ルールって、何の為にあるの? トヨタ不正問題に問う
トヨタの不正問題の中で、「規定より厳しい試験を実施したのに、何が悪いの?」という意見が、ネット上で沢山出ています。例えば、車両の後突試験です。後ろから車両がぶつかって来たのを想定し、乗員保護が出来ているか確認する試験です。停止している車両に、後ろから台車をぶつけます。(法規) 1,100kgの台車を36.4km/hの速度で衝突させる(トヨタ)1,800kgの台車を55.0km/hの速度で衝突させる。これを見ると、かなり厳しい条件で試験をしています。この条件は、世界基準で考え、設計の実力を確認するために実施しているものです。この厳しい試験をクリアしているので、法規の試験をやらなくても良いだろう...と、現場が勝手に判断していたのです。社内ルールでは、法規基準の試験も実施するように計画し、スケジュールも確保していたのです。前回のブログでも書きましたが、手抜きです。「余裕で基準を満たしているからいいじゃないか。 国交省がもう少し寛容になるべき。」との意見を耳にしますが、それではダメなのです。何故か?次の2つが懸念されるからです。① 1,200kgで20km/hで衝突させる試験を実施し、こちらの方が厳しいと言い張るメーカーが出てきたらどうするのか? 速度も重量も超えていれば良いが、「厳しい試験」と簡単に判断できない試験をする可能性もある。② 厳しい試験をするのが当たり前になると、追従できないメーカーも出て来る。 1,800kg + 55km/hを、国内主要メーカーがこぞって実施してくると、それに追従できないメーカーも出て来る。 追従しなくても良いのだが、世論は違う。 同一の条件を望み出す。 そうなると、車両重量も増量し、燃費も悪くなり、車両価格も一気に上がることになります。こういった2つの事が懸念されるので、私は現法規を変えるのは、十分な検討が必要と考えます。世の中には2つの考え方があります。① ルールは、何がなんでも守るべきだ。② ルールは守るべきものだが、必ずしも守らなくても良い。例えば、車両が全く通っていない夜中の交差点で、歩行者用信号が赤信号の時。多くの日本人は、信号を守ります。それを見た外国人は、不思議に思います。「車がいないのに、何故止まる必要があるの?」いかがでしょうか?ルールは、守るべきです。ただし、ルールは見直しがされるべきです。見直しがなされていないのに勝手な判断で破るのは、違法行為です。現場や職場では、規定、ルール、標準を大切にしなければなりません。そうしないと、不良品ややり直しの仕事が増えたり、安全ではない作業になったりするからです。そして、その標準は、定期的に見直しをするべきです。こういう行動を、SDCAと呼びます。SDCAは、Standard Do Check Actionの頭文字です。Standardは、規定、標準類のことです。時代、環境に合わせて改訂していくことにより、より守り易くて良い標準にしていきます。このサイクルを回さなければなりません。ただし、勝手に変更することは許されません。ルールが正しいか、常に疑うことは大事です。日本人は、連帯責任を負わせる行為が江戸時代から癖付いています。何かあると、すぐにルールを制定して全員に従わせます。私の働いていた会社の事例ですが、ある職場の作業者が、腕に擦りキズを負いました。その対策として、全従業員は長袖を着用するルールが制定されました。真夏の暑い時期は、熱中症で倒れる作業員が後を絶ちません。冷房もどんどん下げるのですが、効果が無いのです。よく考えてみると、安全な職場でも長袖を義務化していたのです。こういった事もあるので、ルールが必ずしも正しいとは思ってはいけません。ルールは、常により良いものにするために改訂してくべきです。但し、それは勝手な判断をするのではなく、正式に変更すべきです。変更もしないのに、ルールを破るのは、やはり違法です。ルールは大事。但し、見直して、より良くする。SDCAのサイクルを正しく回し、遵法意識のある職場づくりをすべきなのです。この考えは、非常に大切です。皆さんは、どのように考えますか?