コロナ禍が飲食業のM&A動向に与える影響について記載します。
まず、一番分かりやすく変化するだろうと思われるのは「価格」です。
飲食業界に限らず、M&A市場は基本売り手市場とこれまで言われていましたが、今後暫くは買い手市場に変わると思われます。
昨年まで日本は好景気にありましたので、企業買収による更なる成長を目指す企業が増えていました。
しかし、中堅・大手企業にもコロナは深刻な被害をもたらしており、買収できる企業が大幅に少なくなると予想されます。
当社にて、4,5月中、過去に買収検討したことのある飲食企業に飲食のM&A案件を提案をしておりましたが、買収検討しないと答えた企業の内61%がコロナを理由とするものでした。
それだけ買収候補企業は減っていると言えます。
一方で、譲渡希望企業は急速に増加していきます。
コロナ禍で、当社からの営業アプローチが出来ていないにも関わらず、例年と変わらない水準の譲渡相談が来ており、更に徐々に増える傾向となっています。
買い手が半減し、売り手が数倍増になることで、売り手にとってはし烈な競争環境になってしまいます。
買い手にとってはそれだけ案件が多く出ますので、高い案件に敢えて手を出す必要はないですし、理念や戦略結合が明確で、確信を持てる先しか買わなくなるはずです。
また、価格が高い安い以前に、これまでは買い手が付いていた多くの企業にそもそも買い手が付かなくなることが想定されます。
売却額は利益の◯倍という話を聞かれたことがあるかもしれませんが、今後は難しいかもしれません。
実際に、コロナ前に買収した事業をコロナ禍中に即譲渡したという事例を聞きました。
その間僅か数か月にも関わらず、2億円弱で買収した事業が数千万円に落ちてしまったそうです。
それでも売主としては、今後想像されるマイナスを考えれば、売れただけ運が良かったとのことでした。
売上が昨対ベースに戻るか分からず、足元は厳しい状況の中で、昨年までの実績を元に価値評価をすることは難しくなります。
譲渡先が見つかり、値段もちゃんと付くのは、企業としての強みが明らかな一部企業のみになると思われます。
先の事例のように、価格が大幅に下落してしまったとしても損切り目的に譲渡を推し進めるか、回復させるかは判断に迷うところです。
明日は、それでも譲渡を検討する際の考え方をご紹介します。