新たに見つけた

戦前と戦後初期スパナ群

 

戦前、戦中(~1945年)と戦後初期(終戦から20年程度/~1965年)のスパナに興味があります。

今回、この年代の古いスパナを沢山発見

特にJIS認証メーカーのJIS取得以前(1945年~1955年頃)を長く探していて、複数社のJIS取得以前を見つけました。

また、日本のスパナで2番目(1921年頃)に生産されたワシノ製作所と、さらに昭和スパナ製造の初スパナ(1940年頃)も。

今回取り上げたスパナは、該当する個別ページに順次追加していきます。

 

1.JISメーカー(全25社から)

 TOA/東亜鍛工-1 変わったロゴ JISマーク付き  

・"TOATANKO"とJISマークを平行四辺形で囲ったロゴの東亜鍛工所スパナです。(JISマークをロゴに組み込んでしまうのは初めて見ました)

・裏面の"1980"は東亜鍛工所のJIS認証番号であり、これより東亜鍛工所製と分かります。

・"1980"はJISで表示が義務付けられている製造者記号になっています。

・なお、他社も含めてJIS認証番号を製造者記号として刻印するのは認証取得初期だけです。

・したがい、1952年にJIS認証を取得していますので、1952年またはその後数年間の生産と推定します。

★東亜鍛工所の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら (『JIS全25社』内)

 

 ◇工/東亜鍛工-2 

 ★JIS取得以前 ★初スパナ  

・東亜鍛工所のロゴ"◇工"だけが刻印されたスパナです。("工"は鐵所から)

・東亜鍛工所の初代スパナだろうと思います。

・創業は終戦直前の1944年ですが、工具生産は終戦後でしょうから、本品は1945年~1952年の生産と推定します。

 

 TORI/服部スパナ 

 ★JIS取得以前  

・"TORI"刻印より服部スパナ製作所の製品と分かります。

・前述の東亜鍛工所スパナと同様にロゴが刻印されているだけであり、JIS認証を取得する1952年よりも以前の製品だろうと思います。

・したがい、1945年~1952年の生産と推定します。

・服部スパナ製作所(旧・服部廣鐵工所)は戦前の1941年に既にスパナ広告を出していますので、戦前品の可能性もあります。

・但し、鍛造表面の粗さを隠すためか表面全体が研磨され、綺麗な仕上がりになっています。

・したがい、年代感が無くなっていて、戦前なのか戦後なのか判別が難しくなっています。

↓1941年『全国工場通覧』の広告

・戦前広告のスパナは、オフセットが無く、ロゴもカタカナの"トリー"になっていますので、本品との関連は薄くなっています。

・スパナ部だけ表面研磨したようなイラストになっていることにのみ本品との共通感があります。

★服部スパナの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら (『JIS全25社』内)

 

 LONG/大内鍛工所 

 ★JIS取得以前 

・"LONG"より大内鉄工所製と分かります。

・本品にはJISマークがありませんので、JIS認証を取得した1965年よりも前の生産と思います。

・例えば、1959年『日本機械工業年鑑』に載っている広告のこれ。

★大内鐵工所の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら (『JIS全25社』内)

 

 SDF-1/昭和スパナ製造 

 ★JIS取得以前 ★初スパナ ★戦前 

・なんだかんだで100本近くの昭和スパナが手元にありますが、SDFロゴしか刻印されていないのは初めてです。

・スパナも卵形で、年代の古さを感じます。

・昭和スパナは1938年に昭和鍛造工業所として創業し、1940年にスパナ広告を出しています。

・そのスパナ広告のイラストに本品がそっくりです。(SDFロゴが少し左よりなのも一致)

・したがい、本品は昭和スパナ製造(旧・昭和鍛造工業所)の初スパナの可能性が高いと思います。

・創業の1938年から広告の1940年頃の生産と推定します。

↑↓1940年『東京商工名鑑』

★昭和スパナ製造の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら 

 

 SDF-2/昭和スパナ製造 縦向きJISマーク 

・表面にはSDFロゴだけ、裏面にはJISマークだけという珍しいSDFスパナです。

・JISマークが縦方向に刻印されているのは、さらに珍しいと思います。

・JISマーク付きですので、1952年またはその後数年間の生産と推定します。

 

 SDF-3/昭和スパナ製造 アングルスパナ JIS付き 

・SDFのアングルスパナが初めて見つかりました。

 

 SDF-4/昭和スパナ製造 航空自衛隊向け 

 

 

・航空自衛隊向けの昭和スパナ/SDFです。

・桜マークに三本線より航空自衛隊向けと分かります。

・自衛隊は公的認証の取得を重視していましたので、JIS規格制定後はJIS認証取得を条件とすることが多かったと聞いています。

・一方で、昭和スパナのJIS認証取得は1952年で、かつ航空自衛隊の創設は1954年です。

・したがい、JIS無しの本品は、1952年~1954年の短い期間での生産と推定します。

★自衛隊スパナの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

 SDF-5/昭和スパナ製造 ◇興?向けOEM 

・裏面のSDFロゴより昭和スパナのOEMと分かります。

・表面のブランドロゴは、井桁に"興"または"典"、もしくは"山"に見えます。

・残念ながら、この類いのロゴは見たことが無く、OEM先の会社名は不明です。

・JISマーク付きですので、1952年以降で1960年前後の製品と思います。

 

  大阪鍛工-1 川本ポンプ向けOEM 

・同じ名古屋企業同士のコラボで、大阪鍛工製の川本ポンプ向けOEMです。

・裏面の  より大阪鍛工製と分かります。

・薄口になっていて、ポンプ製品に同梱の修理用スパナと思います。

・薄口のため、JIS規格外となり、生産年とJIS認証年(1952年)との関係は不明になります。

・漢字の"川本"ロゴが素敵です。

・"川本"ロゴの前の"B.S.P."は、Baby Sweet Pompの略のようです。

★大阪鍛工の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

★現在の川本ポンプHP ⇒ こちら

 

  大阪鍛工-2 新たなロゴ? 

・大阪鍛工のロゴ  に対し左右に三本線を追加したロゴ  の様に見えます。

・初めて見るロゴで、大阪鍛工のバリエーションなのかもしれません。

 

 I.S./井上製作所 浮き出しヨットロゴ 

 初スパナ? 

 

・1964年に井上製作所が商標登録したI.S.+ヨットのロゴで、これまで打刻刻印だけが見つかっていましたが、新たに浮き出し刻印版が見つかりました。

・このヨットロゴは井上製作所の初スパナですが、浮き出しと打刻のどちらが先だったのでしょうか。

・両者に胴長の断面形状差があります。(ラウンドタイプと角張った四角タイプ)

↑打刻刻印版

★井上製作所/I.S.の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

  一重丸京-1 刻印は  だけ 

 ★戦前 

・一重丸京  だけが刻印された無印モデルです。

・胴長の鍛造表面が非常に粗くなっています。

 刻印が不鮮明ですが、下の海軍向け共通要具(同一サイズ10x12)と同一形状であり、同じ京都機械製と分かります。

・したがい、海軍向けの一般汎用工具と推定しています。

・但し、スパナ部が光沢加工(簡易メッキ?)されていて銀色なこと、サイズ刻印が胴長では無くスパナ部であることの2点が、他の海軍向け一重丸京と異なります。

・小さな  が刻印されているのは海軍向けの特徴ですので、戦後になってからの京都機械では無いだろうと思います。

 

↑海軍向け一重丸京(共通要具)。

・発動機の機種名が刻印されるのが通常ですが、"要"と"○共"の刻印より共通要具と推定しています。

 

  一重丸京-2 KKK裏面刻印違い 

 ★戦後市販の初スパナ? 

・"KKK"は京都機械が戦後最初に市販したスパナと推測していますが、10本ほど確認できている中で、裏面の材質表示は全て"Nickel Chrome Vanadium"でした。

・本品は他と異なり、"Nickel Chrome Steel"になっています。

・"Ni-Cr"よりも"Ni-Cr-Va"の方が高級鋼材ですので、最初は"Ni-Cr"で、途中から"Ni-Cr-Va"に変更したと推定しています。

・つまり、"Ni-Cr"の本品が京都機械の市販第1号?(最初の最初?)

・もっとも、別の考え方もあって、戦時中に海軍から優先的に支給されていた"Ni-Cr-Va"鋼の在庫を使い切り、一般市販の"Ni-Cr"鋼に切り替え。

★一重丸京/KKKの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

 日鍛工機 "ギヤーN"フラットモデル 複数 

 ★初スパナ  


・日鍛工機(現スーパーツール)が最初のブランドロゴとして1960年に"ギアーN"を商標登録したのは分かっていましたが、長く実物が見つからず、幻のスパナでした。

・見つかり始めると一気に見つかるもので、フラットパネルが3サイズ、凸帯パネルで2サイズの計5本が見つかりました。

★日鍛工機/スーパーツールの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

2.非JISメーカー

 FW/ワシノ製作所 

 ★戦前 ★日本で最初のスパナ広告 

・FWロゴ  の戦前スパナです。

・別ブログ『戦前のスパナ』を書いた時に、DTFスパナと共に『日本標準工具型録/1930年』にロゴが載っていて、ワシノ製作所と分かっていましたが、今回スパナ現物を見つけたものです。

・ワシノ製作所は、1920年~1939年まで鷲野グループの中で鍛造を担当していた会社です。

・鍛造/Forgeの鷲野/Washinoで、ロゴはFW??

・1921年/大正10年のワシノ製作所の広告にスパナが登場しています。

・これまで見つけた中で日本で一番古いスパナの広告です。

鍛造スパナの生産は東京鍛工所/DTFが一番最初の1918年で、ワシノ製作所が2番目と推定していますが、スパナ広告ではワシノ製作所が一番最初になっています。

・なお、現在もワシノ機器としてストレーナー等を生産しています。⇒ HPはこちら

 

↓1921年『工業之大日本』(日本で最初のスパナ広告)

↓1930年『日本標準工具型録』

・型録ではオフセット15度になっていますが、本品は大きく傾けてあり、オフセット30度はあります。

 

↓オフセット15度で、FWロゴが縦向きも見つかっています。

 

↓日本で一番最初のスパナ(2018年)の  東京鍛工所(TDF/Tokyo Drop Forge)。

・残る  小川鍛工(ODF/Ogawa Drop Forge)が見つかれば、日本のスパナの始まり3社が揃います。

・小川鍛工合資会社…1929年3月設立(官報)、スパナ情報は1930年の前述型録と1940年文字記録『スパナ生産』の2件のみ。

★『戦前のスパナ』詳細は、当ブログ内のこちら

 

 MITO/水戸工機 初代ロゴモデル 

・梅をかたどったと思われる水戸工機の初代ロゴ付きスパナが新たに見つかりました。(梅は水戸偕楽園から)

 

↑梅ロゴの形状が微妙に異なるのスパナもあります。(こちらはMITO TOOLS)

 

↑微妙に異なる梅ロゴのスパナをもう一つ見つけました。(凸帯パネル)

 

↑今回MITOについて書いていて気が付きましたが、以前から何だろうと思っていたこのロゴ、MITOの梅ロゴに似ています。

・これもMITO製でしょうか?

・品番/DB-1の取り方も、一番上のCE-6と似ています。

 

    

↑MITOの梅ロゴ4種。

・3、4番目のロゴは、花弁の無い梅になっています。

 

↑手書きMitoloyロゴのスパナも探しています。

 

★水戸工機/MITOの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

 カタカナ"ハタヤ" 

 ★戦後の初スパナ? 

・表面にカタカナ"ハタヤ"と縦方向に刻印されたスパナを見つけました。

・ハタヤと言えば、自転車工具の畑屋と思います。

・HATAYA/畑屋は100年以上前の1918年から自転車工具を作っていますが、ロゴは"畑屋"または"HATAYA"であり、カタカナ"ハタヤ"は初めて見ました。

・凸帯パネルのスパナ形状よりNTK製の可能性が高いと思います。

・1953年カタログのスパナ/品番128にNTK製スパナ6本セットが掲載されていて、本品が該当するのだろうと思います。

・但し、ロゴがカタカナ"ハタヤ"は異例なので、1953年のカタログ発行以前の終戦直後に暫定で作られたスパナではないかと推定しています。

↓1953年カタログより

★畑屋/HATAYAの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

 "ギヤーM" 宮田自転車向けOEM 

 ★戦前? 

・宮田自転車向けのOEM。

・製造元は不明。

・宮田自転車は1907年に"ギヤーM"を商標登録し、ギヤーMのスパナを戦前に出しています。

・したがい、このスパナも戦前の可能性があります。
↓1932年の商標登録(1907年登録は見つけられず)

★宮田自転車の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

・ギヤー印ロゴの3つ目、日鍛工機と宮田自転車と共に久保田鉄工にもギヤー印のスパナがあります。

・この卵形スパナが、戦後初期スパナであることを物語っています。

・ちなみに、日鍛工機と宮田自転車の12枚歯に対し、久保田鉄工は18枚歯。

 

・話が広がってしまいますが、日本鍛工が戦後になってから作っていた"New Happy" の片口スパナです。

・日本鍛工は1930年から"Happy"ブランドの作業工具を作っていて、それを戦後の一時期に "New Happy"として復活させたと理解しています。

 は、日本鍛工の会社ロゴで、◇に漢字の"日"をデザイン化した"θ"。

・久保田鉄工の片口スパナは、その形状からこの日本鍛工製なのだろうと考えています。

 STRONG/前田機工? 

・"STRONG"ロゴのスパナを初めて見つけました。

・"STRONG"と言えば、戦時中1942年に前田金属工業(現TONE)の商社部門である前田軍司商店の広告に初登場するストロング印が思い浮かびます。(背景に戦車)

・戦後に前田軍司商店は前田機工となり、ストロング印も引き継がれます。

・本品が前田機工の製品かどうか確証はありませんが、80%の確率で前田機工が運営しているブランド"STRONG"と推測しています。

・1953年広告を見る限りでは、ストロング印はハンマー系ブランドになっていますが、作業工具としてスパナも取り扱っていたのだろうと思います。

 

↑戦中1942年『工業取引案内』と1953年『機械器具工場総覧』の広告

★前田機工/STRONGの詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

 RIKEN/理研化機? 

・"RIKEN"と言えば、オートバイ工具事業を手掛けていて、ホンダに車載工具を納めていた理研化機工業が思い浮かびます。

・RIKENはポピュラーな名称ですので、理研化機工業製の可能性は70%程度と思います。

★理研化機工業の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら

 

 EBARA/荏原製作所OEM? 

・"EBARA"スパナはヤフオクで良く見かけます。

・"EBARA/荏原"名称の工具会社は確認できませんので、水中ポンプの会社である荏原製作所が製品に同梱したスパナだろうと推定します。

・上の川本ポンプの如く、ポンプ業界にはスパナ同梱の文化があるのでしょう。

・なお、裏面の"E"筆記体を2つ合わせたロゴ(EBと読めます)が荏原製作所なのか、また製造元はどの工具メーカーなのか確認できていません。

★荏原製作所HP ⇒ こちら

 

★同様の『戦前、戦中と戦後初期』シリーズ

・新たに見つけた戦後初期のスパナ ⇒ 当ブログ内のこちら

・現役メーカーの珍しいロゴ3種 ⇒ 同、こちら

・戦前のスパナ ⇒ 同、こちら

 

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戦前および1953年、1963年当時のスパナ生産会社とスパナJIS全25社のリストを参考として掲載します。

 

★戦前のスパナ生産会社…こちら("戦前のスパナ"より)

 

★スパナJIS全25社リスト

※『スパナJIS全25社』の詳細は、当ブログ内のこちら

 

★1953年当時のスパナ生産会社 by『機械器具工場総覧』通産省編

 

★1963年当時のスパナ生産会社 by『機械工具取引案内』通産省編

 

 

 

この回、終わり