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B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

昨日は昼から出社。色々処理を進め21時過ぎまでやったが終わらなかったなあ。

まあこれで月曜の業務は少し楽になるかなって感じ。持ち帰りの仕事は最小にとどめたから明日、と言うか今日日曜はゆっくりしよう。


映画に行こうかと思ったがどうやら「ミッドサマー」は福島では来週から公開らしい。これがこちらでの最後の映画になるかな。


引越しまではまだ2週間残しているが、仕事の整理も当然ながら、荷物の整理もしなくては、なんだよなあ。

金曜にタイヤを履き替え、冬タイヤも処分したから、あとはDVDや本、衣類と日用品を詰めるだけのはず。レオパレスだから引越しに家電類が無いってのが楽だわな。そこに5年半住むとも思わなかったが。


だから前の記事に書いたいくつかの飲み会に参加しても、もう一本映画を観るくらいはまあなんかなるだろう(笑)。


しかし、先程シャワーを浴びていたら風呂場の電気が切れやがった。ここに来て買い替えも悔しいがしょうがない。

そう言えば最近5年半愛用したドライヤーから異音が出始めていたな。使うたびに気になってしょうがない。なんとか最後までもって欲しいものだと切に願う。


日用品もアルミホイル(銀ホイルと言ったら「昭和の表現ですよ〜」と笑われた())やラップ、ティッシュが相次いで切れたり、歯磨きにトイレットペーパーや寝癖直しウォーター、デオドラントのスプレーも残りわずかと、ここに来て終わりまでぴったりと使い切るつもりだった日用品を買い足さなければならない可能性も大きくなってきた。


この辺りなかなか計算通りにいかないのが悔しいところ。貧乏性なので「使えるのに捨てる」のが嫌だから、とにかく食品含めなるべく残すことないようきちんと計算して買い物するぞ!


とかなんとか言っているくせに、この間ヤフオクで見つけて衝動買いしたものが今日届いたのだった!()


おまけにマカロニウエスタンやBiSHに加え、最近は愛読ブロガーさんの影響でTHE MODSのDVDなどもチェックし出してしまい、その度に「やめろやめろ、今更これ以上増やすな」と自分を戒めていたのに…(笑)。


こまわり君の「がきデカ」で一世を風靡した山上たつひこの初期のギャグ漫画「喜劇新思想体系」全6巻に「半田溶介女狩り」がついてたんで思わずポチッとしてしまったのが、今朝届いたのだ()

大学の時に2冊ほど持っていて売っぱらったのに全巻買い直してしまうとは。我ながら堪え性がないな(苦笑)。まあ題名と異なり、表紙のまんまのエロで下品な作品だから、家にいたら買えないし、一人暮らしの最後のチャンスだからとか自分に言い訳して()


いやあ、また荷物増やしてどーするんだと一応反省はするけど後悔はせず眠るとします()

意図せず「ブラックパンサー」に続いての黒人監督映画鑑賞になったこれを紹介。
おお、ポスターでは全くわからなかったが、主役のダニエル・カルーヤ、その「ブラックパンサー」にも出ていたんだった(笑)。
ゲット・アウト 2017年)

GET OUT


製作・監督・脚本 : ジョーダン・ピール 製作 : ショーン・マッキトリック、ジェイソン・ブラム、エドワード・H・ハム・Jr 製作総指揮 : レイモンド・マンスフィールド、クーパー・サミュエルソン、ショーン・レディック、ジャネット・ヴォルトゥルノ 撮影 : トビー・オリヴァー プロダクションデザイン : ラスティ・スミス 編集 : グレゴリー・プロトキン 音楽 : マイケル・エイブルズ

出演 : ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー、スティーヴン・ルート、リルレル・ハウリー、ベッティ・ガブリエル、マーカス・ヘンダーソン、レイキース・スタンフィールド、エリカ・アレクサンダ、ジェラルディン・シンガー、リチャード・ハード


情報シャットアウトしたまま観て良かった!すこぶる面白く、先日観た「パラサイト」みたいに思っていたのと全然違う「怖さ」のスリラー映画だった。


人種問題っては本当に根深いと思うのだが、ここ日本にずっといるとなかなか実体験としてはわからないもの。それでも数々の映画でも垣間見た様々な黒人差別を「知識」として背景にしながら観ていたのだが、予想の斜め上をいく展開に浸ってしまった。


ニューヨークに暮らす黒人のカメラマンクリスは白人の恋人ローズがいる。彼はローズの実家に行くことになっているが、彼女の両親は娘の恋人が黒人であることをまだ知らないという。

「オバマに3期目があったら支持するような両親よ」とローズは言うがクリスはどこか不安を持ったまま彼女の家に向かう。

いざローズの実家アーミテージ家に着いてみると、心配ないというローズの言葉通り、家族みんなクリスを温かく歓迎してくれた。

医者である父親ディーンと臨床心理士の母親ミッシー、ちょっと荒っぽい弟ジェレミーも含め、心配した「偏見」は無いようだ。


だが庭の管理やメイドなど使用人として働いている黒人の姿がある。

昔の南部のように白人が黒人を使用人として使っていることに対し、親の時代からの使用人でそのまま雇っていると説明する父親。

同じ黒人なのに自分だけ「客」として招かれていることにも居心地の悪さはあるのだが、それだけでは無い「違和感」を抱くクリス。



涙目で「No No No…」と繰り返すメイドは怪しさいっぱい。


この辺りのちょっとした会話の間や登場人物の視線で「不穏な空気」を醸し出して行くのが上手くて、観ているこちらも、クリスと一緒に次第に粗探しのようにこの一家と使用人たちの怪しいところをチェックし出してしまう()


その夜。眠れなかったクリスは外でタバコを吸っていると、窓の外をガラスに写った自分の姿をぼーっと眺めるメイドや、遠くから猛然と走ってきてクリスの目の前で曲がっていく庭師に遭遇する。やはり何かが変だ。この「実害があるわけでもないのだがなんだか物凄く不穏」という空気感がすごく良い。

この深夜のダッシュ、怖かったな〜(笑)。


家に戻ると母親に呼ばれる。昼間、喫煙者であるクリスに母親は禁煙できるセラピーを受けないかと誘っていたが、クリスはやんわり断っていた。

だが、今度は断りきれずにソファに座ると、幼い頃母親が轢き逃げされ心配になっても何もできなかった過去を語ると共に、暗闇に落ちて行くような催眠に引き込まれてしまう。

この辺りまでは「黒人がこの催眠術などで洗脳され、徹底的に支配されて虐められてしまうのか?」と思いながら見ていたのだが、そんな予想は簡単に覆されてしまうのだ。


翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティが開かれ、多くの招待客が集まる。裕福な白人ばかりに囲まれるがやはり皆、黒人を誉めこそするが、差別する者もいない。

居心地の悪さを感じるクリスだったが、その中に白人の夫人に連れられた黒人青年を見つけ話しかけるのだが、この青年、穏やかと言うには「何か」が違う。クリスのグータッチに握手を返してくるなど「黒人のノリ」が無いのだ。


スマホで彼を撮影した際に誤ってフラッシュを焚いてしまった瞬間、その青年が急に暴れ出しクリスにつかみかかって「出て行け!」と叫ぶ

母親の催眠療法なのか、落ち着きを取り戻した青年はパーティを辞し、残った皆が父親の音頭で「ビンゴゲーム」に興じる間、クリスはローズと散歩と称して外出し、家を発つことにするのだが


以下毎度ながらネタバレ近いこと記しているので申し訳ない!


ここからの展開は、それまでのジワジワ感からアクセルが入るが、とにかく脚本が上手い。


出て行く準備をしているときに見つけた「過去の写真」の衝撃。

こちらの予想を簡単に覆すとんでもない真相がわかると、これまでの「違和感」の謎が解けるとともに、伏線回収と言うより「裏の意味」がどんどんわかる後半は、スリラーというよりホラーに近くなる。

禁煙を勧める両親の言葉も、パーティの客がクリスの才能を称え、黒人の身体能力を褒め、身体を確かめるように触る様も、「うわ、そう言うことだったか!」の連続なのだ。


差別はある意味、恐怖の裏返しと聴いた。

今のコロナウイルスだって、最初は日本で中国人に対して、世界的にはアジア人に向けての差別もいくつも報道されていた。

この映画では、黒人差別がその身体能力の高さへの憧れが裏側にあることが興味深い。


前半、実家に向かう途中で、鹿をはねてしまう事故があった。運転もしていないクリスに身分証を求める警官にローズは毅然と抗議をする。

黒人であるクリスの謂れのない差別に対して抗議するローズのスタンスをしっかり描写しているとしか見えなかったのに。

パーティを抜け出しての散歩の時もまたしかりで、クリスはこの子がそばにいてよかったよなあと思っていたのに。


これらも全部「別の意図」のためだったのか!とわかるのは中々にショックだった。


そして題名でもあり、黒人青年の発した「Get out!」の意味もまたしかり。

この間の「へレディタリー 継承」同様、身体を「容れ物」として乗っ取られるってのは、ほんと怖いよなあ…。


前半の鹿も、轢かれて死んだクリスの母親の話と重なったり、「殺してくれてありがとう。増えすぎて邪魔だ」とローズの父親が言っていたが、鹿そのものがラストの「反撃」にも絡むとなると「黒人」を指しているようにも見えるのも印象的だった。


クリスの反撃と共に、映画冒頭の事件や、黒人使用人の違和感含めて、これらの「すべての意味がわかる」クライマックスは、二重の意味のカタルシスで、映画としてかなり気持ちよかった。


どうやら別のラストを撮影したものの、あまりの救いのなさに今のラストにしたとのことで、その辺りはやはり「アメリカ映画」だなあ、とは思う。だが、勉強不足で全く知らなかったが人気コメディアンだと言うジョーダン・ピール、監督デビュー作で、この出来栄えは凄いよなあ。


ただ、後から一点だけ気になったことがある。

催眠術で意識が封じ込められたのならともかく、父親の手でアレを丸々入れ替えてしまったら「意識」は封じ込められることもなく、そもそも無くなっちゃうじゃないかと思うのだが…(笑)。ここだけは後から非常に引っかかってしまったのだ。どなたか説明つきますかね?()


あ、あと「持つべきものは良き友人」と言うことも大事なポイントで、ここは笑いと共に花丸をあげたいぞ()

さて、次は「アス」もチェックしなくては!

懸案だったイベントは予想通り中止となったが、契約を変えて一部だけ実施と、すっきりしない決着となり、加えて面倒な契約処理が増えてしまい月末までに終わるのかと不安になってきた今週。


昨日は県庁のお世話になった部署に届け物もあり伺ったら、この春でやはり異動となる課長から、俺の仕事への感謝の直筆メッセージと共に一緒に仕事をした時の制作物をプレゼントとして頂戴したりの、ちょっと感激場面もあり「いよいよ終わり」感は日に日に増している。


終えねばいけない処理が溜まりまくっているので、今日金曜か明日はデスクワークと片付けに出社するつもりだったのだが、一緒に仕事をしていた同僚が「それじゃもう早仕舞いして飲みましょうよ!」と誘ってきて、昨夜はあっさり楽しく飲んで帰宅となってしまった。


帰宅後ついGYAOで映画を観ながらうつらうつらして夜更かし、今日は強風に雨だったり雪だったりの散々な天気なのであっさり仕事は明日に回すことにしたのだった()

で、先程引っ越しに向け、2社目の見積もり訪問を受けたところ。ますます「いよいよだな」と思えてくる。


俺の今の職場の契約は月末なんだが、翌日からも作業フォローで残るため、次の週まではこちらにいて、4月2週目、恐らく7日が引っ越し予定となる見込みだ。


昨夜飲んだ同僚によると、他の元同僚たちが、ぜひ飲みたいからなるべく遅くまでいてくれと要望しているらしい()

今週は他にも色々な方が俺の終了を聞きつけて連絡くれたのが嬉しかったな。


5年半前の出向仲間で今は元の会社に戻った奴や、仕事で長い期間事務局を担ってくれた会社からは、そこを退職した方を含めてどうしても一席設けたいなどなど。


30日の今の職場の「オフィシャル送別会」と翌週3日の出向元の営業所での「壮行会」などに加え、今の職場の後輩たちも、昨日も飲んだのに上司を除いてアンオフィシャルでまた別に飲みたいと言ってくれている。

みんな年度末の仕事を抱えているから大変だろうに(俺もだが()


でも、多分もう会うことがない人たちがほとんどだから、せっかくのお誘いはすべてお受けする覚悟だ()


昨夜の飲み会でも、県庁の課長からのプレゼントを横で見ていた同僚からは「取引先というより一緒に仕事をやり遂げる戦友みたいに思われていたんだよね」と言われたり、「皆が最後に会いたいってこんなにたくさんの人から言われるの、ジャンゴさんの人徳ですよ」なんて後輩が言うので「あまり言われないからもっと言ってくれ」とリクエストしておいた()


思えば良い仲間に巡り合えた5年半だった。苦手な奴はいても嫌な奴は誰もいなかったな。取引先では一部いたけど()

そういう意味では本当に幸せな日々だったと、心から思う。

残りの日々を愛しみながら過ごしていきたいな。


さて雨も雪も止んで日が差してきたから、最後のタイヤ交換と履いていた冬タイヤ処分をしに行ってくるとしますか。

俺の業務を引き継ぐため、このところ常に行動を共にしている同僚が、俺に感化されたそうで、最近映画をよく観出している。


劇場では「パラサイト」や「AI崩壊」と俺が観たやつの他、先日は「FUKUSHIMA50」も観てきたそうだ。

俺と同じく単身赴任なんで時間だけはあるのだな()


で、先週は週末観たいからお勧めDVDを貸してくれという。SFやホラーは苦手というので俺のコレクションの半分以上がまず該当から外れてしまったし()、いきなりマカロニ・ウエスタンは辛かろうと思い、まずはアジア編だ!とチョイスした。

それもモロにカンフー物もノーサンキューだろうしなあと思い「オールド・ボーイ」と「エグザイル/絆」と「孫文の義士団」を貸したら、この土日に全部観て「さすがジャンゴさんチョイス!どれも最高だった!」と喜んでくれたのだ。

こういうの、嬉しいんだよね()


おまけに「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」と「グリーンブック」もレンタルして観たらしく、良かったらどうぞと又貸ししてくれようとしたが、どちらも鑑賞済みだったので丁重にお断りした()

「そりゃ観てるよねえ」と苦笑いしていたが、この土日だけだと俺よりよく観てるぞ()


チョイスが間違いないのわかったから、もっと貸してくれと言う(信じてなかったのかよ!笑)

で、昨夜選んだのが「ワンス〜」が良かったというので同じタランティーノの「イングロリアス・バスターズ

集団戦闘物も好みの様子だったので「マグニフィセント・セブン」。

あとは俺の趣味でペキンパーの「ガルシアの首」とロベールアンリコの「追想」をチョイス。

そしておっさんなのに実はラブロマンスが好きだというので()、俺の持っている唯一のラブストーリー「ある日どこかで」を貸したのだった。

今日も俺より早く帰ったからもしかしたらどれか既に観ているかもしれないな()


Ameba以前のブログを含め、いくつかレビューしているのを思い出してちょっと読み返したのだが、「オールドボーイ」と「ガルシアの首」書いていなかったんだな。これはいつか書かなくては。

あと、昔の方が文章もレビュー自体上手かったなと気付いてしまった()

やはり俺みたいに考察も分析も苦手な奴は、観た直後に勢いで書かないとダメですな()


残り2週間、彼にあとは何を貸してやろうかと考えるのも楽しい。でも一般受けしそうなの少ないのが悩みの種。それと俺がまだ観ていないのは貸したくないし()


いっそマカロニウエスタンやカンフーもの、モンティパイソンとか、この際ホラー嫌いでもロメロの「ゾンビ」は貸して、洗脳してやろうかな、とか考えているのであった(笑)。

昨日は雪が止んだ夜も寒く、セブンイレブンで袋で売ってたおでんを食べたけど、やはり良いよなあって事で、今日大根やらこんにゃくやら厚揚げをまた買ってきて増量してしまった(笑)。もうあと2週間なんだから買い物減らすつもりだったのになあ(笑)。

そんなおでんを食べた後、前のブログを書き終えてアップ後の深夜、これまたあと2週間で観られなくなるレオパレスポイントで鑑賞できる映画をレンタルして自宅鑑賞した。

ブラックパンサー(2018年)

BLACK PANTHER


監督・脚本 : ライアン・クーグラー 製作 : ケヴィン・ファイギ 製作総指揮 : ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンソ、ネイト・ムーア、ジェフリー・チャーノフ、スタン・リー 原作 : スタン・リー、ジャック・カービー 脚本 : ジョー・ロバート・コール 撮影 : レイチェル・モリソン 視覚効果監修 : ジェフリー・バウマン 編集 : マイケル・P・ショーヴァー、クローディア・カステロ 音楽 : ルートヴィッヒ・ヨーランソン

出演 : チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、レティーシャ・ライト、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、アンディ・サーキス、スターリング・K・ブラウン、フローレンス・カサンバ、ジョン・カニ、イザック・ド・バンコレ、コニー・チューメ、ドロシー・スティール、ダニー・サパーニ、デンゼル・ウィッテカー、フランチェスカ・ファリダニー、セス・カー、スタン・リー、セバスチャン・スタン


「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」に初登場したブラックパンサー。名前もシルエットもカッコイイじゃんと思っていた彼のMCU単独作。

大ヒットと評判の良さは聞いていたがなるほどこれは面白かった。


まず、ブラックパンサーが宇宙人とか神様とか「超人」過ぎないのが好み(笑)。とは言えあのキャプテン・アメリカの盾の材料でもある希少鉱石ヴィブラニウムを持つアフリカのワカンダの「王様」なんだけどね(笑)。

そのヴィブラニウムを狙う武器商人との戦いと、ワカンダ自体に恨みを持つ従兄弟のキルモンガーとの王位継承争いがあってと、ドラマはなかなかに飽きさせなかった。


ただし、武器商人との戦いは「キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー」に続いて韓国が舞台で、カジノでのアクションや街中でのチェイスなどもあるものの、王位継承争いは言わばお家騒動なんで()、屋外での部族同士の衝突も盾と槍という原始的な武器(でも、機能はハイテク())で、スケール感はあっても、なんかちょっとヒーローの戦いとしてはこじんまりしてしまったのは唯一残念なところ。


王座を引き継ぎ、実は超文明国であるワカンダの秘密を守ることと、その文明を世界の役に立てるべきか悩むところに、「ブラックパンサー」としての責務もあってと大変なのに、「シビル・ウォー」での国連テロで父親=前王を急に亡くしてしまったが故に、心の準備のないままに国王とヒーローという2つの重責を担うことになったティ・チャラがいい感じ。

凄い自信もないが、真っ直ぐな正義の心も持ち、かと言って青臭いことを言うガキでも無いというティ・チャラをチャドウィック・ボーズマンが好演。

母親や妹に加え、元カノ、警護隊の隊長と周りを固めるのが女だらけで、何かにつけて突っ込まれるのもご愛敬だった。

アメリカ版ポスターってヒーローの姿さえないのね(笑)


対する元アメリカ秘密工作員エリック・キルモンガーがティ・チャラに対抗してワカンダの王位継承に名乗りをあげるのだが、これが「極悪な国家乗っ取り」というより「そりゃ気持ちはわかるよ」という設定になってるのが憎いところ。

「見捨てられた前国王の弟の息子」(つまりはティ・チャラの従兄弟ということだな)という悲しみも背負いながらも、ワカンダの鎖国的一国平和主義に疑問を投げかけるドラマもまたいいものだった。

演ずるマイケル・B・ジョーダンが、あんまり「悪のオーラ」を纏っていないのと、途中で「あ、こりゃ同じ監督のクリードの主役の人じゃんか!」と気づいたせいか、なんか「こいつをぶちのめせ!とならず(笑)、自らのアイデンティティを求めるクリードの姿と重なってしまったのも確か。だってあんなに人をぶち殺しているのに澄んだ目してるんだもんなあ()


出てきた瞬間にわかったフォレスト・ウィテカー以外は、もう何度もスクリーンで観ていたのに、あの女隊長オコエは「ウォーキング・デッド」のミショーンじゃないか!と、やっと気づいたり、途中まで物語上の「倒すべき狂った悪」部分を背負っていた武器商人ユリシーズ・クロウを絶対どこかで観ている!と思っていたらアンディ・サーキースだったりと、最近観たい映画は情報シャットダウンしていることに加えて、俳優たちの顔を記憶しているレベルが下がってきたなあと自覚した一本でもありましたな()


そんなわけで、こいつを倒さないと世界がえらいことになる!っていう、アベンジャーズの「インフィニティ・ウォー」&「エンド・ゲーム」での次元も時間も飛び越える宇宙規模のサノス戦を観た後では、物語的には良いサイズではあるのは間違い無いのだが、どうしても酷い悪役不在の「内輪揉め」に見えてしまうのが、ヒーロー映画としては唯一にして最大の弱点。


とは言え、この戦いが主人公の葛藤と成長を促したのは確かで、MCUを離れた一つの映画としてみれば、ワカンダの掟破り的超文明とスピリチュアルな描写の整合性にちょっと無理は感じたものの、人間ドラマとしても観れる作品だったと思うのだ。


まあそれでもスターウォーズやMCUの類は一切興味ないという方たちにはお勧めしないけど、試しに観てみようなら最適ではないかと、遠慮がちに思ったのでありました()



イベント開催未定のまま今日は休み。雪の中、すっかり忘れていたホワイトデーのお返しを購入、かみさんと娘たちに送る手続きを済ませ、あとは身体を休めた一日。

おお、そう言えば先月は恒例マカロニレビューをアップしてなんだ。

ってことで、こちらに来たばかりの頃に観て、レビューできていなかったこいつをお蔵出し!(笑)

野獣暁に死す (1968年)

OGGI A ME, DOMANI A TE!

TODAY IT'S ME [米]

TODAY IT'S ME......TOMORROW IT'S YOU


監督・脚本トニーノ・チェルヴィ 脚本 : ダリオ・アルジェント 撮影 : セルジオ・ドフィッツィ 音楽 : アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ

出演 : モンゴメリー・フォード、仲代達矢、バッド・スペンサー、ウィリアム・バーガー、ウェイド・プレストン、ダイアナ・マルティン


自分の中の「声に出して読みたいカッコいい題名ベストテン」に必ず入る素晴らしい邦題だが、実は作品自体はあのダリオ・アルジェントが脚本ながら、今ひとつピリッとしないという難儀な一本()


5年ぶりに刑務所から出所したビル・カイオワ(モンゴメリー・フォード)。彼は先住民の妻を目の前で凌辱された挙句に殺され、その殺人の濡れ衣を着せられて投獄させられていたのだ。

出所時に「もう穏やかに暮らせ」と諭す刑務所長に「いや、あるのは憎悪のみだ」と一言を返すビル。


彼が復讐を誓う、真犯人である強盗団の首領エル・フェゴー。この悪党を演じたのが、なんと仲代達矢なのだ。

軍の幌馬車を襲って金をせしめるフェゴー仲代(笑)。

日本人とメキシコの混血児という設定はちと強引ながら、ご覧の通りなかなかの悪役ぶり。

ぎろりとした目は印象的だし、何よりイタリア人悪役たちに囲まれていても全く違和感がないんだよな()。それを見るだけでも価値ある一本と言えよう()


監督のトニーノ・チェルヴィが黒澤明作品の仲代達矢に惚れ込み、出演を要請したそうな。

仲代がロケ地の空港に着いた時、出迎えに来た現地スタッフが彼を見て「なんだ、チョンマゲは日本に置いてきたのか」と残念がったというのはその筋では有名な話だったりする()


そもそもマカロニ・ウエスタンは黒澤明の『用心棒』をパクった(笑)セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』のヒットをきっかけにブームになり、良くも悪くも「当たるためなら何でもあり」のサービス精神旺盛なジャンルなんで、本家「用心棒」で印象的な悪役卯吉を演じた仲代達矢にオファーが来ても不思議はないものの、よくぞまあ仲代も出演を受けたものだとも思う。

マチェーテみたいだが、「刀使い」ってのもいいよね(笑)。


ちなみに主役を演ずるモンゴメリー・クリフトは他のマカロニではあまり見かけたことがないが、彼はブレット・ハルゼイという名前のハリウッド俳優で、一本限りのつもりでイタリア映画に出演したが、この後十年以上イタリアを拠点にしていたそうで、調べるとマリオ・バーバのウエスタンの他、90年代までルチオ・フルチのホラー映画にも出ている。

そう、タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のデカプリオ演ずるリックのような、当時イーストウッドに続けとイタリアに渡った何人ものB級スターの一人だったのだ。

それでもマスクはなかなかにカッコいい。出で立ちも「続・荒野の用心棒」のフランコ・ネロすなわちジャンゴ のような黒のインバネスコートが似合っていて大変よろしい()

ビル自身もなかなかに腕は立つのだが、フェゴーの強盗団に対抗すべく仲間を集める。ここのところが仲代が出演していない「七人の侍」風で好み。こうした異能集団の仲間集めのくだりが大好物なので、つい点数が甘くなってしまう()

まず、怪力巨漢のオバニオン。演ずるはいつもの気の良いデブ()、バッド・スペンサー。
テレンス・ヒルとの「風来坊」や「笑う大捜査線」をはじめとするコンビ作でおなじみだが、ジェームズ・コバーンの「ダーティーセブン」と同様、頼りになる主人公の片腕を演じている。

次に保安官に収まっていたジェフ・ミルトン(ウェイド・プレストン)に交渉。
彼はご覧のようにマックィーンの「拳銃無宿」での通称「ランドル銃」、つまり銃身を切り詰め、近接戦での使い勝手がいいようにカスタムされたメアズ・レイグの使い手。これをホルスターに納めてるのが何気にカッコいいのだ。

実はアメリカ映画ではプロップとは言え銃の改造が厳しいらしく、映画の中での発砲はあまりなかったようなのだが、イタリア映画では規制がゆるかったらしく、マカロニウエスタンでは頻繁に撃ちまくられてますな。因みに演ずるウェイド・プレストンもアメリカ人。
その他、女好きの二丁拳銃使いバニー・フォックス(フランコ・ボレーリ)
ギャンブラーでナイフも得意なモレノ(ウィリアム・バーガー)など腕ききのガンマンを金で雇っていくのが異例(笑)。
最後の2人はいつ裏切るかとか思う顔つきだし、特に最後に仲間になるのがウィリアム・バーガーで、仲間になるまでの尺も一番とっているんで、これはさては…とちょっと心配になってしまったよ(笑)。

フェゴーを追いつつ、一度は捕らえ痛めつけられてしまうカイオワとオバニオン。絶体絶命の場面でもしっかり仲間が助けに来てくれ(笑)、迎えるクライマックス。


風吹き荒ぶ荒野や寂れたゴーストダウンでもない晩秋の森での対決っていうのはこれまた異例。

フェゴー仲代、銃も使えば刀も使う(笑)


これに撃たれても斬られても死なないオバニオンはちょっと笑ってしまうが、斬った瞬間のこの残心はやはり日本人なんだよねえ(笑)

そしてこの後の主人公との対決で、最後はしっかりと悪役の末路を辿るのである。


こうして書くと見どころ多そうなのだが、書いたように出来は今ひとつ(笑)。

無茶苦茶、面白いかといわれればさほどというのが正直なところなのだ。

こういう並びの画が大好きなんだけどねえ。特に残念なのがせっかく集めたこの4人の仲間。惜しいかな、彼らの個性(得意技)の描写が今ひとつなんだよなあ。また、主人公が腕ききの彼らの存在を昔の仲間から聞きつけて集めに行くのだが、その技量を確かめるでもなく、さっさと金で雇っていくあたりがちょっとあっさりしているところと、彼ら同士の会話等で互いの腕を認め、信頼感が増していく様の描写が乏しいのが残念なのだ。まあ名前の売れている凄腕を集めたって設定なんで省略しちゃったんだろうが、ここが俺のマカロニ採点ポイントを稼げない大きな点なのだ(笑)。


あと音楽ね。「復讐」がテーマなのに緊迫感が無いのよ。音楽そのものは決して悪くはないのだが、マカロニっぽさがなくてアメリカ西部劇的なちょっと呑気なテーマスコアが今ひとつなのだ。とにかく「哀愁のメロディ」のカッコよさがないのは、俺のマカロニ採点の中では大きなマイナス点なのだ。


監督は別名アントニオ・チェルヴィ。あのベルトリッチの「殺し」やミケランジェロ・アントニオーニの「赤い砂漠」などを手掛けたプロデューサーだったそうだ。そんな彼がなんでまたマカロニウエスタン の監督したのかな。まあ、柳の下のドジョウを狙って一儲けしたかったのは明白なれど(笑)、黒沢リスペクトで仲代をオファーするあたりはなかなか冴えてるけど、アクション演出としては、ちょっとモタモタしているのが残念だ。


そんなわけで仲代達矢の悪役出演に、ジャンゴ風出で立ち(そう言えば妻の名前も「マリア」だったな)のカッコいい主人公はともかく、「殺された妻の復讐」&「昔の仲間に裏切られて無実の罪で投獄」や「仲間集めで強盗団に対抗」なんていう、どこかで見た(でも充分面白くなりそうな)プロットを集めたわりに、今ひとつ燃えないのが残念な一本なのである(ってこれは脚本のダリオ・アルジェントのせいなのか?(笑)

日本版ポスターでも大きく扱われているのは当然仲代。観る前はてっきり主役と思っていた。

「無法!仲代が5人の殺し屋(プロフェッショナル)に射ちこむ極悪のガン」という惹句も、正しいことは正しいが紛らわしいな(笑)。

ちなみに仲代は本来主役のカイオワ役が予定されていたが、スケジュールの関係で悪役をこなすことになったらしい。


ああ、日本人が出るマカロニと言えば先日NHK BSでやっていた丹波哲郎が出ている「五人の軍隊」を録画依頼し損なったのは失敗だったなあ。

確かあれもダリオ・アルジェントが脚本を書いていたな。これもまた観てみたいものである。

ではイタリア版予告編をどーぞ。




昨夜は酔って帰宅で書きそびれてしまった。

昨日。この地で迎えた5回目の3.11。
その時間は打ち合わせで県庁にいた。
アナウンスが入り、打ち合わせを中断した。
職員と共に我々も起立して黙祷。

遠くで鼻をすする音だけが聞こえた。
あんなに静かな県庁は初めてだった。

「その時」は静岡にいた言わばよそ者の俺。
2014年にこちらに来て5年半暮らし、徐々に進む復興の様子を、
言い換えれば、まだまだ進まぬ本当の生活が戻らぬ様の一端を
すぐそばで見れたことは貴重な経験だった。

受けた仕事などを通じてだが、ほんの少しとは言え、ここで生活をしている方が「次」を見据えるお手伝いができたことは本当に良かったと思う。

小さな一歩を踏み出すことを笑顔で話してくれた方。この地の未来を自分たちで拓きたいと語る若者。ここまでくるのはさぞかし大変だったろうに、元気いっぱいにこれからのビジョンを語ってくれた方…。そんな逞しい方々の姿を見れたことは幸せだった。

逆に様々な不満や矛盾、この国の政治への生の声もいくつも聞いた。
静かに怒りを湛える人。悲しみを抑える人。諦めに近い感情を持つ人…。
その全てをわかったつもりはないが、この地で生活し続けるあの人たちの気持ちもまた良くわかる。

5年半、大変なこともあったし、今だってコロナウイルスの影響で実施するかどうかまだわからない仕事を抱えて、あと2週間しかないイベント準備と、その直後の俺の仕事終了の狭間で頭が痛いのも事実だ(苦笑)。

事務局を兼ねた事務所に、そのイベントを告知するチラシを観た、今は避難した埼玉に住むお年寄りから電話が入った。(避難地域の市町村は県外避難している方にもこうしたお知らせを郵送しているのだ)。

イベントへの問い合わせかと思って応対したが、その地でイベントが行われることが嬉しくて思わず電話してしまったとのこと。
あそこにこんな店があってとか、あそこの学校に通っていたのよ、とか思い出話を延々とされてしまった。
こなさなきゃならない仕事があったから早々に切りたかったのだが、そんな電話、切れないわな😅。

向こうもわかっているのか「ごめんなさいね、何だか懐かしくなっちゃって」と、言い訳しつつも止まらない(笑)。
ようやく電話が終わると同僚から「ジャンゴ さん、丁寧だなあ」だなんて言われてしまったけど、コロナで中止になるかもしれないこのイベントだが、そうしたことがあの地で開催されるというだけで嬉しい方もいるのだなあと、改めて思った次第。

3.11以降のこの地で、もっと大変な苦難にあい、それまでの生活を奪われたこの地の方々と、一緒に仕事できたこと、それを喜ぶ人々がいる仕事ができたことは得難い財産だったと思う。
これは譲れない正直な気持ちだ。


何も仕事終いの整理もできてない我がデスク。
引越し準備も何もしていない普段通りのとっ散らかった我が部屋。

ちょっと焦りはあるけどまずは目の前の仕事をしっかり終わらせなくてはな(笑)。

あと少し。本当にあと少しだ。
うむ、本当に終わるんだなあ…。






天気の悪い日曜。今日は部屋でお篭り。「ミッド・サマー」を観たいのだが、まだ福島ではやっておらず、先週観たこれをレビューしておきます。

ヘレディタリー/継承 2018年)

HEREDITARY


監督・脚本 : アリ・アスター 製作 : ケヴィン・フレイクス、ラース・クヌードセン、バディ・パトリック 製作総指揮 : ライアン・クレストン、ジョナサン・ガードナー、トニ・コレット、ガブリエル・バーン 撮影 : パヴェウ・ポゴジェルスキ プロダクションデザイン : グレイス・ユン 編集 : ジェニファー・レイム、ルシアン・ジョンストン 音楽 : コリン・ステットソン

出演 : トニ・コレット、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウド、ガブリエル・バーン


評判の良さを聞いていたが、これ、怖かったぞ。懐かしい手触りもあるがまさに「今の時代」の純然たるオカルホラー。


※以下相変わらずネタバレ多いのですみません!


グラハム家の祖母エレンが亡くなり、娘のアニーは夫のスティーブと共に葬儀を終える。2人には高校生の息子ピーターと13歳の娘チャーリーがいる。アニーにとってはエレンは決して「愛する母」ではなかったが、おばあちゃん子であったチャーリーは次第に異常な行動をとり始める。

まずこのやたら老けて見える、異相とも言えるチャーリー役の子供の顔が怖いのだ。祖母の死後、死んだ鳥の首をハサミで切断するなど、異常な行動が増し「コッ」と口の中で響く変な舌打ち?と笑わぬ表情で、こちらにいやーな感じを振りまいてくれる。
「生まれた時から泣かなかった」という彼女がてっきり怪しい祖母から何かを「継承」してと思っていたら中盤以降思わぬ展開になっていくのだ。


祖母エレンの死でただでさえ喪失感のある家族。やがて誰かの話し声がしたり、暗闇に何者かの気配がするなど、不穏なことがひたひたと近づいてくる静かな語り口がいい。


チャーリーは、不気味な表情で虚空を見つめ、前述の通り次第に異常な行動を取り始める。この自閉気味な様子が重くのしかかって家庭内がますます暗くなっていたある日、ピーターが友人たちのパーティに行くことになり、アニーはチャーリーも連れていくことを条件にこれを許可する。会場でアレルギー発作を起こしたチャーリーを急いで帰宅させようと運転するピーターだったが、思わぬ事故でチャーリーを死なせてしまう。


てっきり最後まで出てくると思っていたチャーリーの、この不幸な、そしてあまりに無残な死から、どんどん家族の「軋み」が「歪み」になっていくのが本当に息苦しいのだ。


家族の軋みをなんとか元に戻そうとする父親スティーブも、仕事でドールハウスを作っているアニーがチャーリーの事故現場をミニチュアで再現したりで様子が心配になっていく。(このドールハウスと実際の家が重なるトリッキーなショットも効果的)


チャーリーを死なせたことで不安定になるピーター。母親アニーはセラピー集会で会ったジェーンからチャーリーの霊を呼ぶ降霊術を得て試す。チャーリーの死を悼むのはよくわかるのだが、ピーターは怯えてしまう。

寒々しい食卓でチャーリーの死をピーターに負わせるかのような言動をするあたりからアニーは加速をつけておかしくなっていく。

アニーは以前に夢遊病でピーターとチャーリーを殺そうとした過去があったこともあり、アニーを信じたいピーターの願いも虚しく関係性がついに壊れ始める。


やがて親切に降霊術を教えたジェーンが実はアニーの母親であるエレンと旧知の仲であり、同じ企み=「悪魔ペイモンの復活」のために動いていたことがわかる。自殺をしていたアニーの父親と兄も実はこれが原因だったのだ。

このエレンの忌まわしい目的にアニーが気づいた時には、その目的の継承の片棒を受け継いでしまっている怖さ。


前半あれだけ不気味だったチャーリーはペイモン復活の依代として利用しただけ。完全復活には男の肉体が必要で、実はピーターの肉体を狙っていたことがわかるころには、もう悪魔の企みはほぼ完遂しているやりきれなさ。

Jホラーの一連のブームの時に何かで「怪物やその他が襲ってくるより、人が人としてあり得ない動きをしたり、存在していてはおかしい場所にいるのが怖い」という意味のことを読んだ記憶がある。

終盤ピーターを狙うものが、人に非る動きをするショットがあって思わずうわわとなってしまったのだが、それがアニーと分かって追い討ちかけてビビってしまった。

悪魔の僕と化した醜い裸の男女が何をするでもなくニヤつきながらそこここに存在する不気味さもかなりのモノだった。


一瞬で夜が朝になるカット。暗闇に低く響く不協和音のような音楽。何かの気配。屋根裏に横たわるもの。窓にぶつかる鳥。大量の虫。どこかで観たようなショットもあったが、余計なコケ脅し演出がほとんど無い分、これらもじわりじわりと息苦しさを積み重ねていく効果となり、静かな演出が、何の救いもないラストまで本当に効いていた。

アニー役のトニ・コレットの怪演とも言える神経症ギリギリの演技が凄かったが、この人「リトル・ミス・サンシャイン」のお母さんだったのね。あちらでもかなり苦労されてたけど、今回の比じゃないな。


演出や演技もさることながら、この映画の何が怖いって、本当なら安住の場である「家族の存在」がどんどん得体の知れないものになっていくことに尽きる。

ガブリエル・バーンの何もできないまま亡くなる父親の哀しい顔、様々な怪異に半泣きになるピーター役のアレックス・ウォルフの怯え。チャーリー役のミリー・シャピロも含め、ほんと救いのないこの家族、一度も笑顔で笑い合うシーンがなかったんじゃないか。


家族の誰かの死が家族内に原因があるだけで重苦しいのに、その原因の「悪意ある企み」がさらに家族の誰かのものだっただなんて。

加えて自分の意思に関係なく「何者かに」されてしまう恐ろしさ。


この構造がわかった時点で「悪魔そのもの」は出てこないのに、ほんと改めて恐ろしい話だよなぁと感心してしまった次第。「エクソシスト」を再見した時もそうだったが、家族を持つとこの手のホラーはさらなる怖さを持って迫ってくる。

この年になると葬式に出ることも増えていくが、

思えば冒頭の葬式に始まり最初から最後まで「死」が常にすぐそばにある映画だったのだなあ。


「エクソシスト」とか「ローズマリーの赤ちゃん」などの、なんとなく70年代の観た後にやりきれな無さの残る「オカルト映画」の手触りがあって無茶苦茶好みだったのは確か。

アメリカ版のこの不穏なポスターもなかなか。
でも、下のフランス版?が怖いわ〜
脚本・監督のアリ・アスター、これが長編デビューとはねえ。「ミッドサマー」絶対見なくては!と決意を新たにするのでありました。

ああ、とうとう福島でもコロナ陽性が出ちゃったな。今日は昼過ぎまで惰眠を貪り、怠惰な一日を過ごしたが先週観たすこぶる面白かったこれを記しておこう。

パラサイト 半地下の家族 2019年)

PARASITE


監督・脚本 : ポン・ジュノ 脚本 : ハン・チンウォン 撮影 : ホン・ギョンピョ プロダクションデザイン : イ・ハジュン 編集 : ヤン・チンモ 音楽 : チョン・ジェイル

出演 : ソン・ガンホ、チャン・ヘジン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、チョン・ジソ、チョン・ヒョンジュン、パク・ソジュン


ひゃあ、滅法面白かったなあ。コメディかと思えばサスペンスに転がり、さらに最後はと転がり続けるストーリーはもう最高!

失業中の父親キム・ギテクとその妻チュンスク、そして大学受験に失敗続きの息子ギウと美大を目指す娘のギジョンの4人が暮らしているのは半地下の薄暗い貧乏アパート。

ソ・ガンホがいつもの不景気顔で、ちょっとしたアルバイトでも手抜きをする様が、グエムルのしょーもない親父を思い出す安定のダメさ加減でまず安心する()。家長なのに一番ダメって感じが本当によく似合うのだ。おまけに子供たちも階上の家のWi-Fiに相乗りしたりと、もう「逞しい負け犬一家」の様がまず笑える。

一家で内職をして糊口を凌いでいる彼らだが、ギウの友人のエリート大学生から彼が留学中の間、代役として家庭教師をしないかと、仕事話が舞い込む。さっそくギウは経歴を偽って大学生に扮し、IT企業の社長パク・ドンイクとその美しい妻ヨンギョ、高校生の娘ダヘとその弟のダソンの4人家族が暮らす高台の大豪邸へと向かう。


いつバレるかとこちらがヒヤヒヤしていると、何度も受験を失敗しているが故に実践的な指導ができるギウはすぐに家族の信頼を得る()。今度は言葉巧みに妹のギジョンを美術の家庭教師として家族に紹介。このギジョンが、ギウの大学生としての文書を偽造するなど凄い技術持ち()

このギジョンを演じるパク・ソダムの「ザ韓国アクトレス」という、顔をいじっていない佇まいが非常に良い()。タバコが似合うんだまた。ある意味素直そうな兄のギウよりさらにしたたかで最初は姉役かと思ったよ。


パク一家に信頼を得たこの2人がさらに親2人をパク家に招き入れることに成功するまでは本当に可笑しい。いったいこれどうなるの?と思っていると


と、これ以上はネタバレで書けないから辛いなあ。とにかく格差社会なんて言葉は今やすっかり浸透してしまったが、大学受験が人生の勝ち負けを決するなんて聞いていた韓国で、下層階級の人が這い上がるのは本当に大変なんだろうなあというのがよくわかる。


この極貧ながら一致団結しているのキム一家と、裕福だが家族が理解し合えているかというと「?」がつくパク一家。

このポスターデザインもいいよね。


高台の豪邸と立ち小便する人さえ見上げなければいけない半地下。

疑うことを知らない金持ちとしたたかな貧乏人。

色んな対比がいちいち効いている。


パク一家がステレオタイプの「金持ちで鼻持ちならない」という嫌味がないのがさらに良いのだ。

奥様ヨンギョ役のチョ・ヨジンは美人だし(個人的に無茶苦茶好みでした()

娘のダヘも可愛いく、ギウに恋心も抱く。パクもヨンギョもキム一家たちに全幅の信頼を寄せるが故に、彼らもまたパク一家を羨むことはあっても憎むことは無い。

観る前は貧乏な一家が金持ち一家を手玉に取り侵食して、寄生どころか乗っ取ってしまうのかと思っていたのだがそうはならない。キム一家もしたたかながらそこまでワルではないのだ。


ああ、それなのに


上手く住み分けができていたのだけど、パクが唯一求めていた「一線」を、キム一家がどんなに隠しても「届いて」しまう。

キム一家もパク一家も適度に善良で、でも無自覚に卑怯で、ある意味とても正直な人々なのだ。

ダソンが気付くそれがラストへの引き金になるとは。


計画を立てると無駄になると言う父親キムとは逆に将来への計画を立てるギウ。

もしかしたらダヘと将来結ばれ、本当にこの家に住むことになるのではと家族に語る中盤が笑えるのだが、これもラストに別の意味で繋がる。


上と下。半地下のさらに下。

這い上がる者と這い上がることさえ諦めた者。

高台の豪邸ではスプリンクラー付きの庭。

降り頻る雨の流れ落ちる水がどんどん下に。

どこまで下がるのかというくらい低い低い彼らの住処。

上下の構図と「水」のイメージが最初から最後までついて回るのが印象深かった。


ギウの友人が持ってきた「水石」。パクを迎える自動照明。カブスカウトのモールス信号。

ダソンの描いた「自画像(あるいはチンパンジー)の絵。

どれもこれも意味があったのがわかる構成が本当に心憎い。


とにかく観ている間は「物語」に浸り、翻弄され、観終わった後に色々なものが繋がる快感。文句なしに面白かったなあ。


まずはヒットもめでたいが、これがアカデミー賞を獲るとはねえ。

面白さや内包するテーマを含め、何一つ文句はないけど、個人的にはオスカーは「ジョジョ・ラビット」にあげたかったな。何だか「羊たちの沈黙」がアカデミー賞を受賞した時のような気分だってことだけは正直に書いておこう()


でもエンタメ性も持ちながらズッシリとしたテーマもあり、本当に面白かったのは確か。

また観たいと思うくらいの日本映画ってあまり出会えない中、ここまで海外でも受ける映画が撮れてる韓国映画界、これは素直に凄いなあと思うのだ。

ネタバレせずに書くのほんと苦労する一編だったな(笑)。まずはご覧あれ。絶対損しないのは請け合います。



今週もなかなかにハード。
コロナウイルスの影響で室内セレモニーは中止になったが、屋外イベントは開催するやらしないやらのダブルの準備をする羽目に。
それに加え、今月末終了のその他のいくつかの仕事のクロージング準備でヒーヒー言っていたのに、週の頭には疲れが溜まってついに体調崩してダウン、半日休むことにもなって、また仕事が溜まり心身ともに疲れ果ててしまった。
よって先週末観た映画レビューも書けなんだ、と言い訳(笑)。

ああ、本当に今月末で今の職場の仕事、無事に終われるのだろうか。真面目に心配になってきたぞ😅

いやしかしこのコロナ騒動なんとかして欲しい。
亡くなった方もいるのだから本当に気をつけなければいけないけど、これだけあちこちで発症確認が出たらもうわけわかんないや。
ライブハウスや様々な店舗も、大変だろうが、イベント仕事が次々と中止になって、現場を受け持つイベント会社の皆さんも死活問題。本当に大変そうだ。
学校に配布予定だった告知チラシは早くも休校になって配れなくなったりで、こちらの仕事も困ったもんだが毎日増えている。
東京の会社の方に連絡するとテレワークで会社にいなくて連絡取りづらかったりするし。まあ仕方ないといえば仕方ないのだが。

マスク転売がやっと罰則になったが、そんな火事場泥棒的な奴らはもう即射殺でいいよ。
あと、デマに踊らされ買い占めする奴らとか。
そんな中、ウイルス陽性と分かっていて飲食店に行ったバカにはほんと腹が立つ。

もう少し落ち着いて、しっかり判断していかないと、さらに酷いことになるだろうなあ。

映画も公開延期とか影響で始めているが、映画館に行けなくなるのだけは個人的には勘弁して欲しいが時間の問題のような気もする。できれば来週には収束に向かって欲しいのだが。

この土日はなんとか休み。
先週観たかった映画は観れたし、もうひとつ観たい映画はこちらではまだ公開していないので、この土日は身体を休めて、ゆっくり自宅ロードショーとしますかね。
とりあえず明日は寝坊できるのが幸せなのであります。