永井紗耶子氏の小説『木挽町のあだ討ち』は、2023年に直木三十五賞と山本周五郎賞をダブル受賞した。
江戸の芝居小屋でたくましく生きる人々が、武家社会の愚かな因習の裏をかく、痛快で心温まる物語。
今回も、この作品を「観ながら読」んでみた。
映画は2026年2月公開。
監督・脚本:源孝志
出演 : 柄本佑 長尾謙杜 瀬戸康史 滝藤賢一 北村一輝 渡辺謙 高橋和也 正名僕蔵 イモトアヤコ
ある晩、木挽町の芝居小屋森田座の裏手で、芝居見物を終えた大勢の客たちが見守るなか、白装束の若武者菊之助が、親の仇である作兵衛と死闘ののち、みごと仇討ちを果たした。
その話がもはや語り草となっていたころ、故郷に錦を飾って家督を継いだ菊之助の許嫁の兄と名乗る武士、加瀬総一郎(柄本佑)が森田座に現れる。
総一郎は森田座の木戸芸者一八(瀬戸康史)に近づき、「木挽町の仇討ち」について詳しい話を聞きたがる。
どうも仇討ちについて疑念を抱き、調べようとしているようだ。
そこまでで約30分。
いったん映画を中断して、原作を読み始めた。
小説の各章は、加瀬総一郎が話を聞いて回った木戸芸者一八のほか、殺陣師の相良与三郎、衣裳部屋の女形ほたる、小道具職人の久蔵とその妻、そして芝居書きの篠田金治らの「語り」でできている。
そこで小説を読みつつ、ところどころ前後して映画の続きも少しずつつまみ食いで観ていった。
次々と代わる語り手たちのイメージを、頭に入れるためでもある。
映画では、殺陣師の相良与三郎を滝藤賢一、衣裳部屋の女形ほたるを高橋和也、小道具職人の久蔵とその妻を正名僕蔵とイモトアヤコ、そして、黒幕とおぼしき篠田金治を渡辺謙が演じている。
小説では、語り手それぞれの身の上話が詳しく語られるのだが、映画では大幅に省略されている。
その一方、原作の「語り」から読者の頭の中に浮かび上がるストーリーを、この映画は実際の場面として観せていく。
その脚本の巧みさが際立っている。
脚本から手掛けた源孝志監督は、只者ではない。
映画を観ながら小説を読み終え、そのあとで映画も最後まで観たが、どちらも120%以上、満足できた。
この作品は、映画を観てから小説を読む。
それが断然おススメだ。
そうすれば、まず映画で巧みなストーリーを謎解きのスリルとともに堪能し、結末の感動を味わうことができる。
そのあとで小説を読めば、映画で親しみを覚えた各登場人物たちについて、それぞれの人生の悲喜こもごもを、まるでスピンオフドラマのように読む楽しみがある。
だが可能なら、次に示す私流「観ながら読む」方法をやってみてほしい。
まず2時間の映画の半分弱、55分まで観る。
総一郎が小道具職人久蔵夫婦の話を聞き終わったあたりである。
総一郎がいよいよ黒幕らしき戯作者篠田金治に会いに行く直前。
登場人物は出そろい謎が深まったこの時点で、映画のイメージを頭において小説を読み始める。
ここまでのストーリーの理解と、芝居小屋の背景や人物の映像イメージを脳内に仕込んでおけば、「語り」の小説を読み慣れていない人でも、その世界にスッと入っていけるはず。
そして小説を最後まで堪能したら、再び映画に戻って後半を観る。
すると、小説で結末がわかっていればこそ、映画で工夫された展開のひねりや、画になる感動的な結末をいっそう楽しむことができるだろう。
映画を観ながら小説を読む。
まさにそうする価値のある小説であり、映画であると思う。











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