飲食M&Aアドバイザーによる、M&Aを検討するオーナー経営者向けブログ

飲食M&Aアドバイザーによる、M&Aを検討するオーナー経営者向けブログ

主にM&Aを譲渡側として検討する経営者向けです。

【支援実績抜粋】
◆地域トップクラスの飲食企業の、上場企業グループへの参画
◆100店舗近く展開する成長企業へのファンドの資本参画

など。1店舗〜数十億の企業まで数多く支援してきております。

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今自社に何が起きていて、今後どうなるのかを数値で正確に把握することが大切だと考えます。

 

3月・4月辺りにご相談頂いた一部の経営者は、実態と将来予測を数値で把握し、それに基づいた判断をされていました。

 

それは譲渡の決断をする、ということではなく、数字で把握できれば、「これぐらいなら十分にやっていける」or「少しでも早く自力以外の手段を検討する」という判断が冷静にできる、ということです。

 

現状と将来を数値で確認し、次の一手を検討して頂きたいと思います。

 


 

先のファンド動向の記事でも記載しましたが、コロナ禍には2つの問題側面があります(今のところ2つ?)。

 

一つは、休業要請が出たことで企業の資金繰りを直撃したこと。

 

飲食企業のいわゆる手元流動性(=手元にある使えるお金)は決して高くなく、拝見した日経の記事によると、全産業の平均が2.7か月分に対して、飲食サービス業は1.4か月分だそうです。

 

緊急事態宣言(≒休業要請)は約2か月続きましたので、資金繰りは厳しくなります。

 

しかし、これを殆どの企業は乗り越えました

6月2日現在でTDBによる飲食企業の倒産数は26社です。

 

ここで二つ目の問題が出てきます。

 


 

乗り越えるために多くの企業が借入を起こしています。

今後その借入を返済していかないといけませんが、業績が元に戻るかどうかが分かりません

 

誰にも未来は分かりませんが、そのような中でも、

 

①将来の業績見通しを立てて(悲観パターン、楽観パターンなど複数作る)、

 

②資金繰り表を作成して、増大した借入・返済と業績見通しを反映させる

 

を実施して、自社のおかれた状況を数値で客観視することが大変重要だと思います。

 

お会いする(ZOOM面談ばかりですが)飲食経営者にお聞きしていきましたところ、4月に営業自粛した企業の資金流出額はおよそ年商の1%前後と認識しています(雇用調整助成金等の支援金反映後)。

 

日本フードサービス協会によりますと、外食業界の売上高経常利益率は4.2%とのことですので、実効税率34%とすると、税引後当期純利益率は2.8%程度と推測できます。

 

年商の1%だけの資金流出なら、2.8%の純利益があればカバーできます。

1年も経たずに回収できてしまいます。

 

しかし、上述の二つ目の問題の通り、借入が増えているために、利益が出ても返済ができないかもしれないことに加え、一番やっかいなのは売上が戻るかが分からないということです。

 

いわゆるキャッシュフロー経営に、現在のような緊急事態においては考え方をシフトする必要があります。

 

PL上利益が出ていても、借入が増大した中ではキャッシュフローに注視しないと黒字倒産にも繋がりかねません。

今はPLを見るのではなく、資金繰り表を作っていない会社は必ず作成し、キャッシュの流れを見て頂きたいと思います。

 

営業するか休業するかには、色々な要素が絡まってくると思いますので、一概に利益が出る・出ないだけで判断ができないことは理解しております。

 

少なからず、現状を数値で正しく把握したうえで、その他の要素と併せてご判断頂きたいと考えております。

 

さて、飲食M&A動向 〜コロナ禍が飲食M&A市場に与える影響について①~でも書かせて頂いたように、飲食M&A市場は大きく変化しようとしています。

 

譲渡を検討される方に、今からできることをご紹介します。

 

 
M&Aにおいて、買収検討する企業は「事業」と「数字」を見ます。
 
まず、運営している事業が買収企業にとって魅力的かどうか。
これは今から変化させるのは難しいため(デリバリーや通販などへの転換事例はありますが、まだ一時的な成功であり、将来見通しを立てるのは難しい)、基本的にはありのままとなります。
 
としますと、今から出来るのは「数字」を少しでも良くすることです。
 

 
会社の現預金額は評価に直結します。
ですので、現預金の流出を防ぎ、多く残すことが肝要です。
 
当たり前のことと思われると思いますが、ここを突き詰めてお考えいただきたいと思います。
 
緊急事態宣言が明けて、一部の店舗では昨対100%に戻ったという話も聞きます。
売上が戻るお店はバシバシ営業して頂いた方が当然良いですが、売上げの戻らないお店については休業させることとの比較検討が重要です。
 
休業させることで従業員の働く動機が失われかねない、店舗に休業のイメージが定着してしまうなど、その判断は単に一時的な損益だけで判断できるものではないというのは大変良く理解できます。
 
あくまでここでは譲渡を検討される方向けに言いますが、やはりキャッシュの流出が少ない方が優先されるべきです。
 
今後もし第二波、第三波が発生してしまい、再度緊急事態宣言が出されるようなことがあれば、休業し、固定費をできる限り最小限に圧縮し、できる限りの助成金・補助金を取得することが賢明です。
 
そして、再稼働したときにスタートダッシュできるよう、従業員の動機やお客さんを取り戻す方法を考え、準備すべきだと思います。
 
休業要請が出ればいとも簡単に100万円~1000万円単位のお金が流出していきますが、これを譲渡時に取り戻すのは至難です。
 

 
また、もし譲渡判断をされるなら、早めにご決断されることをお勧めします
 
今後しばらく買収候補企業のM&A意欲は上下に波を打つと考えます。
 
感染者が減って街に人が戻れば意欲が戻り、感染者が増えてまた休業要請などが出てしまうと意欲が落ちます。
 
この買収意欲の波線は右肩下がりになる可能性があると考えています。
 
買収候補企業も多かれ少なかれコロナの影響は受けていますので、長引くほど自社の体力が失われ、投資できる環境が失われるためです。
 
また、譲渡判断が遅くなればなるほどキャッシュの流出が多くなる可能性がありますし、長い期間業績が戻らないとすれば、将来的観測はより悲観的にならざるを得ません。
 

コロナ禍が飲食業のM&A動向に与える影響について記載します。

 

 
まず、一番分かりやすく変化するだろうと思われるのは「価格」です
 
飲食業界に限らず、M&A市場は基本売り手市場とこれまで言われていましたが、今後暫くは買い手市場に変わると思われます。
 
昨年まで日本は好景気にありましたので、企業買収による更なる成長を目指す企業が増えていました。
 
しかし、中堅・大手企業にもコロナは深刻な被害をもたらしており、買収できる企業が大幅に少なくなると予想されます。
 
当社にて、4,5月中、過去に買収検討したことのある飲食企業に飲食のM&A案件を提案をしておりましたが、買収検討しないと答えた企業の内61%がコロナを理由とするものでした。
 
それだけ買収候補企業は減っていると言えます。
 
一方で、譲渡希望企業は急速に増加していきます。
 
コロナ禍で、当社からの営業アプローチが出来ていないにも関わらず、例年と変わらない水準の譲渡相談が来ており、更に徐々に増える傾向となっています。
 
買い手が半減し、売り手が数倍増になることで、売り手にとってはし烈な競争環境になってしまいます。
 
買い手にとってはそれだけ案件が多く出ますので、高い案件に敢えて手を出す必要はないですし、理念や戦略結合が明確で、確信を持てる先しか買わなくなるはずです。
 
また、価格が高い安い以前に、これまでは買い手が付いていた多くの企業にそもそも買い手が付かなくなることが想定されます。
 
売却額は利益の◯倍という話を聞かれたことがあるかもしれませんが、今後は難しいかもしれません。
 
実際に、コロナ前に買収した事業をコロナ禍中に即譲渡したという事例を聞きました。
その間僅か数か月にも関わらず、2億円弱で買収した事業が数千万円に落ちてしまったそうです。
それでも売主としては、今後想像されるマイナスを考えれば、売れただけ運が良かったとのことでした。
 
売上が昨対ベースに戻るか分からず、足元は厳しい状況の中で、昨年までの実績を元に価値評価をすることは難しくなります。
 
譲渡先が見つかり、値段もちゃんと付くのは、企業としての強みが明らかな一部企業のみになると思われます。
 
先の事例のように、価格が大幅に下落してしまったとしても損切り目的に譲渡を推し進めるか、回復させるかは判断に迷うところです。
 
明日は、それでも譲渡を検討する際の考え方をご紹介します。
コロナ禍によって飲食業のM&A動向は目覚しく変化することが徐々に見えてきました。
 
今回はここ数年間、投資側として主要プレーヤーであったファンドの動向をお伝えします。
 
まず結論から言いますと、ファンドの飲食業に対する見方は相当に厳しくなる、と考えます。
 
ファンドの投資を受け入れたオーナーの多くは、周囲が唸るような高額条件を提示され、大変成功した個人として注目を受けた方も少なくありません。
 
そのような姿を見ていつか自分もと思われていた経営者も多いものと思います。
 
今後その環境が変わる要因を説明するにあたり、ファンドの構造をまずは簡単に説明致します。
 

【そもそもファンドとは?】
 
ファンドの目的は、投資家たちより集めた資金を運用し、運用益を投資家に還元することです。
 
M&A市場に登場するのは主に「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」と呼ばれ、未上場企業の株式に投資し、その価値を高めることでリターンを狙います。
 
投資家に運用益を還元するために、PEファンドの活動は期限付きであり、すなわちファンドに買われた株は必ずまたいつか売られるということが特徴です。
 
 
【ファンドと「レバレッジ(=てこ)」】
 
さて、PEファンドは投資において、LBOローンを多く用います。
 
※LBO=レバレジッド・バイ・アウト=てこを利かせた買収
※「レバレッジ」=てこ=小さい力で大きなエネルギー
 
100億円の投資があれば、ファンドは自己資金(エクイティ)から例えば50億円、銀行から50億円借りて、合わせて100億円の投資を実行します。
 
その50億円の融資は投資した会社の利益から返済していきます。
 
ファンドにとっては、レバレッジを利かせることで、運用資金量以上の投資ができるようになり、分散投資や大きなリターンが実現しやすくなります。
 

 
さて、ファンドの説明は以上として、話を元に戻します。
 
何故今後ファンドの飲食業に対する投資が厳しくなるか?
2つの考えをお伝えします。
 
【①飲食事業の将来性に対する悲観】
 
投資先の価値を高めることを目的とするファンドにとって、将来性のない投資を敬遠するのは当然のことです。
 
飲食業界が活況を取り戻すのには相応の時間がかかると想定される中、悲観的観測の中では投資は出来なくなってしまいます。
 
また、コロナ禍のようなことが数年後にまた起きないとも言えない中で、その影響を特に大きく受ける業界、あるいは実際今回大きな打撃を受けた会社に対しては、悲観的にならざるを得ない、という状況です。
 
【②LBOに対する考え方の変化】
 
LBOで調達した借入は投資先企業の債務となります。
 
今回、コロナ禍には2つの問題側面があります。
 
⑴緊急事態宣言による休業期間中、資金繰りが強烈に圧迫されること
 
⑵制度融資などにより資金繰り危機を乗り越えた企業が、増大した借入を返済していかないといけないこと
 
LBOで元々借入が増大していた会社には⑴⑵が大きくのし掛かります。
 
コロナ禍では、上記懸念により、追加借入をさせずにファンド資金を追加投入するなど、様々な判断がありました。
 
レバレッジを利かせすぎてしまうと、投資先企業が厳しい状態に置かれてしまう可能性から、今後考え方が変わる可能性がありそうです。
 
レバレッジをあまり利かせないとなれば、ファンドとしてはその分だけ期待リターンが減ることになります。
 
それは投資額に反映されますので、ここ何年か実行されてきたような高額な条件提示は今後出来なくなる可能性があるのです。
【要約】
従業員への告知はM&Aの直前・直後に。告知しないことも選択肢。

 
従業員のことはとても気になると思います。
 
まず、M&A(譲渡)する=従業員を売る・裏切る、というような考えは捨てて頂きたいと思います。
これは全くもって間違っていて、会社をもっと良くするため左差し、という目的さえブレていなければ、M&Aは裏切りどころかむしろ従業員のための判断となっているはずです。
 
本来は自ら会社をもっと良くして、従業員と共にその喜びを分かち合いたかったと思いますが、それができないからM&Aを選択されているはずです。
あるいは自身がやるよりも、もっと良くなるであろう選択肢が目の前にある時に、それを敢えて選択するのは、会社の成長発展を使命とする経営者にとって何らおかしな判断ではありません。
 
「従業員のためにM&Aを決断する」が正しく、もしそう思えないのだとすれば、M&Aの目的がブレていたり、経営者としてではなく株主としての判断を優先してしまっている左差し可能性がありますので、M&Aの目的から再検討することをお勧めします。
 

 
さて、いざM&Aを進めていくと、従業員たちへの告知のタイミングが気になります。
 
これには様々なやり方があると思いますが、譲渡契約の直前・直後まで従業員には告知しないことを推奨します。
また、必ずしも全員に告知する必要があるかどうかは要検討です。
 
これまでに数多くのM&Aに携わってまいりましたが、どれだけ従業員に感情移入して、告知方法を工夫して伝えても、従業員がそれをポジティブに捉えることはまずないと思ってください。
 
従業員にとってM&Aは非現実的であり、未知であり、2000年代にいわゆるハゲタカファンドがテレビを賑わした印象が強く、とにかくそれを伝えられた時点においては、不安が期待を圧倒的に上回るのは間違いないとお考え下さい。
 
しかし、いざM&Aが実現して時間が経つと、「なんだ、これまでと変わらないじゃないか」という安心が生まれます。
「この環境で頑張ればもっと役職高めて給料も上げられるかもしれない」という期待も生まれてきます。
「大手企業傘下に入ったら通らなかった住宅ローンが通るようになった」などの副次的な効果もあり、当初の不安や心配は杞憂に終わるというのが実態です。
 
その実態に辿り着くまでは、波風立たせないように従業員には今の業務をこれまで通り継続してもらう必要があります。
 
仮に従業員への告知のタイミングを早めてしまうと、M&A成立までに従業員には考える余地が出来ます。
「不安だ、自分の給料はどうなってしまうのだろう。いっそのこと転職してしまうか」と。
 
そのため、従業員には考える余地を敢えて作らないように、M&Aの直前・直後に告知することを推奨します。
 
また、M&A後に経営者が変わらずに残るケース(=会社を更に発展させるためのM&A)左差しが昨今は多くなっています。
その場合、そもそも従業員に告知する必要があるかどうかもご検討ください。
 
従業員にとって務める会社が変わらなければ社長も変わらない。
変わるのは資本だけで、そもそも従業員は誰が株主なのかは知ってさえいないケースも少なくないでしょう。
 
告知することで、少なくとも瞬間的には不安が社内に募りますので、ならば敢えて告知自体しないということも選択肢の一つです。
【要約】
手順を適切に減ることが望ましい。

 
M&Aにおける手順はおおよそ以下の通りです。
順番は案件によって前後することがありますし、かかる期間も案件によって大きく変わりますので、あくまで目安として捉えてください。
 
基本的にはこれらの手順を全て経ることが望ましく、スキップすることもありますが、そこには一定のリスクが伴うことを理解する必要があります。
 
①M&A検討・事業計画策定
②バリュエーション(評価)
③仲介契約締結
④提案準備
⑤買手発掘
⑥意向表明
⑦基本合意
⑧デューデリジェンス
⑨譲渡契約締結・決済
 

 
【①M&A検討・事業計画策定】
まずはM&Aをそもそもやるべきかどうかについて、ご相談頂きながら綿密に検討します。
 
ここでは事業計画の策定・検討左差しが大事ですし、劇的な変化をもたらす可能性のあるM&A左差しという選択肢を取るべきかどうかについては十分に検討する必要があります。
 
 
【②バリュエーション(評価)】
企業・事業価値を評価するにあたっては、以下3つの考え方があります。
 

㋐インカムアプローチ(DCF 等):将来的に対象会社から期待される利益等に対する評価

㋑マーケットアプローチ(類似業種比準方式 等):類似業種の上場企業などと比較して評価

㋒コストアプローチ(純資産価額方式 等):純資産に基づいて評価

 
案件によってどの方法をとるべきかを検討し、適切な手法で評価を行いますが、飲食業の場合は概ね㋑が活用されます。
減価償却前営業利益(≒EBITDA)の何倍みたいな話は㋑のことです。
 
 
【③仲介契約締結】
M&Aをやるべきだという結論に達し、かつ条件面を整備できたら、M&A会社と仲介契約を締結して業務を依頼して頂きます。
 
 
【④提案準備】
案件概要書(IM)を作成します。
 
◆対象会社のことを深く理解する=買手候補に対する提案力に繋がる
◆対象会社が抱える問題点を明らかにする=事前に明らかにして提案することで、後に発覚して問題となることを避けられる
 
ということに繋がる一番大事といっても過言でない作業です。
資料提出や質問への回答など大変な作業ではありますが、売主においては積極的に協力することが求められます。
 
 
【⑤買手発掘】
ノンネームシートというものを作成します。
これは対象会社の情報を匿名化かつ要約したもので、それだけでは対象会社の特定ができないものとなっています。
 
まずはこのノンネームシートを買収検討する可能性のある企業に網羅的に提案します。
そうすると、一定数の企業が検討意思を示します。
 
この検討意思を示した企業を一覧化し、売主にネームクリアと言われるチェック作業を行って頂きます。
例えば、過去に取引上不義理をされたことのあるような相手が含まれていれば、買収検討してほしくないと思われるでしょう。
但し、相手のことをよく知りもしないのに感覚で省いてしまうと、有望な候補先が外れてしまうため、あくまで決定的な理由のある先だけを省くことが大事です。
 
このチェックを通った先について、個別に秘密保持契約を締結し、案件概要書(IM)等の詳細情報を開示します。
 
 
【⑥意向表明書】
詳細検討を踏まえて買収を進めたいという企業には意向表明書を提出してもらいます。
ここではM&Aにおける主たる条件面を記載して頂き、買収意思があることを書面にて捺印付きで表明してもらいます。
 
 
【⑦基本合意書】
【⑧デューデリジェンス】
意向表明書を提出した企業の中から基本的には1社を選び、基本合意契約を締結します。
 
意向表明における条件に売主が納得すれば、そこで譲渡契約に進めてしまってもよさそうですが、M&Aではデューデリジェンスという通常の契約では基本的に発生しない作業があるため、最終契約前に基本合意契約を締結します。
 
通常の契約では相手の与信調査をすることがあると思いますが、デューデリジェンスはその進化版と捉えてください。
 
意向表明までは、売主が一方的に提出する資料に基づく検討しかできないため、そこには虚偽の情報があったり、あるいは未提出の情報があったりする可能性があります。
これらは評価や買収判断に影響するため、最終契約前にデューデリジェンスという調査を実施して、問題がないかの最終チェックをします。
 
この辺りで従業員への告知左差しを検討してください。
 
【⑨譲渡契約締結・決済】
デューデリジェンスに問題が無いことが確認、もしくは問題が発生した際にはその解決についてお互い合意した状態で、譲渡契約を締結し、決済へと進むことになります。
 
 
【要約】
会社をもっと良くすることを前提の相手としっかり価格交渉をする、という順番が理想。

 
殆どの中小企業経営者はオーナー経営者であり、即ち「経営者」の顔と「株主」の顔を持ち合わせています
 
経営者としてのM&Aの目的左差しは、対象会社の存続・発展。会社をもっと良くすること。
◆株主としてのM&Aの目的は、株式価値左差しの最大化。株を高く売ること。
 
このように、オーナー経営者が2つの顔を持ち合わせるために、M&Aには2つの目的が混在することとなります。
 
原則としては、会社がもっと良くなれて、高値で買ってくれる相手を探す、ということになりますが、実はこの2つを両取りするのは簡単ではありません。
 
例えば会社をとても高く売れたとしますと、買った方は当然そのコスト以上のリターンを期待します。
そのためには、出店ペースを速めたり、厳格なコスト削減を求めたり、現場の負担が増え、組織に機能不全を起こす可能性があります。
 
あるいは、会社にとって最適な環境を提供してくれる相手だとしても、価格が相当に安ければオーナー経営者としての苦労が報われません。
 
どちらかを優先するならば、どちらかが我慢しないといけなくなるかもしれません(もちろん両取りのケースもありますし、少なくありません)が、「会社をもっと良くすること」を優先するべきだと断言します。
 
高値で売れたとしても、その後会社が悪くなってしまっては元も子もありません。
仮に会社が悪くなって、従業員から「なんだ社長だけ大金掴んで、自分たちは最悪だ」と後ろ指指されるようなことになれば、後悔が残ってしまうでしょう。
 
第一義は「会社をもっと良くすること」左差しという前提で相手を探し、その上で相手と十分に交渉して、納得できる価格を獲得するという順番が大事だと考えます。
 
【要約】
M&Aは課題を解決するための手段。課題は事業計画が無いと明確にならない。なので事業計画が必要。

 
飲食業経営者が、会社をもっと良くするためにM&A(譲渡)を検討するとすれば、事業計画の策定が重要となります。
しかし、実態としては事業計画は殆ど策定されていません。
 
その要因は、中小企業M&Aにおける株価の評価方法が影響しています。
 
株価算定には大きく3つの方法があります。
㋐インカムアプローチ(DCF 等):将来的に対象会社から期待される利益等に対する評価
㋑マーケットアプローチ(類似業種比準方式 等):類似業種の上場企業などと比較して評価
㋒コストアプローチ(純資産価額方式 等):純資産に基づいて評価
 
ややこしいので詳細説明は省きますが、中小企業M&Aにおいては㋑㋒がよく使われていて、飲食業は殆どが②です。
減価償却前営業利益の何倍みたいな話を聞かれたことがあるかもしれませんが、それは㋑です。
 
㋑㋒に共通することとしては、どちらも対象会社の過去を評価する方法であることです。
対象会社の事業計画は評価に影響しないため、結果として事業計画策定が行われず、手順が省かれてしまいます。
 
しかし、事業計画策定には株価算定以外にも重要な役割があるのです。
 

 
飲食業経営者としてのM&A(譲渡)の目的は対象会社をもっと良くすることです。
良くするためには、対象会社の課題を明確にしたうえでその解決を目指します。
その解決における一つの選択肢がM&Aです。
 
対象会社が抱える課題は何か?を考える際に、事業計画が無いことには課題は明確になりようがありません。
課題とは、現状と目標とのギャップを埋めるために解決が必要なことです。
目標無くして課題は明確になりません。
 
事業計画とはすなわち対象会社の目標を明確にすることで、これを策定することで初めて会社が抱える本当の課題が明らかになります。
 
課題が明らかになることで、数多ある選択肢の中でM&Aが適切な選択肢なのかどうかを判断することが出来るようになります。
そして、その課題解決を目的としたときに、相手先がどういう会社であるべきかという判断軸が出来上がります。
 
これがないと、相手探しは感覚的になってしまい、高値を提示してくれるところがあれば結局はオーナーとしての利益を優先した判断をすることとなってしまいかねません。
 
しかし、やはり会社をもっと良くすることを優先すべき左差しと考えるのです。
【要約】
自分が投資家だったら自分の会社をいくらで買うか?を冷静に判断することで、自社の価値が見えてきます。

 

ここでは自社の価値について考えます。

 

まず最初に、価値がいくらかは神のみぞ知る、です。

法律で決められた計算方法はありません。

税務的に言えば時価での売却が妥当となりますが、売れた金額こそが時価です。

 

買いたいという人が現れ、その人が提示する金額と、売りたい金額とですり合わせ、着地点を決めて初めて価格が決定します。

ですから、自社の価値は、売らないと分からないのです。

 

とはいえ目安としては、以下3つの考え方が用いられます。

 

㋐インカムアプローチ(DCF 等):将来的に対象会社から期待される利益等に対する評価

㋑マーケットアプローチ(類似業種比準方式 等):類似業種の上場企業などと比較して評価

㋒コストアプローチ(純資産価額方式 等):純資産に基づいて評価

 

しかし、これらは専門的でややこしいため、この場ではこの考え方は敢えて無視して、感覚的に理解して頂くことを目的に説明します。

それでも概ね相場と変わらない金額感を会得できるとおもいます。多分・・・

 


 

自分だったら自社をいくらで買うか?を考えてみてください。

 

すると自然に、

◆投資したらどれぐらい儲かるんだろう?

◆その会社にはどれぐらい借入があるんだろう?

◆どのようなリスクがあるんだろう?

という考えになると思います。

 

これらがまさに価格を決める要素となります。

お気づきの通りで、基本的には不動産と同じ考え方です。

 


 

では、まずは儲けの観点で見ていきます。

 

 

株式は取得したあともその価値は残ります。

ですから、買った時点で回収は既にできています(税務や手数料を無視!!)。

これは不動産と同じで、しかし建物は古くなると価値が落ちるように、企業が保有する資産も古くなれば価値は落ちますし、土地の価格が変動するように株式の価格も変動します。

 

そこから投資としての儲けを出す方法は2通りで、

①配当を獲得するか、

②株式をより高い金額で売却するか、

です。

 

①その会社はいくら配当を出せるのか?

会社の税引き後の当期純利益が配当の原資となります。

当期純利益が2000万円なら、配当に回せる原資は2000万円です。
この会社を1億円で買うなら、1億の投資に対して年間2000万円のリターン、利回り20%ということになります。
 

利回りの考えは 人それぞれ。

10%の利回りで良いと考える人は2億と評価し、25%の利回りが欲しい人は8000万円と評価します。
 

②買った以上の金額で株式を売れればその差額が儲け(=キャピタルゲイン)となります。

では、どうすれば買った以上の金額で売れるか。

 

利回り20%と考える人は2000万円利益を出す会社に1億円の評価を付けます。

ということは、利益が3000万円になれば、1.5億円の評価をつけるということです。

 

ですから、利益が増えれば、その分株式を高く売れる可能性が高くなります。

 


 

続いて、借入の観点です。

 

対象会社に借金があれば、当期純利益からその借金を返済しないといけません

そうすると、配当に回せる金額が減ってしまいます。

 

4000万円の借入残高、当期純利益が2000万円の会社を利回り20%で買おうと思えば、利回り20%なら1億円ですが、そこから借入の4000万円を差し引いて6000万円の評価となります。

 

しかし、対象会社に現金があれば、その現金で借入の返済ができますので、それを相殺して考えることとなります。

 


 

最後に、リスクの観点を付け加えます。

 

今年利益2000万円の会社が、来年も同じ利益を出せる保証はありません

2000万円の利益は最初の2年しか続かないかもしれない。

3年目以降は利益が減ってしまうかもしれないと想定するならば、利回りはもう少し少なく見積もって考えることになります。

 

不動産の場合、利回りが10%(=10年回収)あれば良物件ですが、飲食のM&A市場においては利回り20%以下で売れていく案件は決して多くありません。

これは、会社のほうが不動産よりもリスクが高い、利益が安定・継続しないと思われているからです。

 


 

このような考え方で概ね株価というのは評価されています。

 

会社のオーナー経営者という立場だけで見てしまうと、自社を過大評価しがちになってしまいます。

しかし、自分が一投資家として自社をあくまで冷静に評価しようと考えれば、妥当な目線が出てくるのではないでしょうか。

 

「自社はブランドが出来ているから少し高く買ってもらえないだろうか?」という質問はとても多く頂きます。

しかし、本当にブランドが出来ているなら、それは利益に跳ね返ってきているはずなのです。

ブランド、老舗というような言葉に惑わされることなく、冷静に投資という視点で自社評価されることが大事です。

 

飲食店の場合、新店舗を出すにあたり、想定する回収期間は年々短くなってきています。

昔のようにガツンと投資してガツンと回収するのが難しい時代になっています。

これはそのままM&A市場にも当てはまり、飲食企業への投資に対する目線は年々厳しくなっています。

すなわち、価格が下がってきているということで、これは事実として抗うことができません。

 

そのような時代の流れも汲み取りながら、株式の譲渡については検討することが必要です。

 

【要約】
後継者を検討するときには、株式に付随する強力な対象会社に対する権限の承継も併せて適切に検討する必要があります。

 

後継者を親族や社内から抜擢する場合、オーナー経営者が保有している株式については要検討です。

 

株主には様々な権限や権利が生じる左差しのは書いた通りです。

 

※ここではオーナー経営者が対象会社の株式を100%保有していることを前提とします

 

取りあえず代表の座だけを譲り、株式はしばらく自分で保有し続けることは一つの選択肢です。

ある程度任せながらも、株主として経営者を監視するのは、株主の本来の役割でもありますので理にかなっています。

 

問題となるのは、オーナーがお亡くなりになったときや、株式を贈与していくときです。

 


 

【例】

奥様A子、子供B太郎、子供C子の4人家族のオーナーが急死し、奥様に50%、子供にそれぞれ25%ずつ株式が相続されたとします。

そして、B太郎が後継経営者を務めることになったとします。

 

ここでは以下のような問題が想定されます。

 


 

①経営に関与する問題

 

B太郎は僅か25%の議決権しか保有しないため、株主総会の決議事項においては常に家族の同意が必要となります。

A子が最大株主ですので、経営のことを何もわかっていない奥様であったとしても、その合意を得ないことには重大事項の決議はできません。

A子がC子を巻き込んで(その逆も)過半数の議決権を確保すれば、B太郎を取締役から解任することも可能です。

いやいや、家族内でそんなことあり得ないと思うかもしれませんが、現実的には十分にあり得ることです。

 

A子、C子にとって、保有株式の価値はB太郎の経営成績に委ねられますので、B太郎の経営が良くないと思えば解任したくなる動機はあります。

例えば、会社を中長期的に成長させるために今年は膿を出し切る期間として、あえてB太郎が大幅赤字を計上する経営判断を行ったとします。

A子、C子は経営の素人で、そんなこと分からないため、B太郎を経営者として不適任と捉えて解任に動いてしまう可能性があります。

 

このように、ある日突然会社に対して大きな権力を有する大株主となり、経営のことも分からないのに自身の資産価値を保護するために余計な口出しをする、ということは想像してみて頂くと、意外とあり得ることだとお分かり頂けると思います。

 


 

②お金に換えたい問題

 

A子、C子に相続された株式は、帳簿上は大きな価値があります。

しかし、A子、C子は経営に関与する意思は全くないため、株式のままではお二人にとってはその価値が見出されません

 

C子はその後結婚し、子供もでき、お金が何かと必要となります。

A子も高齢になってきたので、シニア向け住宅の購入を検討し、やはりお金が必要となります。

 

そこで、保有する株式を現金化したいと考えます。

B太郎に株式の買い取りを相談しますが、B太郎には到底そのような資金はありません。

 

結果的に、A子とC子は高い株価を設定してくれた競合企業に譲渡することを決めてしまいます。

 

B太郎からすれば、これは大きな問題です。

会社を継いで以降、心血を注いで会社を成長させてきましたが、ある日75%の株式を保有する大株主が現れることになるのです。

 

新しい株主がB太郎と違う考えを持っていれば、B太郎は解任される可能性が高くなるでしょう。

 

心血注いだ会社の代表の座をある日追われることになったB太郎とA子、C子の関係が悪くなるのは想像に難くありません。

 


 

株式を分散して相続・贈与したり、代表者≠株主の状態で後継者にバトンタッチすると、このような問題が生じる可能性があります。

 

ですから、株の承継においては、単に資産としてではなく、対象会社に対してとても強い権限を持つものとして、適切に検討する必要があります。