今自社に何が起きていて、今後どうなるのかを数値で正確に把握することが大切だと考えます。
3月・4月辺りにご相談頂いた一部の経営者は、実態と将来予測を数値で把握し、それに基づいた判断をされていました。
それは譲渡の決断をする、ということではなく、数字で把握できれば、「これぐらいなら十分にやっていける」or「少しでも早く自力以外の手段を検討する」という判断が冷静にできる、ということです。
現状と将来を数値で確認し、次の一手を検討して頂きたいと思います。
先のファンド動向の記事でも記載しましたが、コロナ禍には2つの問題側面があります(今のところ2つ?)。
一つは、休業要請が出たことで企業の資金繰りを直撃したこと。
飲食企業のいわゆる手元流動性(=手元にある使えるお金)は決して高くなく、拝見した日経の記事によると、全産業の平均が2.7か月分に対して、飲食サービス業は1.4か月分だそうです。
緊急事態宣言(≒休業要請)は約2か月続きましたので、資金繰りは厳しくなります。
しかし、これを殆どの企業は乗り越えました。
6月2日現在でTDBによる飲食企業の倒産数は26社です。
ここで二つ目の問題が出てきます。
乗り越えるために多くの企業が借入を起こしています。
今後その借入を返済していかないといけませんが、業績が元に戻るかどうかが分かりません。
誰にも未来は分かりませんが、そのような中でも、
①将来の業績見通しを立てて(悲観パターン、楽観パターンなど複数作る)、
②資金繰り表を作成して、増大した借入・返済と業績見通しを反映させる
を実施して、自社のおかれた状況を数値で客観視することが大変重要だと思います。
お会いする(ZOOM面談ばかりですが)飲食経営者にお聞きしていきましたところ、4月に営業自粛した企業の資金流出額はおよそ年商の1%前後と認識しています(雇用調整助成金等の支援金反映後)。
日本フードサービス協会によりますと、外食業界の売上高経常利益率は4.2%とのことですので、実効税率34%とすると、税引後当期純利益率は2.8%程度と推測できます。
年商の1%だけの資金流出なら、2.8%の純利益があればカバーできます。
1年も経たずに回収できてしまいます。
しかし、上述の二つ目の問題の通り、借入が増えているために、利益が出ても返済ができないかもしれないことに加え、一番やっかいなのは売上が戻るかが分からないということです。
いわゆるキャッシュフロー経営に、現在のような緊急事態においては考え方をシフトする必要があります。
PL上利益が出ていても、借入が増大した中ではキャッシュフローに注視しないと黒字倒産にも繋がりかねません。
今はPLを見るのではなく、資金繰り表を作っていない会社は必ず作成し、キャッシュの流れを見て頂きたいと思います。
営業するか休業するかには、色々な要素が絡まってくると思いますので、一概に利益が出る・出ないだけで判断ができないことは理解しております。
少なからず、現状を数値で正しく把握したうえで、その他の要素と併せてご判断頂きたいと考えております。