追想(1975年)LE VEUX FUSIL
製作・監督・原案 : ロベール・アンリコ 脚本 : パスカル・ジャルダン、クロード・ベイルー 音楽 : フランソワ・ド・ルーベ
出演 : フィリップ・ノワレ、ロミー・シュナイダー、ジャン・バイス、マドレーヌ・オゼリー
フィリップ・ノワレ、亡くなっちゃいましたね
「ニュー・シネマ・パラダイス」の素晴らしさは言わずもがなだけど
あの映画は俺にとってはフィリップ・ノワレとの「再会」みたいなものでもありました。
「ヘルハウス」の後、エクソシストの入ってる映画サントラコンピLPレコードを買い、
そこに収録されてた映画(エアポート’75とか大地震とか燃えよドラゴンとか(笑))を中心に
チェックしだした俺は中学生になり、やがて「ロードショー」を買い出し、
田舎にあった洋画専門の映画館に通いつめ、番組が変わるたびに毎回見る映画大好き少年になっていました。
リバイバルしてた「七人の侍」や「荒野の七人」も見て「タワーリング・インフェルノ」や「ジョーズ」に興奮し「狼たちの午後」や
いつか書きたい「小さな恋のメロディ」なんかにも夢中になったりして(笑)
今だったら決して観ないようなのも(「ベンジー」とか(笑))なんでも観てました。
何の先入観も無く。
「追想」はそんな時期に見た映画。
B級なんて言うのも憚れる、ロベール・アンリコの傑作です。
でも実は併映の「カッコーの巣の上で」を目的に行ったはず。
こちらも重い主題。中学生が打ちのめされるのは簡単な2本立てでしたな。
どちらも良かったけど、中学生の俺は「追想」により魅かれて帰ってきて
日記にしてたノートにストーリーを想いを書きなぐった記憶があります。
1944年ドイツ占領下フランスの小都市。
医者ジュリアンは、美しい妻クララと娘フロランスと母を自分の城のある村へ疎開させる。
しかし数日後、妻子に会いたくなりその村へ行くと、村には人の姿がない。
教会に入ると村人全員が射殺されていた。
不安を覚え急いで城に向かうが、そこにはドイツ軍の姿が。
そして彼は城の中庭で最愛の妻と娘の無残な死体を見つける。
ジュリアンは隠してあった一挺の「古い猟銃」(原題)をとり出し、復讐を開始する。
知りつくした城の秘密通路を利用し、城にドイツ兵を閉じ込め、一人また一人と仕留めていく。
途中パルチザンが来てもドイツ兵のことを話さず、たった一人で、最後の一人までその手で葬るために・・・。
オープニングとラストに自転車を漕ぐジュリアン一家3人の姿があります。
ポスター(左側)のビジュアルにも使われていた、美しく牧歌的なシーン。
最初は一家の幸せそのものの描写として限りなく美しく・・・
同じシーンがラストは邦題通り、もはや還って来ない「追想」として切なく心に残る構成の妙。
その後1度テレビで見たきりだが強烈に俺の心に残っている映画のひとつです。
手元に当時のパンフレットがあります
穏やかというより、鈍重で野暮ったいおっさんが凄まじい復讐鬼になるこの物語、
初めて観た中学生のときから反戦映画には見えていなかったけど
今、自分が同じおっさんになり、家族を持ってみると、それを無残に奪われたジュリアンの哀しみとその執念が狂おしいほど更に良くわかる気がします。
監督のロベール・アンリコも当時同じく44歳。(ふぅ・・・俺、何やってんだろうな・・・(苦笑))
「冒険者たち」ともども自分のなかのフェイバリットであります。
どうやらビデオは出てたけど、DVDはまだ出ていない模様。
見たこと無い人いたら、是非覚えておいて欲しい1本です。
あまりたくさん彼の映画を見たわけじゃないけど
フィリップ・ノワレは自分の中の「漢」の一人でありました。
彼を「追想」して・・・2日遅れのお悔やみを申し上げます・・・R.I.P.