金が滴り落ちない国 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

1か月以上前の記事で申し訳ありませんが、久しぶりに『ル・モンド』の記事を引用します。

前回のエントリーと似たような話が含まれるかもしれませんが、著者は別人です。誰が見ても、某国の現状は同じということでしょうか。


Lemonde.fr に2018年5月9日に掲載された、 « Le Japon, pays où l’argent ne ruisselle jamais »  (日本、金が決してしたたり落ちない国) という記事です。

ついでですが、某国と某国には未だに根強い信者がいるようですが、1930年代に既に否定されていた「トリクルダウン理論 trickle-down effect (笑)」は、フランス語では théorie du ruissellement と言うらしいです。

« Le Japon, pays où l’argent ne ruisselle jamais »



Les salariés japonais ne bénéficient pas des résultats financiers exception­nels de leurs entreprises, explique dans sa chronique, Philippe Escande, éditorialiste économique au « Monde ».


(日本の勤労者は企業の例外的に巨額な金銭的成果の恩恵を受けていないと、『ル・モンド』の経済論説委員、フィリップ・エスカンドは自らのコラムで説明する。)

LE MONDE ECONOMIE | |Par


損失と利益の年代記 富裕層の金は結局、貧困層に幸せをもたらすのだろうか? 共和国の新大統領、エマニュエル・マクロンが推し進めた決定の有効性と正当性に関する政治論争のために、フランスではこの古くからの問いが再び飛び出してきた。したがって、1930年代にアメリカ合衆国で論争を巻き起こしていた、有名なトリクルダウン理論が引き出しから再び取り出された。直ちに否定されていたのだが。これは実は理論などではなく、正当性が極度に偶然に左右されるメタファーに過ぎない。なぜなら状況とありふれた力関係で決まるからだ。

両極端の事例がこのことを思い出させる。エールフランス航空では、操縦士が背景で人員の大半を訓練しているが、6%近くの給与の上昇を要求するために、会社の業績の改善に直ちに反応した。同社の脆弱な競争力、競争の強さと石油価格の再上昇から見て、経営陣にはあまりにも重いと判断された努力である。人事部で既にあらかじめ先取りされていただけの金が滴り落ちる。そしてジャン=マルク・ジャナイアックの辞任に続いて誰が社長になろうとも、譲歩せざるを得ないだろう。

Explosion de la dette

(借金の爆発)
地球の反対側では、日本の自動車メーカーであるトヨタが、2017-2018会計年度の同社の類稀な業績を発表したところだ。正味200億ユーロの利益を出し、他社をはるかに引き離して世界の自動車産業の王者となる。2017年には800憶ユーロ超まで利益が跳ね上がったホンダのような、現地の競争相手とともに分かち合う例外的な収益性である。

しかしながら、春闘の結果、トヨタは従業員に10ユーロという慎ましい賃上げしか与えなかったし、本田は13ユーロに過ぎなかった。エールフランスの従業員が要求した数百ユーロとは何の関係もない。日本の大企業の頂点に金は蓄積し、企業が保有する流動性とともに投資の必要額の2倍をカバーしかねないほどになっているが、この財源は実質的に底辺に行き渡らない。ゼロ・トリクルダウンである。

これら両極端な状況の理由は単純である。あらゆる航空会社は、ペルシャ湾岸の首長国も含めて、操縦士が不足していて給料が高騰しているために、収益を上げるのに苦労している。彼らの力関係はそこに由来する。反対に、日本における雇用の柔軟化と終身雇用の終焉は、著しい人手不足にもかかわらず、ニッポンの労働組合を奇妙なまでに弱体化した。国全体にとって残念な状況である。というのは、給料の低下が国内消費を侵食し、デフレと公的債務の爆発を助長する一方で、企業の財源はほとんど収益を生まない株式に下手に投資されるからだ。これが政権に、低金利での拡大的な通貨政策と国債の買い取りを続けさせる。日本が永遠に、決して金が滴り落ちない国であり続けることはできないだろう。




所得再分配が機能しない(どころか逆に機能している)国で、企業が労働分配率を上げずに内部留保を増やしていく一方であるどころか、消費税の本来の目的である輸出戻し税のおかげで濡れ手で粟、とうい現状で… (輸出戻し税については、ヨーロッパが先駆者であることの疚しさが、こういう記事で触れられることはありませんが)

某国の勤労者も、分断されて自分より弱い者を叩くことに満足していないで、連帯して反乱を起こしたほうが良いのではないでしょうか?

(こんなこと書くと、そのうち共謀罪か何かで逮捕されて、中世にも劣る非近代的な司法制度によって凶悪犯罪者に仕立てられるのでしょうか)