観ながら読んだ 東野圭吾『沈黙のパレード』【ネタバレ無し】 | 映画を観ているみたいに小説が読める イメージ読書術

映画を観ているみたいに小説が読める イメージ読書術

小説の世界に没入して
“映画を観ているみたいに” リアルなイメージが浮かび
感動が胸に迫り、鮮やかな記憶が残る。
オリジナルの手法「カットイメージ」を紹介します。
小説を読むのが大好きな人、苦手だけど読んでみたい人
どちらにもオススメです。

 東野圭吾のガリレオシリーズは好きで、テレビドラマ(第1シリーズ)も見ていたし、前2作の映画、『容疑者Xの献身』と『真夏の方程式』も観た。

 しかし、小説で読んだのは『聖女の救済』くらいか。

 映画を観た2作も、原作は読んでいない。

 

 東野圭吾の小説を読んだのは15冊ほどだが、多くの場合、善良な人々が犯罪に手を染めてしまう哀しさが、謎解きの末に待っている。

 その切なさを味わうのが好きだ。

 

 今回、AmazonPrimeVideoで、ガリレオシリーズの最新作『沈黙のパレード』が見放題になっていたので、いよいよ「観ながら読む」でガリレオの世界を楽しめるとワクワクした。

 さっそく原作を取り寄せておいて、映画を観始めた。

 

 2022年公開  監督;西谷弘、脚本;福田靖

 出演は言うまでもなく、福山雅治、柴咲コウ、北村一輝 ……

 

沈黙のパレード

 

 年に一度の仮装パレードが有名な東京都下の菊野市(架空)。

 家族経営の食堂「なみきや」は地域の人々に愛され、常連客が集う。

 なみきやの上の娘並木佐織は、歌の才能を見出され、皆に応援されて、歌手デビューにむけレッスンに励んでいた。

 

 しかし、バラ色の将来を夢見ていたはずの佐織は、ある日突然失踪し、3年後に静岡県の火事現場から焼死体で見つかる。

 容疑者として逮捕された蓮沼寛一は、15年前にも幼女誘拐殺害の容疑で起訴されたが、終始黙秘を貫いて無罪となった男である。

 当時の担当として無念の涙を吞んだ草薙刑事(北村一輝)は、今度こそはと内海刑事(柴咲コウ)とともに状況証拠を固めるが、今回も蓮沼は黙秘を貫き、起訴見送りとなる……。

 

 そのころ、菊野市の研究施設に通う物理学者の湯川教授(福山雅治)は、なみきやでしばしば食事をし、地域の人々と触れ合う。

 そしてパレードの日、湯川はなみきやの下の娘に誘われて見物を楽しむが、実はその時間帯に、蓮沼寛一は何者かによって殺害されていた――。

 

 なみきやの家族をはじめ、彼らを愛する地域の人々の多くに、殺害の動機がある。

 湯川は、彼らのためにこそ、事件の謎を解こうとするが――。

 

 映画を30分ほど観て、原作を読み始めた。

 東野圭吾『沈黙のパレード』(文春文庫)。

 

沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)

 

  映画化で上掛けしたカバーは、同じ写真でつまらない。

  そのカバーを外したら出てきたオリジナルの表紙はこちら。

沈黙のパレード

 

  ぱっと見にはよくわからないが、シュールなイラストで、じっくり見るとおもしろい。

 「仮装パレード」のオマージュであろう。

 

 さて、小説は480ページで読み応えがあるが、福山雅治はじめ映画のままのイメージで、どんどん物語の世界に入っていける。

 途中、また映画に戻って30分ほど半分近くまで観たので、パレードの場面などリアルな映像をチャージして、さらに読み進めることができた。

 

 タイトルの「パレード」は、菊野市の仮装パレードを意味しているが、パレード自体はにぎやかで楽しい。映画では見どころのひとつだ。

 

 「沈黙」の意味は、物語が進むにつれていろいろな場面で、いろいろな人物の「沈黙」として多面的に見えてくる。

 まさに「沈黙のオンパレード」。

 

 この事件の真相は、湯川の言うように「複雑なパズル」だ。

 構成するピースが多すぎて、それが何重にも交錯している。

 一度見えたと思った真相の奥に、まだまだ謎が隠れている。

 

 湯川はその謎を科学者の眼で推理し、内海と草薙の協力を得て検証していく。

 そして見えてくる真相は……。

 

 しかし、湯川の行動は、自分を温かく迎え入れてくれた地域の人々への感謝に満ちて、限りなく優しい。

 今回もまた、悪意なき人々の犯す罪が、哀しくも切ないのだ。

 

 小説を満足して読み終え、映画の残り半分も実写の迫力を堪能することができた。

 映画のできばえも見事である。

 

 ただ、複雑なパズルの謎解きを楽しみ、その先に見えてくる感動を味わうには、やはり映画を途中まで観てイメージの材料をインプットしてから、原作を読むのをおススメしたい。