぜひそういった曲を聴いてみたいが、ソロファイナルに進めるかどうか。

 

 

2.

Georgijs OSOKINS  (25/04/1995 Latvia)

 

F. BUSONI Fantasie nach J. S. Bach BV 253

F. CHOPIN 2 Mazurkas n. 4 op. 41 e n. 3 op. 50

F. CHOPIN Variations "Souvenir de Paganini" op. posth.

F. LISZT Après une Lecture de Dante. Fantasia quasi Sonata

 

ピアノはスタインウェイ。

ブゾーニの「バッハによる幻想曲」、個性的でなかなか聴かせる。

ショパンのマズルカ2曲、さらに個性的でクセの強い演奏。

違和感がないではないけれど、歌のセンスはなかなかのもの。

ショパンの「パガニーニの思い出」も、流れるようなきれいな演奏。

リストのダンテソナタ、これもかなりクセが強いが、緩徐な中間部での内声の聴かせ方など雄弁で、飽きずに聴ける。

たまにはこういうのも悪くない。

 

 

3.

Jae Hong PARK  (06/06/1999 Korea, Republic of)

 

F. J. HAYDN Andante mit Variationen f-Moll Hob. XVII/6

F. BUSONI 10 Variationen über den Präeludium von Chopin BV 213a

I. ALBÉNIZ Almeria from Iberia (book 2)

F. LISZT Après une Lecture de Dante. Fantasia quasi Sonata

 

ピアノはスタインウェイ。

ハイドンの「アンダンテと変奏曲」、こういう古典派の曲を弾くと、彼はどうも少しぎこちない。

ブゾーニのショパン変奏曲やアルベニスの「イベリア」第2巻「アルメリア」、こういったロマン派の曲になると生気を取り戻す。

リストのダンテソナタ、第1日と第2日前半だけでもう4人もこの曲を弾いているが、流行っているのだろうか。

4人の中では最もスタンダードな、力強く完成度の高い演奏(終盤で少しミスが聴かれるが)。

 

 

4.

Jihyung YOUN  (13/01/1999 Korea, Republic of)

 

J. P. RAMEAU La Poule

F. BUSONI 10 Variationen über ein Präludium von Chopin BV 213 a

M. RAVEL Gaspard del la Nuit: Scarbo

F. CHOPIN Andante spianato et grande polonaise brillante op. 22

 

ピアノはスタインウェイ。

ラモーの「雌鶏」、軽快なタッチが耳に心地よい。

ラヴェルのスカルボ、キレがあるだけでなくこの曲らしい妖しい雰囲気もよく出ていて、私の好きなノ・イェジン(Yejin NOH)の同曲演奏に匹敵する(完成度の点では上回るほど)。

ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」も、メロディの歌わせ方が大変うまく、後半のポロネーズも活きが良い。

 

 

5.

Vitaly STARIKOV  (08/05/1995 Russian Federation)

 

D. ŠOSTAKOVIC, Preludio e fuga n. 15 op. 87

P. I. TCHAIKOVSKY / S. RACHMANINOV Lullaby

F. BUSONI Sonatina seconda

J. BRAHMS Sonata n. 2 op. 2

 

ピアノはスタインウェイ。

ショスタコーヴィチの前奏曲とフーガ第15番、力強く充実した演奏(フーガはもう少し速くても良いかもしれないが)。

チャイコフスキー/ラフマニノフの子守歌も味わいがある。

ブラームスのソナタ第2番、この渋い曲に対し奇をてらうことなく正攻法で挑んだ、地に足ついた演奏。

ブラームスをこれだけ聴かせるピアニストは、多くはあるまい。

 

 

6.

Xiaoya WAN  (25/09/1999 China)

 

W. A. MOZART, Sonata 457

S. PROKOVIEV Sarcasms op. 17

F. BUSONI 10 Variationen über ein Präludium von Chopin BV 213 a

 

ピアノはスタインウェイ。

モーツァルトのソナタ第14番、音色はやや乾燥しているが、モーツァルトらしい軽快さも歌もあり、ツボは押さえている。

プロコフィエフのサルカズムもタッチが明快で、曲のイメージに合っている。

強いて言うと、冒頭曲「嵐のように」はもう少し速く、勢いがあってもいいかもしれない。

ただ、これはこれでありだと思うし、これだけうまい人が続くのでなければ、文句もつけなかっただろう。

 

 

7.

Deren WANG  (27/03/1997 China)

 

J.S. BACH Fantasia und Fuge BWV 904

F. BUSONI Elegie "All'Italia! In modo napolitano" BV 249

R. SCHUMANN Carnaval op. 9

 

ピアノはスタインウェイ。

バッハの幻想曲とフーガ、各声部の歌わせ方がしっとりしていて、味わい深い。

シューマンの謝肉祭、こちらもしっとりしていて、「オイゼビウス」や「ショパン」のような緩徐な曲がよく活きる。

それでいて、「フロレスタン」の活気や「踊る文字」の軽やかさも表現できているし、その上でどの曲もやはりしっとりした歌に満ちている。

終曲「ダヴィッド同盟の行進」では、前半の輝かしい和音も、後半の急き立てるような盛り上がりも、全てが優しく品がある。

 

 

8.

Zi XU  (24/12/1994 China)

 

F. BUSONI Elegie "All'Italia! In modo napolitano" BV 249

F. LISZT Sonata in si minore S.178

 

ピアノはスタインウェイ。

リストのソナタ、速いパッセージもスムーズによく弾けている。

第2主題のような、ロマンティックなメロディの歌わせ方も良い。

ただ、全体的に少しおとなしいというか、リストらしい力感にはやや欠けるか。

この曲に潜む悪魔的な部分は、あまり出ていない印象。

また、テンポがところどころ一時的に速まったり緩んだりするのも、あまりうまくいっているとは思えない。

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私がソロファイナルに進んでほしいと思うのは

 

Jae Hong PARK  (06/06/1999 Korea, Republic of)

Jihyung YOUN  (13/01/1999 Korea, Republic of)

Vitaly STARIKOV  (08/05/1995 Russian Federation)

Deren WANG  (27/03/1997 China)

 

あたりである。

次点で、

 

Seung-Hyuk NA  (27/08/1997 Korea, Republic of)

Georgijs OSOKINS  (25/04/1995 Latvia)

Xiaoya WAN  (25/09/1999 China)

Zi XU  (24/12/1994 China)

 

あたりか。

第2日も第1日と同様に皆うまく、正直言って選ぶことができない。

第1日に弾いた桑原志織、大変良い演奏だったが、これだけの名手たちの中にあってソロファイナルに進めるかどうか、決して安泰とは言えなさそう。

 

 

次回、第3日(8月30日)はセミファイナルの最終日。

どうなるだろうか。

 

 


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