イングロリアス・バスターズ | B級パラダイス

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自分は、恥ずかしながら「実はまだ見ていなかったんだよ~」っていう映画が多いのだけど、これもその1本。DVDを中古屋で買ってきりだったのを思い出し、寒さで出かけたくない今日、そーっと見たのであります。


イングロリアス・バスターズ(2009)INGLOURIOUS BASTERDS

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ 製作:ローレンス・ベンダー 製作総指揮:エリカ・スタインバーグ、ロイド・フィリップス、ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン 撮影:ロバート・リチャードソン 編集:サリー・メンケ 視覚効果デザイン:ジョン・ダイクストラ特殊効果メイク:グレゴリー・ニコテロ
出演:ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、ミヒャエル・ファスベンダー、イーライ・ロス、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、B・J・ノヴァク、サム・レヴァイン、ジュリー・ドレフュス、マイク・マイヤーズ、ロッド・テイラー、マルティン・ヴトケ ナレーター:サミュエル・L・ジャクソン

いやはや、聴こえてきていた評判通り面白い映画でしたな。
正直言うとイーストウッドの痛快な「戦略大作戦」またはアルドリッチの「特攻大作戦」みたいな曲者揃いの部隊によるミッションクリア映画を勝手に期待していたのだ。しかし、ずーっと顔がひん曲がってた(笑)ブラッド・ピット率いるアメリカ軍のユダヤ人特殊部隊「バスターズ」の面々が徐々に集まるところも無く、各人の個性もあまりつかめないまま、「第2章」でしか彼らの作戦の様子が描かれなかったのは、題名に反していて肩透かしだったかな。それでもエグい描写も含めて、お腹は一杯になるのだけれど(笑)。

映画は、このバスターズの作戦遂行とナチに家族を殺されたユダヤ人の女性ショシャナ(メラニー・ロランが本当に美しい!)の復讐譚が並行して進むのだが、ショシャナの家族が殺される冒頭の「第1章」は緊迫感と画面の美しさ、「英語で話す」ことの伏線回収を含め、グイグイと引っ張られて凄かった。ここで登場するクリストフ・ヴァルツ演ずるランダ大佐がショシャナとバスターズを繋ぐ、作劇上のキーパーソン。彼の「語学堪能」という設定がクライマックスまで効いてて印象深い悪役だった。アカデミー助演賞も納得ですな。

クライマックスのショシャナの復讐とバスターズの作戦が最後に偶然にも交差するのだけど、ショシャナの計画を知らなかったバスターズが、思いもよらぬ事態が勃発したのにリアクションが無いところや、そもそも一家を殺された時に少女だったショシャナが、ほんの4、5年で映画館を経営する「大人の女性」になっていたのもちょっと?だったりと、「あれ?んんん?」と言う場面もあるにはある。加えてアクションも控えめながらも、「タラ印」の「会話」がドラマの面白さをグイグイ引っ張る、大変面白い1本だった。

何より「映画」をキーワードに「映画館」と「映画そのもの」(物理的に)で、ナチに強烈な一撃を食らわせるというモチーフだけで、映画ファンとしては痛快この上ないのだ。
まあ「史実に反してる!」というそもそも論はあるけれども、それこそ「面白ければいいんじゃないの」という我がB級精神そのもので自分は大好き!絶対支持します。

いつものタランティーノの映画通り、様々な映画のサントラを使用していたが、今回もオープニングの「アラモ」の哀愁の旋律から、モリコーネの「続荒野の1ドル銀貨」や「復讐のガンマン」「豹/ジャガー」「アルジェの戦い」などすぐわかるものから、調べたら「エンティティー/霊体」からも引用しているとはなあ(笑)。
中でも先日亡くなったデビット・ボウイドがジョルジュ・モルダーと組んで「キャットピープル」のサントラで使われた「Get People(Putting Out The Fire)」!これがクライマックスで効果的に使われていたのが自分にはツボだった。このサントラバージョンが大好きだったので嬉しかったぞ(笑)。

ある意味タランティーノの映画の中では癖が少ない方かもしれない。「キル・ビル」的な漫画のような描写や、相変わらずの「足フェチ」描写も無理なく入って(笑)、長尺も5章に別れた構成で非常に見やすいものだった。とにかくストーリーが面白いから時間の長さは気にならなかったなあ。ヒットしたのも頷けますな。

してやったりのランダ大佐にしっかりと罪の烙印を押す痛快なラストまで、やっと観た久々のタランティーノ、堪能の出来でありました!