【要約】
会社をもっと良くすることを前提の相手としっかり価格交渉をする、という順番が理想。
殆どの中小企業経営者はオーナー経営者であり、即ち「経営者」の顔と「株主」の顔を持ち合わせています。
◆経営者としてのM&Aの目的は、対象会社の存続・発展。会社をもっと良くすること。
◆株主としてのM&Aの目的は、株式価値の最大化。株を高く売ること。
このように、オーナー経営者が2つの顔を持ち合わせるために、M&Aには2つの目的が混在することとなります。
原則としては、会社がもっと良くなれて、高値で買ってくれる相手を探す、ということになりますが、実はこの2つを両取りするのは簡単ではありません。
例えば会社をとても高く売れたとしますと、買った方は当然そのコスト以上のリターンを期待します。
そのためには、出店ペースを速めたり、厳格なコスト削減を求めたり、現場の負担が増え、組織に機能不全を起こす可能性があります。
あるいは、会社にとって最適な環境を提供してくれる相手だとしても、価格が相当に安ければオーナー経営者としての苦労が報われません。
どちらかを優先するならば、どちらかが我慢しないといけなくなるかもしれません(もちろん両取りのケースもありますし、少なくありません)が、「会社をもっと良くすること」を優先するべきだと断言します。
高値で売れたとしても、その後会社が悪くなってしまっては元も子もありません。
仮に会社が悪くなって、従業員から「なんだ社長だけ大金掴んで、自分たちは最悪だ」と後ろ指指されるようなことになれば、後悔が残ってしまうでしょう。
第一義は「会社をもっと良くすること」という前提で相手を探し、その上で相手と十分に交渉して、納得できる価格を獲得するという順番が大事だと考えます。