2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール セミファイナル 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノで、ブゾーニ国際ピアノコンクールが始まった(公式サイトはこちら)。

8月28日は、セミファイナルの第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

オン・デマンド配信も聴ける(No.1No.2No.3)。

ちなみに、2019年ブゾーニコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

2018/2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選開催中

2018/2019年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選通過者発表

 

 

1.

Qi KONG  (29/10/1993 China)

 

F. Chopin 24 Preludes op. 28

F. Busoni 10 Variationen über ein Präludium von Chopin (Klavierübung Teil 5) BV 213 a

 

ピアノはスタインウェイ。

ショパンの前奏曲集、派手さはないが、緻密で丁寧な音楽づくりがよく活きている。

ただ、第16番や第24番のような技巧的な曲では少し荒れもみられる。

ブゾーニのショパン変奏曲は、曲調が少し地味な分、より演奏者に合っている印象。

技巧的にも比較的安定している。

 

 

2.

Marek KOZAK  (08/06/1993 Czech Republic)

 

L. V. Beethoven Sonata n. 1 op. 27

F. Busoni Preludi (III, IV, X, XII, XIII, XVIII) op.27

F. Chopin Rondo à la mazur op. 5

F. Chopin Scherzo op. 39

 

ピアノはスタインウェイ。

ベートーヴェンのソナタ第13番、力強くはきはきしていて曲によく合っている。

終楽章のトリルの部分でテンポが一瞬落ちたり、経過句で急にテンポが上がったりするのは、あまり好みでないけれど。

ショパンのマズルカ風ロンドやスケルツォ第3番も生き生きした演奏で、技巧的にも不足がない。

あと何か欲しいとすれば、陰影のようなものか。

 

 

3.

Shiori KUWAHARA  (11/10/1995 Japan)

 

F. LISZT Après une Lecture de Dante. Fantasia quasi Sonata

F. BUSONI Elegiés n. 7 e 4 BV 249

I. STRAVINSKIJ Trois mouvements de Pétrouchka

 

ピアノはスタインウェイ。

リストのダンテソナタ、余裕のある力強い音が聴かれリストにぴったり。

ただ、ここぞというところでの追い込みが少し弱いか。

ストラヴィンスキーのペトルーシュカは、さらに素晴らしい。

この曲はコンクールでよく弾かれ、たいていは力んだ不出来な演奏が多いのだが、彼女は相当弾けている。

和音のスタッカートに躍動感があり、かつ余裕が感じられる。

広い跳躍でもほとんどミスタッチがない。

これほどの演奏は、それこそ前回(2年前)のブゾーニコンクールでのXingyu Luの同曲演奏以来である(その記事はこちら)。

 

 

4.

Arina LAZGIIAN  (01/11/1991 Russian Federation)

 

F. BUSONI Toccata BV 287

M. RAVEL Valses nobles et sentimentales

F. LISZT Après une Lecture de Dante. Fantasia quasi Sonata

 

ピアノはスタインウェイ。

ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」、洒落たワルツらしい雰囲気がよく出ている(ラヴェルらしいきらびやかな音色はないが)。

リストのダンテソナタ、先ほどの桑原志織と同様に充実した音が鳴っており、さらに情熱的な追い込みも聴かれる(特にコーダ)。

技巧的にもなかなかのものだが、ミスタッチはときどきある。

 

 

5.

Jin-Hyeon LEE  (09/12/1990 Korea, Republic of)

 

R. SCHUMANN Humoreske op. 20

F. BUSONI 10 Variationen über ein Präludium von Chopin BV 213 a

A. SKRJABIN Sonata n. 4 op. 30

 

ピアノはスタインウェイ。

シューマンのフモレスケ、先日の仙台国際音楽コンクール(その記事はこちらなど)でのキム・ジュンヒョンの同曲演奏ほどのキレはなく、少しぼてっとしているが、情感表現はなかなか悪くない。

スクリャービンのソナタ第4番、個人的に好きな曲で、第1楽章などもっともっと繊細に幻想的に弾いてほしくはあるが、それでもそれなりに抒情的に仕上げられている。

第2楽章も、ミスタッチは少しあるものの、この曲らしい軽快さがよく出ている。

 

 

6.

Shuan Hern LEE  (19/07/2002 Australia)

 

J. S. BACH Chromatische Fantasie und Fuge BWV 903

R. SCHUMANN Sonata n. 2 op. 22

F. BUSONI Sonatina Seconda BV 25

M. A. BALAKIREV Islamey

 

ピアノはスタインウェイ。

バッハの半音階的幻想曲とフーガ、悪くはないのだが、少しバタバタしていて、各声部が歌にあふれるというところまでは行っていない。

シューマンのソナタ第2番、こちらはなかなかよく弾けていて、左手は歯切れよく明瞭に聴こえるし、第1楽章コーダの加速も鮮やか。

終楽章コーダも同様にもっと加速できるとなお良かったが。

バラキレフのイスラメイ、こちらも安定しており、特にコーダはなかなか速くて良いが、それまでは遅めのテンポでやや安全運転気味の印象。

 

 

7.

Valentin MALININ  (25/08/2001 Russian Federation)

 

S. PROKOVIEV “4 Etudes for piano”, op.2

R. SCHUMANN Romanzen N. 1 und N. 2, Op. 28

A. SKRJABIN Poeme tragique op. 34

F. BUSONI Preludi (XVI-IV-XIII-XV-V-III) op. 37 BV 181

M. A. HAMELIN Etude n. 3 "after Paganini-Liszt" from cycle "12 Etudes in all the minor keys"

 

ピアノはスタインウェイ。

プロコフィエフのエチュード、歯切れよくてまずまず悪くないが、ところどころ苦しそうにテンポを緩めるのが惜しい。

シューマンのロマンスやスクリャービンの悲劇的詩曲では、テクニックと情感表現とのバランスがよく取れている。

そして、アムランの「短調による12のエチュード」第3曲「パガニーニ/リストによる」、この相当難しいと思われる曲をほとんど破綻なく弾きこなしている。

かなりのテクニシャンといえそう。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がソロファイナルに進んでほしいと思うのは

 

Marek KOZAK  (08/06/1993 Czech Republic)

Shiori KUWAHARA  (11/10/1995 Japan)

Arina LAZGIIAN  (01/11/1991 Russian Federation)

Valentin MALININ  (25/08/2001 Russian Federation)

 

あたりである。

次点で、

 

Qi KONG  (29/10/1993 China)

Jin-Hyeon LEE  (09/12/1990 Korea, Republic of)

Shuan Hern LEE  (19/07/2002 Australia)

 

あたりか。

第1日は概してレベルが高かったように思う。

 

 


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