2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選 第6、7日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノを本拠地として世界各地で開催されている、ブゾーニ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

11月12、13日は、予選の第6、7日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

2020/2021年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選詳細発表

予選 第1日

予選 第2日

予選 第3日

予選 第4日

予選 第5日

 

 

 

 

 

Raffaele BATTILORO (1999- Italy) (Plays in VERONA)

 

C. Debussy: Étude No. 11 “Pour les arpèges composés”

F. Chopin: Étude Op. 10 No. 8

M. Ravel: Ondine

A. Skrjabin: Sonata No. 4 Op. 30

 

イタリア風の明るい音色と独特の「崩し」が個性的で面白い。

テクニック的にもかなり弾けているが、ところどころ粗さがあるのと、ラヴェルで痛い暗譜飛びがあったのが惜しいところ。

 

 

Giovanni BERTOLAZZI (1998- Italy) (Plays in VERONA)

 

F. Chopin: Étude Op. 10 No. 1

S. Rachmaninov: Étude-Tableau Op. 33 No. 9

C. Debussy: Étude No. 11 “Pour les arpèges composés”

F. Liszt: Rapsodia Ungherese No. 12

 

前回大会第4位(その記事はこちら)の貫禄を見せる。

一つ前の人と同様のイタリア風の明るさを持つが、クセや粗さはみられず自然で丁寧(むしろ前回の彼自身よりも精度が上がっているか)。

 

 

Elia CECINO (2001- Italy) (Plays in VERONA)

 

C. Debussy: Étude No. 7 "Pour les degrés chromatiques"
F. Liszt: Transcendental Étude No. 12 (Chasse-neige)
F. Chopin: Polonaise Op. 44

 

こちらも同様に見事な、自然でスマートな演奏で、表現力もある。

ドビュッシーでやや怪しい箇所もなくはないが(オクターヴ跳躍で半音階を繰り返す箇所)、全体的には技術的問題もほとんど感じない。

 

 

Eleonora DALLAGNESE (2000- Italy) (Plays in VERONA)

 

F. Chopin: Étude Op. 25 No. 7 in C sharp minor

F. Chopin: Étude Op. 25 No. 11 in A minor

S. Prokofiev: Étude Op. 2 No. 4 in C minor

F. Liszt: Hungarian Rhapsody No. 12, S244 in C sharp minor

 

これまた見事で、ショパンは豊かな表現力で聴かせるし、プロコフィエフははきはきしていて第4日のXiaoya WANよりも躍動感がある。

リストも先ほどのGiovanni BERTOLAZZIに劣らない鮮やかさ。

 

 

Osvaldo Nicola Ettore FATONE (1995- Italy) (Plays in VERONA)

 

F. Chopin: Étude Op. 25 No. 9

A. Skrjabin: Étude Op. 8 No. 10

I. Stravinsky: Trois mouvements de Petrouchka

 

これまたまた見事で、特にストラヴィンスキーが素晴らしく、第2日のJinwoo BAEの名演にもほぼ匹敵する(むしろ明るさや溌剌さの点では、コメディア・デラルテ風の趣のあるこの曲によりふさわしいかも)。

スクリャービンはなぜかミスが多いが、弾けている箇所は弾けているため、弾けないわけではなさそう。

 

 

Francesco GRANATA (1998- Italy) (Plays in VERONA)

 

J. S. Bach: Preludio e Fuga in Fa minore BWV 857 dal "Clavicembalo ben temperato", libro I

C. Debussy: Étude No. 7 "Pour les degrés chromatiques"

F. Liszt: Transcendental Étude No. 12 (Chasse-neige)

M. Ravel: Alborada del Gracioso, da "Miroirs"

 

こちらも明るく溌剌とした表現が好ましく、バッハとリストは言うことないが、ドビュッシーの半音階にムラがあり、ラヴェルの同音連打も(相当速いテンポにしてはよく弾けているものの)磨き切れてはいない。

 

 

Ruben MICIELI (1997- Italy) (Plays in VERONA)

 

F. Chopin: Étude Op. 25 No. 10

C. Debussy: Étude No. 11 "Pour les arpèges composés"

M. Ravel: from « Gaspard de la nuit »: Scarbo

 

迫力あるショパン、明るく詩的なドビュッシーともに素晴らしい。

ラヴェルもかなり弾けているほうではあるが、同音連打はややもたついており苦手そう。

 

 

Davide RANALDI (2000- Italy) (Plays in VERONA)

 

A. Skrjabin: Étude Op. 42 No. 3

F. Chopin: Étude Op. 25 No. 6

S. Prokofiev: Sonata No. 7

 

スクリャービンは軽やかで、ショパンはトップスピードではないが余裕をもって二重トリル風音型をきれいに弾けている。

プロコフィエフもキレがあり、終楽章などポリーニ盤に匹敵する高速テンポを最後まで保持できている数少ない演奏の一つとなっている。

 

 

Kostandin TASHKO (1997- Albania) (Plays in VERONA)

 

F. Chopin: Étude Op. 10 No.1

S. Prokofiev: Étude Op. 2 No. 1

A. Skrjabin: Sonata No. 5 Op. 53

F. Chopin: Polacca in La bem. magg. Eroica Op. 53

 

こちらもかなりの出来で、ショパンのエチュードは鮮やか、プロコフィエフも第3日や第4日の同曲演奏に比べてキレがある。

スクリャービンや英雄ポロネーズも、力強さと洗練とが両立している。

 

 

Serena VALLUZZI (1994- Italy) (Plays in VERONA)

 

D. Scarlatti: Sonata K427 in G Major

F. Chopin: Étude Op. 10 No. 5

A. Skrjabin: Étude Op. 8 No. 6 in A Major

F. Liszt: Rapsodia spagnola

 

これまたかなりの腕前で、力強くかつ軽快で優美。

リストなど野生的ともいえるような迫力があるが、かといって粗いわけではなく、完成度の高さも保たれている。

 

 

Do-Hyun KIM (1994- Republic of Korea) (Plays in CLEVELAND)

 

B. Bartók: Sonata Sz. 80

F. Chopin: Op. 10 No. 8 in F Major

S. Rachmaninov: Étude-Tableau Op. 39 No. 6

 

バルトーク、かなり激しい演奏だが精度も十分に保たれている。

ショパンは彼ほどの弾き手にしては意外と綻びが少々みられるが、ラフマニノフは彼らしい切れ味が戻っている。

 

 

Tristan PARADEE (2000- USA) (Plays in LOS ANGELES)

 

S. Prokofiev: Étude Op. 2 No. 1

F. Chopin: Étude Op. 10 No. 4

C. Debussy: Pour Le Piano

 

元気が良いが、勢い任せなきらいがある。

指がスムーズに動かない箇所をペダルでごまかしがち。

 

 

Artem KUZNETSOV (1990- Russia) (Plays in HOUSTON)

 

R. Schubert: Klavierstück No. 2, D.946 Allegretto

F. Chopin: Étude Op. 10 No. 7

S. Rachmaninov: Études-Tableaux, Op. 39 No. 9

I. Stravinsky: Petrouchka La semaine grasse

 

シューベルト、弱音部は良いが音が大きくなると歌心に乏しくなる。

ショパンもスムーズとはいえず、ラフマニノフやストラヴィンスキーも強音をガンガン鳴らしている感じであり、もっと細部の洗練が欲しい。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第6、7日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは

 

Giovanni BERTOLAZZI (1998- Italy) (Plays in VERONA)

Elia CECINO (2001- Italy) (Plays in VERONA)

Eleonora DALLAGNESE (2000- Italy) (Plays in VERONA)

Osvaldo Nicola Ettore FATONE (1995- Italy) (Plays in VERONA)

Davide RANALDI (2000- Italy) (Plays in VERONA)

Kostandin TASHKO (1997- Albania) (Plays in VERONA)

Serena VALLUZZI (1994- Italy) (Plays in VERONA)

Do-Hyun KIM (1994- Republic of Korea) (Plays in CLEVELAND)

 

あたりである。

次点で、

 

Raffaele BATTILORO (1999- Italy) (Plays in VERONA)

Francesco GRANATA (1998- Italy) (Plays in VERONA)

Ruben MICIELI (1997- Italy) (Plays in VERONA)

 

あたりか。

 

 

国際コンクールの開催国出身の参加者というと、実力者のみならず記念受験みたいな人が一定数いるようなイメージがある。

しかし今回は違い、イタリア勢は驚くほど精鋭ばかりであった。

久しぶりに地元イタリア人優勝者が現れるかもしれない。

 

 

近年のコンクールは東アジアのピアニストの活躍が比較的目立ち、東欧のピアニストは往年の勢いをやや失い、西欧のピアニストに至っては寂しいばかりであった。

しかし今回、イタリアの若きピアニストたちが皆すばらしい演奏をするのを聴いて、何とも頼もしく感じる。

 

 

次回(11月14日)は予選の第8日。

 

 


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