グリーンブック | B級パラダイス

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健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

先月から今週まで週に1回は東京出張している気がするが、今日はさらに西へ。

先日無事卒業式を終えて、今月から社会人となり、新入社員研修の下の娘も戻ってくるというので、代休をとって1ヶ月ぶりの帰省であります。

家に着く前に先月観たこの映画のことだけは新幹線に揺られながら記しておこう。



グリーンブック Green Book(2019)

監督 :ピーター・ファレリー   脚本:ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・カリー、ピーター・ファレリー   音楽:クリス・バワーズ

出演 : ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャ・アリ、リンダ・カーデリーニ


繊細な天才ジャズピアニストである黒人、ドン"ドクター"シャーリーと、シャーリーの運転手兼ボディガードを務めた、ガサツながら人間味あふれるイタリア系のトニー"リップ"ヴァレロンガ。

この2人が、1962年にディープサウスと呼ばれるアメリカ最南部を周ったコンサートツアーを、ロードムービー的に描く「非の打ち所のない」映画の見本のような素敵な一編だった。


人種や生活環境、考え方などあらゆる面で正反対とも言えるドクとトニーが、最初は利害関係のみでスタートしたツアーのいく先々での出来事を通じて、生涯結ばれることになる友情が育まれていくのが微笑ましくて。

トニーが、ドクの素晴らしい演奏に感銘を受け、彼の天才がゆえの繊細さや、黒人への差別を目の当たりにしながら、彼の「孤独」に寄り添う心根。

ドクは、口八丁手八丁で時にはズルもするトニーの行動に最初は不快感を示しながらも、家族を愛し、仕事を全うするそのストレートな生き方に信頼を寄せていく。


正反対の二人組のロードムービーは古くはアル・パチーノとジーン・ハックマンマンの「スケアクロウ」からたくさんあるし、先日観たブルース・ウィルスの「16ブロック」やニック・ノルティとエディ・マーフィの「48時間」、タランティーノの「ジャンゴ 繋がれざる者」など、白人と黒人がバディになる映画も多数あるけれど、両方ってのは珍しい気がする。


トニーの愛する妻に送る手紙を添削代筆するエピソードとそのオチ、フライドチキンを初めて食べるエピソード、ツアー最終日のレストランからパブのエピソード、クリスマスイブに間に合いたいトニーを思ってのドクの行動、などなど、好きなシーンを書き出したら粗筋全部書き出すことになってしまうくらい。


タイトルは、黒人が安全に嫌な思いをしないで中西部を旅するための店やホテルを記したガイド「グリーンブック」からきている。あの当時のアメリカ中西部の黒人差別は「それが当たり前」になっているのが本当に怖い。その根深さは半世紀経っても完全解消されていないのだろうけど…。

故にこの映画を「『白人の救世主』の典型だ」と批判する声もあるようだが、これが実話を基にしているなんて、本当に素敵だと俺は思うなあ。(ちなみに脚本にはトニーの実の息子のニックも参加、2人の意思を尊重して生前には映画化しなかったそうだ)


ロード・オブ・ザ・リングの、カッコよかったアラゴルンの面影が全くないヴィゴ・モーテンセンのゴツいイタリア人ぶりも凄かったし、マハーシャ・アリの哲学者のような佇まいも最高だった。

アカデミー作品賞も納得の、笑ってジーンとして、拍手を送りたくなる愛すべき映画でした。

絶対損しないのでぜひぜひご覧あれ。


普段はこの手の映画をほとんど上映しない郡山でも上映してくれて本当に良かったぜ。

もっともこの手じゃない「キャプテン・マーベル」も先週観たけど、これも安定の面白さだったのは認めます(笑)。