夢の中の話をします。
緋色の彼女 については↓を見てください。
2 二人分の夕焼け
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3月半ばの頃、私の所に鳥型のヒトが来ました。
私が 緋色の彼女 とチームを組む前のことです。
「私は 春告鳥(はるつげどり) です」
「告知は大いなる名誉です」
「おめでとう。春が来ます。」
彼は突然 現れて、仰々しくお告げを垂れました。
なるほど、確かにウグイスのような色合いです。
彼は人の頭に鳥の体を持ち、黄緑色の羽がきれいでした。
人頭の顔は淡く微笑んでいましたが、温度の無い顔でした。
人形みたいな瞳。
「私は 春告鳥です」
「告知は大いなる名誉です」
「おめでとう。春が来ます。」
しかも同じセリフを延々と繰り返します。
「私は 春告鳥です」
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最初は彼(鳥?)に注目していましたが、
じきに飽きて歩きだしました。
「私は 春告鳥です」
「告知は大いなる名誉です」
「おめでとう。春が来ます。」
やばい。追いかけてくる。
どうしよう。
早歩きで動いても
彼の言葉と気配がくっついてきます。
「私は 春告鳥です」
「------」
彼は お告げを繰り返します。
春?なんのことだろう?
私はだんだんイライラしてきました。
「私は 春告鳥です」
「------」
ああ、もう、いいかげんにしてほしい。
私は頭の中に分厚い城門を作り、
ガチャリと鍵を掛けて閉ざしました。
流石に拒絶したのが伝わったのか、
彼の声が遠くなり、やがて消えました。
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今。
隣にいる 緋色の彼女を見て
「彼の言っていた"春"は、このことだろうか?」と
ふと考えました。
今は6月。あれから3ヶ月経っています。
(『私は 春告鳥です』)
確かに彼は吉兆だった。
追い払うような真似をして ごめんなさいと
今更ながらに思います。
・・・だって、天使のイメージとは かけ離れていたんだもの。
(『おめでとう。春が来ます。』)
ありがとう。その通りだった。