"Rendons du pouvoir aux salariés"  従業員に権力を返そう | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

ご無沙汰しております。
1年以上も更新がトド凝ってしまいました。某亡国極右のアホヘイトコメントに疲れ果てたことだけが原因ではありません。

ずいぶん前のことですが、週刊誌 L'Obs (旧 Le Nouvel Observateur )で日本の経済に言及されている記事が掲載されました。2018年3月29日(通巻2786)に掲載された、"Rendons du pouvoir aux salariés"  (従業員に権力を返そう) という記事の一節です。

日本でも有名な、Patrick Artus (パトリック・アルテュス)氏の対談です。



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Travail

"Rendons du pouvoir aux salariés"

Avec la journaliste Marie-Paule Virard, Patrick Artus publie un essai sur les dérives du capitalisme financier qui fait supporter tous les risques aux travailleurs

 

Propos recueillis par SOPHIE FAY



(ジャーナリストのマリ=プール・ヴィラールと共同で、パトリック・アルテュスは、労働者に全てのリスクを背負わせる金融資本主義の逸脱に関するエッセーを出版する。)



あなたは自由主義の経済学者ですがそれでも、著書『Et si les sa¬lariés se révoltaient ? (そしてもし勤労者が反乱を起こしたら?)』では、マルクスが正しかったと躊躇なく言っています。資本主義は自らの行き過ぎによって助かる見込みがないと…
マルクスはすべての点について正しかったわけではありませんが、次の点において確かに正しかった。資本の利益の低下というリスクを前にして、資本主義は勤労者への締め付けを厳しくすることで反応しました。アングロサクソンの株主は常軌を逸した収益性を要求します。システム全体の働きを脅かすほどに。

この歯止めの利かない資本主義の過剰はどこから来ているのですか?
アングロサクソン資本主義は、企業統治は株主に奉仕するものだという単純な決まりによって、ヨーロッパで幅を利かせました。最高経営責任者はあからさまにこう言います、私は株主の利益のために企業を統治するために彼らに指名され、報酬を支払われているのだ、と。ところがこの資本主義は、経済の面でも耐え難く非効率な仕方で逸脱しました。何故か? 金利がどのような水準であっても、15%の株主利益を要求します。ところが、国家や銀行が1%か2%で借りている時に、このような水準の利益を出すためにどうすれいいのでしょうか? この金はどこから来るのでしょうか? 従業員を犠牲にして株主により多く与えることになります。この法則から外れるのは二か国しかありません。フランスとイタリアです。SMIC(Salaire minimum interprofessionnel de croissance 全職種成長最低賃金)と未だに強い労働組合の力のおかげで、生産性よりも早く賃金が上昇したただ二つの国々です。ドイツ、アメリカ、中欧諸国、新興国は賃金を増やさないか増やしても僅かです。この視点で最も非常識な国、それは日本です。賃金が減少し生産性が上昇して20年になります。その結果、企業の利益は投資に必要な額の2倍になりました。使い道のわからない、0%で銀行に預けるしかない5兆ドルの現金を保有しています。給与を増やす代わりに、日本企業は0%の金利で貯め込んでいるのです。

それがなぜ、資本主義の働きを脅かすのですか?
なぜなら、経済が正しく回るためには生産性向上の成果を従業員に分配しなければならないからです。技術革新は、中流階級が繁栄している時にずっと早く広まります。それがフォーディズムの基礎です。中流階級が自動車を買えば、自動車産業が発展するのです。購買力を抑えれば、技術革新と技術の進歩が広がる力を抑えることになります。

15%の収益という要求はどこから出てきたのですか?
一種の局地的な習慣、理由があまりよくわからないまま、1990年代後半に<定着した基準です。経済危機の間少し減少しましたが、すぐに再上昇します。誰がこのような利益を要求するのか? 銀行ではなく、投資家の世界です。アメリカの年金基金、主要な投資マネージャー、ヘッジファンド、プライベートエクイティファンド、アクティビストファンド… これらは顧客、市場のシェアを獲得するために互いに競争しています。株主となっている企業に圧力をかけます。
二つ目の逸脱があります。アングロサクソン型資本主義は、絶え間なく増大する収益を押し付けます。それは一種の偏位です。今日、経済的ショックはもはや株主が耐えるものではありません。きわめて強い雇用柔軟性、労働条件、報酬…などによってリスクを取らされるのは従業員です。従業員は保護され、株主は利益を得るだけでなくリスクも取るという、給与所得者という言葉の定義の正反対です。もしも従業員がリスクを取るなら、その結果として報酬を受けなければなりません。

どのような形でですか?
例えば、(現在、CAC40の資本の6%に相当する)従業員株主制度を発展させるべきです。今日、大企業グループの従業員の60%に関わるものの、中小企業では10%に過ぎない、利害関係と参加を再構築すべきです。全く単純に、利益があるときには報酬を増やすべきです。一部の大企業集団(アマゾン、ウォルマート、無料の株式を配るトタルなど)は既にそれを実施しています。

Notat-Senard報告が提案しているように、企業の社会的目的を見直して柔軟性を再検討することは可能でしょうか?
この提案は、自発的な企業にしか関係ありません。リスクを取る従業員が見返りに繁栄という利益を得るような報酬制度を再構築するほうがずっと効率的であると私には見えます。企業内での社会的対話を発展させるべきであり、労働組合を弱体化させるべきではありません。私は取締役会への従業員代表の参加に極めて強く賛成します。

進化がなければ、従業員は反乱を起こすというのがあなたの考えです。どのようにしてですか?
ストライキでも巨大デモ行進でもなく、投票行動によってです。何も変えられなければ、勤労者はこう思います。アングロサクソン型資本主義は上手くいかない。世界化は上手く行かない。機械を壊し、国境を閉鎖し、邪悪な中国人から我々を守ると約束するトランプのような政治家を選ぼう、と。ブレグジットは脱世界化の最初の巨大な衝撃です。

どうすればこの資本主義を変えることができますか?
ヨーロッパの真の金融を発展させる必要があります。ヨーロッパには、公的債務を買い取り、資本からのあまり多くない報酬で満足する、生命保険会社と年金基金があります。しかしそれらは、株式には全くあるいは殆ど投資しません。ヨーロッパが自国の企業の所有者に再びなるなら、より少ない報酬と、取締役会における従業員のより積極的な役割のある、異なる資本主義を発展させることができます。それは左翼にとっても耳の痛いことです。株式を持つことは恥だ、年金基金は恥だと、左翼は常に見なしてきました。しかしながら、フランスまたは欧州の年金基金があったら、それらは我々の企業の所有者になり、今日のアングロサクソン型資本主義、あるいは、長期にわたる北京の利益を擁護することを目的として強大化する、明日の中国型資本主義に権力を委ねておくことはないでしょう。

エマニュエル・マクロンの政策が根拠を置くもう一つの理論をあなたは疑問視されています。経済学者ジョゼフ・シュンペーターが定義した創造的破壊です。なぜ、それが上手く行かないと言うのですか?
そうですね…今のところは、上手く行きません。シュンペーターは我々に何と言ったのでしょう? 経済成長は、質の低い雇用が質の高い雇用に置き換えられること、生産性の低い企業がより高い企業に置き換えられることから起こると言っています、一般的に、この過程は技術革新があるときに加速します。これが生産性を向上させ成長を生み出します。産業革命後の経済活動の頂点はそこに由来しています。
今日、インターネット、ロボット、人工知能といった技術革命があるにもかかわらず、生産性の加速の兆候は全くなく、したがって更なる成長もありません。むしろ正反対でさえあります。

何故ですか?
それには二つの理由があります。それぞれの工業国では、デジタル技術を採用した企業は効率を劇的に向上させますが、そうした企業は少数にとどまり、成長率を押し上げるには少なすぎます。そして、他の企業が消え去るわけではなく、低金利政策によって人工的に支えられます。
二つ目の理由は、マクロン神話の中心にある、企業と自営業者の発展が、雇用と成長を促進するのに十分ではないということです。アメリカ合衆国では、新技術の雇用は雇用全体の3.5%を占めるに過ぎず、この数字はむしろ減少しつつあります。フランスでは2.7%しかありません。したがって質の高い雇用の創出は限られます。自営業者に関しては、しばしばインターネットというプラットフォームに関連し、報酬はむしろ低めです。

したがって創造的破壊は本当には存在しないと?
企業がロボットを設置すると、平均して3人の雇用を破壊します。このロボットは一方で所得を生み出し、同じ企業の他の従業員、企業所有者、顧客に分配されます。彼らはどのようにそれを消費するのか?サービスを消費することによってです。産業革命が初めて、雇用を大半がより生産性の低い別の雇用で置き換えれるのです。単純な理由によってです。現代の経済はすべて、国内のサービスの経済になっています。中国を含めて、あらゆる国の内需は、レジャーであったり、人的サービスであったり、外食産業、早い宅配…だったりです。したがって全体としての雇用の問題はありません。地球上で最もロボット化された国である韓国の失業率は3%であり、アメリカ合衆国は4%です。しかし雇用の質という問題があります。

各国政府には何ができるでしょうか?
中流階級を救うためにロボットに課税する? そんなことが上手く行かないことはわかっています。この現代化は収入をももたらすのです!
競争力を上げること? 医療部門、建設、手工業…などでの30万人分の空き雇用を埋めるためにそれをする必要はあります。しかし、万人にとっての解決策にはなりません。それは若者の呪いです。長期間の学業は失業に対する保護になります(フランスでは、高学歴の失業率が4.5%で、低学歴層は18%です)。しかし知識の地位低下に対する保護にはなりません。いかに優れた免状があっても、期待していたよりもずっとさえない、サービス業の雇用しか得られないリスクがあります。

サービスという職業を再評価し、社会的有用性と報酬をより適正にすることはできるでしょうか?
一部のサービス業の雇用は質が高くなりつつあります。多くの技術が存在する物流では既にそうなっています。わが国にはさらに、SMICという防壁があります。これがなければ短時間労働の報酬はさらに低くなることが知られています。自営業者は月に平均して450ユーロの収入を得ており、一つのことが明らかになります。さらに先に進むために唯一の手段が、再分配です。社会は例えばEPHPADの介護職員に、さらに500ユーロを支給すると決めることもできます。わが国の当初の不平等の水準、すなわち再分配前は、OECD加盟国で最も高いです(アメリカやイギリスよりも)。そして再分配後はOECDで最も低いのです。さらに先に進むための財政的手段がわが国にあるか私は確信できません。わが国が1980年代から発展させてきた再分配政策には、費用がかかります。否定的な効果をもたらしかねず、不平等をより多く甘受している他国の経済に比べて競争力に問題をなげかける、税制上の圧力です。ただし、他国の勤労者が反乱を起こす日まで…


L’OBS No 2786-29/03/2018


 

https://www.nouvelobs.com/societe/social/20180329.OBS4390/patrick-artus-rendons-le-pouvoir-aux-salaries.html




二段落目の後半で日本に言及しています。
「この視点で最も非常識な国、それは日本です。賃金が減少し生産性が上昇して20年になります。その結果、企業の利益は投資に必要な額の2倍になりました。使い道のわからない、0%で銀行に預けるしかない5兆ドルの現金を保有しています。給与を増やす代わりに、日本企業は0%の金利で貯め込んでいるのです。」


この対談の元になった著作です。


ET SI SALARIES SE REVOLTAIENT?


この本の第4章は『 bientôt tous japonais ? 』です。その内容については、まだご紹介できません。