パラサイト 半地下の住人 | B級パラダイス

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ああ、とうとう福島でもコロナ陽性が出ちゃったな。今日は昼過ぎまで惰眠を貪り、怠惰な一日を過ごしたが先週観たすこぶる面白かったこれを記しておこう。

パラサイト 半地下の家族 2019年)

PARASITE


監督・脚本 : ポン・ジュノ 脚本 : ハン・チンウォン 撮影 : ホン・ギョンピョ プロダクションデザイン : イ・ハジュン 編集 : ヤン・チンモ 音楽 : チョン・ジェイル

出演 : ソン・ガンホ、チャン・ヘジン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、チョン・ジソ、チョン・ヒョンジュン、パク・ソジュン


ひゃあ、滅法面白かったなあ。コメディかと思えばサスペンスに転がり、さらに最後はと転がり続けるストーリーはもう最高!

失業中の父親キム・ギテクとその妻チュンスク、そして大学受験に失敗続きの息子ギウと美大を目指す娘のギジョンの4人が暮らしているのは半地下の薄暗い貧乏アパート。

ソ・ガンホがいつもの不景気顔で、ちょっとしたアルバイトでも手抜きをする様が、グエムルのしょーもない親父を思い出す安定のダメさ加減でまず安心する()。家長なのに一番ダメって感じが本当によく似合うのだ。おまけに子供たちも階上の家のWi-Fiに相乗りしたりと、もう「逞しい負け犬一家」の様がまず笑える。

一家で内職をして糊口を凌いでいる彼らだが、ギウの友人のエリート大学生から彼が留学中の間、代役として家庭教師をしないかと、仕事話が舞い込む。さっそくギウは経歴を偽って大学生に扮し、IT企業の社長パク・ドンイクとその美しい妻ヨンギョ、高校生の娘ダヘとその弟のダソンの4人家族が暮らす高台の大豪邸へと向かう。


いつバレるかとこちらがヒヤヒヤしていると、何度も受験を失敗しているが故に実践的な指導ができるギウはすぐに家族の信頼を得る()。今度は言葉巧みに妹のギジョンを美術の家庭教師として家族に紹介。このギジョンが、ギウの大学生としての文書を偽造するなど凄い技術持ち()

このギジョンを演じるパク・ソダムの「ザ韓国アクトレス」という、顔をいじっていない佇まいが非常に良い()。タバコが似合うんだまた。ある意味素直そうな兄のギウよりさらにしたたかで最初は姉役かと思ったよ。


パク一家に信頼を得たこの2人がさらに親2人をパク家に招き入れることに成功するまでは本当に可笑しい。いったいこれどうなるの?と思っていると


と、これ以上はネタバレで書けないから辛いなあ。とにかく格差社会なんて言葉は今やすっかり浸透してしまったが、大学受験が人生の勝ち負けを決するなんて聞いていた韓国で、下層階級の人が這い上がるのは本当に大変なんだろうなあというのがよくわかる。


この極貧ながら一致団結しているのキム一家と、裕福だが家族が理解し合えているかというと「?」がつくパク一家。

このポスターデザインもいいよね。


高台の豪邸と立ち小便する人さえ見上げなければいけない半地下。

疑うことを知らない金持ちとしたたかな貧乏人。

色んな対比がいちいち効いている。


パク一家がステレオタイプの「金持ちで鼻持ちならない」という嫌味がないのがさらに良いのだ。

奥様ヨンギョ役のチョ・ヨジンは美人だし(個人的に無茶苦茶好みでした()

娘のダヘも可愛いく、ギウに恋心も抱く。パクもヨンギョもキム一家たちに全幅の信頼を寄せるが故に、彼らもまたパク一家を羨むことはあっても憎むことは無い。

観る前は貧乏な一家が金持ち一家を手玉に取り侵食して、寄生どころか乗っ取ってしまうのかと思っていたのだがそうはならない。キム一家もしたたかながらそこまでワルではないのだ。


ああ、それなのに


上手く住み分けができていたのだけど、パクが唯一求めていた「一線」を、キム一家がどんなに隠しても「届いて」しまう。

キム一家もパク一家も適度に善良で、でも無自覚に卑怯で、ある意味とても正直な人々なのだ。

ダソンが気付くそれがラストへの引き金になるとは。


計画を立てると無駄になると言う父親キムとは逆に将来への計画を立てるギウ。

もしかしたらダヘと将来結ばれ、本当にこの家に住むことになるのではと家族に語る中盤が笑えるのだが、これもラストに別の意味で繋がる。


上と下。半地下のさらに下。

這い上がる者と這い上がることさえ諦めた者。

高台の豪邸ではスプリンクラー付きの庭。

降り頻る雨の流れ落ちる水がどんどん下に。

どこまで下がるのかというくらい低い低い彼らの住処。

上下の構図と「水」のイメージが最初から最後までついて回るのが印象深かった。


ギウの友人が持ってきた「水石」。パクを迎える自動照明。カブスカウトのモールス信号。

ダソンの描いた「自画像(あるいはチンパンジー)の絵。

どれもこれも意味があったのがわかる構成が本当に心憎い。


とにかく観ている間は「物語」に浸り、翻弄され、観終わった後に色々なものが繋がる快感。文句なしに面白かったなあ。


まずはヒットもめでたいが、これがアカデミー賞を獲るとはねえ。

面白さや内包するテーマを含め、何一つ文句はないけど、個人的にはオスカーは「ジョジョ・ラビット」にあげたかったな。何だか「羊たちの沈黙」がアカデミー賞を受賞した時のような気分だってことだけは正直に書いておこう()


でもエンタメ性も持ちながらズッシリとしたテーマもあり、本当に面白かったのは確か。

また観たいと思うくらいの日本映画ってあまり出会えない中、ここまで海外でも受ける映画が撮れてる韓国映画界、これは素直に凄いなあと思うのだ。

ネタバレせずに書くのほんと苦労する一編だったな(笑)。まずはご覧あれ。絶対損しないのは請け合います。