暴力に脅かされるフランスの教員【2】暴力の実情(1) | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

前回の 暴力に脅かされるフランスの教員【1】数字と巨大な軋轢  の続きです。

今回から、Profs au bord de la crise de nerfs  (神経発作の瀬戸際にある教師たち)という、暴力に直面する教師に関する記事を数回に分けて掲載します。



Ecole, attention baston

Profs au bord de la crise de nerfs


学校に永遠に居座る暴力に直面して、教員たちは絶望している。野次、侮辱と身体的攻撃の真只中で、どうやって知識を伝えるのか?何も彼らに保安官の役割を準備させなかった。カロリーヌ・ブリザールの調査報道。



昨年11月15日、メッツ近くの中学の英語教師は20分前から授業中だった。15歳のマルコが、挨拶もなくドアをノックすることもなく、不意打ちのように突然入って来る。教師はマルコに礼儀を守って入るところからやり直すように求める。教師は英語で話しかける。“Come in”と言葉をかける。しかし少年はよくわからない。逆上する。緊張が高まる。教師は語る、「怒り狂いながら、授業で私が使っていたオーバーヘッド・プロジェクターに向かって彼は私を突き飛ばした。そして叫び出した、『お前はもう、死んでいる!』」 中学を除名されて、彼は数日後に校門前で大人を殴りつけるために戻って来た。このような暴力の場面はほとんどありふれたものになってしまった。因習だ。制御できない「殴打の監獄」になってしまった中学か?答えは明白、そうだ。そして事例は急速に増殖している。リヨンでは、宿題を配っているフランス語教師が腹部をナイフで刺された。ランド県のサン・ポール・レ・ダックスでは、物理化学の教師が襲われ、コンクリート製の作業机に落下して頭部に重傷を負った。パリ郊外のポルシュヴィルでは、若い女性教師が高校生に「鞭で打たれ」、別の高校生が携帯電話でビデオを撮っていた。非常に時代に合ったやり方、happy slapping だ。ノール県のベルレモンで、大騒ぎを起こす事件が起こる。侮辱された教師、そして有名になった平手打ち、拘留(コラム参照)。エピナルでは先週、学級の用事を片付けなければならないことに激怒した生徒によって、生物地学の教師がめった打ちにされた。気の毒な教師たち。拳での殴打、ボールの攻撃、侮辱、絶え間ない野次と、短気な親による刑罰的な処理の間で、教師たちは制度におけるあらゆる信頼を失った。彼らにとって、学校はハイ・リスクの区域となってしまった。知識を伝達する責任のある人たちは、力尽き、激しく苛立ち、追い出され、潰されている。彼らの教室を支配する永続的な緊張という罠にはまって。絶えず悪化する絶え間ない耳鳴りのように。全面的に弱く無力だという感情とともに。
laren Montet-Toutain, la prof poignardée par un élève


 数字は雄弁以上のものだ。昨年9月の新学期以降、5000を越える重大行為―侮辱、脅迫と名誉毀損―が訴訟の対象となった、とFAS(Fédération des Autonomes de Solidarité laïques 非宗教的連帯的自立連合?)は伝えている。ほんの些細なこと、注意、行動―「僕に触らないでください、先生」―または余りに多くの視線、脱ぐことを求められる帽子だけで十分だ・・・そして生徒は錘を壊す。MGEN (Mutuelle générale de l’Education nationale、国民教育総合共済組合)によると、教員の4人に1人は学校内で安全な状態にないと感じている。結局、都会のゲリラの技術を採用するに至る教員もいる。文学教師、マティアス・ガヴァリーは、何年も前からクリシー・ス・ボワの中学(セーヌ・サン・ドゥニ)に勤め続けている。彼は語る、「校庭には、少なくとも5人か6人の大人がいないと決して出ない。生徒が我々の後ろに回らないように半円を組んでいる。2度、石をぶつけられた。教室では、ナイフを没収した。」

 暴力はどこに集中しているのか?驚くには当たらないが、専門家が言うように、最も教育困難な学校、職業高校、「格落ち」の中学だ。しかし、暴力はどこにでもくすぶっている。高級住宅地でも。教師たちが「危険の頂点」と呼ぶもの、生徒が爆発しそうになる瞬間からは、誰も逃れられない。例えば。9月の終わり、Eureの技術系高校の数学教師、シモンが説明する、「力の強い連中が我々を怒らせるとき、連中は限界を探っている。エスカレートするのは避けなければならない。」 学級内の会議もある。「会議の途中で非難された生徒は教師を恨むこともある。全てが悪化しつつある。」パリのポール・ポワレ・モード高校のフランソワ・アントニオッティは言う。

 別の危機的な局面がある。学期が長すぎる場合、教師は疲れ果て、少年も疲れ果てる。そして最後に、ラマダンの時期だ。フランソワ・アントニオッティが付け加える、「断食の8日目か9日目が終わると、子供たちは疲れ、朝は早く起き、夜遅く寝るようになり、いらいらし、反応が悪くなる。そうして、いつも事件が起こる。」 しかし全ての教師がこう言う、彼らは一年中いらいらしている、と。特に答案を返すときには。成績の悪い生徒を他の生徒の前で侮辱しないためにどうすればいいのか?


(つづく)

CAROLINE BRIZARD



出典

LE NOUVEL OBSERVATEUR 2259 21-27 FÉVRIER 2008

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2259/articles/a367043-profs_au_bord_de_la_crise_de_nerfs.html


次回、暴力に脅かされるフランスの教員【3】暴力の実情(2) に続きます。