アフターコロナの飲食M&A動向 〜ファンド編〜 | 飲食M&Aアドバイザーによる、M&Aを検討するオーナー経営者向けブログ

飲食M&Aアドバイザーによる、M&Aを検討するオーナー経営者向けブログ

主にM&Aを譲渡側として検討する経営者向けです。

【支援実績抜粋】
◆地域トップクラスの飲食企業の、上場企業グループへの参画
◆100店舗近く展開する成長企業へのファンドの資本参画

など。1店舗〜数十億の企業まで数多く支援してきております。

コロナ禍によって飲食業のM&A動向は目覚しく変化することが徐々に見えてきました。
 
今回はここ数年間、投資側として主要プレーヤーであったファンドの動向をお伝えします。
 
まず結論から言いますと、ファンドの飲食業に対する見方は相当に厳しくなる、と考えます。
 
ファンドの投資を受け入れたオーナーの多くは、周囲が唸るような高額条件を提示され、大変成功した個人として注目を受けた方も少なくありません。
 
そのような姿を見ていつか自分もと思われていた経営者も多いものと思います。
 
今後その環境が変わる要因を説明するにあたり、ファンドの構造をまずは簡単に説明致します。
 

【そもそもファンドとは?】
 
ファンドの目的は、投資家たちより集めた資金を運用し、運用益を投資家に還元することです。
 
M&A市場に登場するのは主に「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」と呼ばれ、未上場企業の株式に投資し、その価値を高めることでリターンを狙います。
 
投資家に運用益を還元するために、PEファンドの活動は期限付きであり、すなわちファンドに買われた株は必ずまたいつか売られるということが特徴です。
 
 
【ファンドと「レバレッジ(=てこ)」】
 
さて、PEファンドは投資において、LBOローンを多く用います。
 
※LBO=レバレジッド・バイ・アウト=てこを利かせた買収
※「レバレッジ」=てこ=小さい力で大きなエネルギー
 
100億円の投資があれば、ファンドは自己資金(エクイティ)から例えば50億円、銀行から50億円借りて、合わせて100億円の投資を実行します。
 
その50億円の融資は投資した会社の利益から返済していきます。
 
ファンドにとっては、レバレッジを利かせることで、運用資金量以上の投資ができるようになり、分散投資や大きなリターンが実現しやすくなります。
 

 
さて、ファンドの説明は以上として、話を元に戻します。
 
何故今後ファンドの飲食業に対する投資が厳しくなるか?
2つの考えをお伝えします。
 
【①飲食事業の将来性に対する悲観】
 
投資先の価値を高めることを目的とするファンドにとって、将来性のない投資を敬遠するのは当然のことです。
 
飲食業界が活況を取り戻すのには相応の時間がかかると想定される中、悲観的観測の中では投資は出来なくなってしまいます。
 
また、コロナ禍のようなことが数年後にまた起きないとも言えない中で、その影響を特に大きく受ける業界、あるいは実際今回大きな打撃を受けた会社に対しては、悲観的にならざるを得ない、という状況です。
 
【②LBOに対する考え方の変化】
 
LBOで調達した借入は投資先企業の債務となります。
 
今回、コロナ禍には2つの問題側面があります。
 
⑴緊急事態宣言による休業期間中、資金繰りが強烈に圧迫されること
 
⑵制度融資などにより資金繰り危機を乗り越えた企業が、増大した借入を返済していかないといけないこと
 
LBOで元々借入が増大していた会社には⑴⑵が大きくのし掛かります。
 
コロナ禍では、上記懸念により、追加借入をさせずにファンド資金を追加投入するなど、様々な判断がありました。
 
レバレッジを利かせすぎてしまうと、投資先企業が厳しい状態に置かれてしまう可能性から、今後考え方が変わる可能性がありそうです。
 
レバレッジをあまり利かせないとなれば、ファンドとしてはその分だけ期待リターンが減ることになります。
 
それは投資額に反映されますので、ここ何年か実行されてきたような高額な条件提示は今後出来なくなる可能性があるのです。