春告鳥(はるつげどり)の知らせ の約一年後の話です。
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春告鳥(はるつげどり)が来ました。
(一年ぶりくらい・・・かな?)
『私は 春告鳥(はるつげどり) です』
彼が口上を述べます。
彼は鳥の体に人頭が乗っかっていて、ウグイスみたいな黄緑色の羽を生やしています。
感情が見えない冷たい感じは相変わらずです。
彼は、天使みたいな役割だと思うけど、
どう見ても、怪しい妖怪みたいです。
しかし、以前よりも輪郭が少しうすい・・・柔らかいように見えます。
彼が言葉を続けます。
『慶事を告げるのは、大いなる名誉です』
『おめでとう。春が来ます』
彼が何を言うのか、だいたい予想がついていて
どういう返答を返そうか、頭では解かっているのに
・・・なぜか重くプレッシャーを感じます。
私の覚悟を試されているような。
正直、逃げたい気持ちが膨らんできました。
でも、逃げちゃいけない。
彼は私をじっと見ています。返事待ちの体勢です。
私は、踏み出すか 逃げ出すか どうにも決められないまま
ぐう と固まって こらえています。
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そのうち、背中に手が添えられる感触がありました。
(緋和子だ。)
緋和子の手に、私を押し出す意思はなく
かといって 私を支える訳でもなく、ただ 静かに添えられています。
”逃げてもいいわ”
たぶん、そう言っている。
彼女は、私に選択肢を与えて、待っている。
たぶん。
周囲をふわふわ漂っていた私の欠片が
少しずつ、ちゃんと私の元へ戻ってきて
言葉を作り始めました。
言葉が形になり、喉もとで重さを増し
そして
「ありがとう」
「受け取ります」
やっと、言えた。
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達成感と安心感で気が抜けました。
(よかった、やったぁ~)
と その時、彼と目が合いました。
春告鳥の目には
へぇ とか ふうん みたいな軽い感嘆が含まれていました。
初めて彼の感情みたいなものを見て、びっくりしていると
彼が 目に少しだけ温度を乗せて
言葉をくれました。
『君に幸あれ』
空気が動いて
春告鳥が去って行きました。
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祝いの言葉をくれたはずなのに、
今までをねぎらって”よくやったね”というよりも
試合前に言う”健闘を祈る”みたいな、エールに聞こえました。
(春告鳥の示す”春”が、良いことばかりじゃないのは知っている。)
でも、健闘を祈ってくれた。
ひとまずは それを受け取ろう。ありがたく。
(・・・うん。頑張るよ)
緋和子が近くで微笑んでる感じがする。
よかった。
今度は受け取れて、よかった。
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緋色の彼女(緋和子) については こちら↓
(小話: つまりは、それでいいってこと。)
(小話: 答えは ちゃんと見つかる)
8 緋和子からプレゼント ---- 音叉チューナーをゲット
(小話: ふたたび 砂漠へ)
(小話: 春告鳥(はるつげどり)の知らせ)
2 二人分の夕焼け
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