イタリアのボルツァーノを本拠地として世界各地で開催されている、ブゾーニ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
11月7日は、予選の第1日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選詳細発表)
Ching-Yun KU (2004- Taiwan) (Plays in TAIPEI)
F. Chopin: Op. 10 No. 8
B. Bartók: Op. 18 No. 1
R. Schumann: Noveletten No. 8, Op. 21
くっきりとした音作りが好ましい。
ただ、ショパンではミスタッチが多めであり、シューマンでは表現がやや直線的すぎるというか、もう少しロマン性や詩情が欲しい。
Ivan BAŠIĆ (1996- Serbia) (Plays in BERN)
C. Debussy: Étude No. 5 "Pour les octaves"
F. Liszt: Grande Étude de Paganini No. 6 in A minor
F. Liszt: Mephisto Waltz No.1, S. 514
いずれもオクターヴや和音の頻出する曲を選んでいるが、それが得意なのかというとそうでもなく、全体的にあまり攻めないテンポでもっさりしている。
Dominic CHAMOT (1995- Switzerland) (Plays in BERN)
G. Ligeti: Étude 8 "Fem"
L. Janáček: In the Mists
F. Chopin: Étude Op. 10 No. 12
リゲティにヤナーチェク、悪くはないものの強みになるほどの表現力が聴かれるかと言われるとそこまでではない印象。
ショパンはテクニック的に苦しそう。
Kaito KOBAYASHI (1995- Japan) (Plays in BERN)
F. Chopin: Étude Op. 25-10
S. Rachmaninov: Op. 33-6
I. Stravinsky/G. Agosti: The Firebird (Dance infernale, Berceuse and Finale)
彼持ち前の詩的な表現力が発揮されにくい選曲のような気がするが、それでもラフマニノフやストラヴィンスキーでは一見ガツガツしたこれらの曲の別の魅力を呈示できてはいる。
Yuna TAMOGAMI (1994- Japan) (Plays in BUDAPEST)
F. Chopin: Étude Op. 10 No. 1 C major
C. Debussy: Étude No. 3 "Pour les quartes"
Stravinsky/Agosti: Three dances from "The Firebird"
丁寧に弾き込まれた演奏。
ただ、急速部分でも遅めのテンポで安全運転気味な感はあり、もう少し突き抜けたところがあると良いか。
Chun Lam U (2002- China) (Plays in HONG KONG)
F. Chopin: Op. 10 No. 2
C. Debussy: Étude No. 7 "Pour les degrés chromatiques"
B. Bartók: Sonata Sz.80
ショパンやドビュッシーの半音階的なパッセージがもつれがち。
バルトークのオクターヴはまだ良いが、それでも鮮やかというほどではない。
Maxim KINASOV (1993- Russian) (Plays in LONDON)
C. Franck-E. Bauer: Prelude, Fugue and Variation, Op. 18
F. Liszt: Transcendental Étude No. 10 (Appassionata)
S. Rachmaninov: Étude in C sharp minor, Op. 33 No. 9
フランクは、ロシア風の深い音と表現が美しい。
ラフマニノフもやはりロシア風の充実した和音が聴かれる。
ただリストはかなりテンポが遅く、テクニック面の弱さが出てしまった。
Hao Zi YOH (1995- Malaysia) (Plays in LONDON)
F. Chopin: Ballade Op. 47 No. 3 in A-flat major
F. Chopin: Étude Op. 10 No. 5 in G-flat major
S. Rachmaninov: Étude Op. 39 No. 3 in F# minor
S. Prokofiev: Sonata No. 3 in A minor
さりげなくも豊かな情感表現は好印象。
ただ、ショパンのエチュードやプロコフィエフはもう少しキレが欲しい。
また全体的にミスタッチが多く完成度に難あり。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは
Kaito KOBAYASHI (1995- Japan) (Plays in BERN)
あたりである。
次点で、
Yuna TAMOGAMI (1994- Japan) (Plays in BUDAPEST)
Maxim KINASOV (1993- Russian) (Plays in LONDON)
あたりか。
第1日の中では、スイスのベルンで弾いた3人の録音が他に比し明らかに音質が悪く、審査に不利になりそうで可哀想。
世界各地で演奏したものを録音し審査するという今回のやり方は、コロナ禍にあっては大変有用だとは思うが、こうした不公平はどうしても付きまとう。
次回(11月8日)は予選の第2日。
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。