雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える


      

①のつづき


高ガンマ放射性

以下の点はこのトリウムフッ化溶融塩炉も100%安全とは言い切れない(ある意味ひとつだけ危険なことがある)重要な点です。

前回書いたウラン233(トリウム232が炉の中で中性子を1個吸収してウラン233という人工的放射性元素に変換する)には必ずごく少量の「ウラン232」が副産・随伴する。このウラン232は半減期72年でアルファ崩壊(アルファ線発生=ヘリウム原子核の放出)を次々に続け終わり近くに「タリウム(TI)208」を生み出す。これが持つガンマ線強度が異例に高くエネルギーが2・6MeVと通常のガンマ線の10~20倍で遮蔽が容易でない。この強度はウラン232生成1年後に十分高い値となり10年後に最大になる。100年後にやっと減ってくる。

トリウムを固体燃料として利用するときはこれが大きな困難となる。燃料製造時にガンマ線遮蔽が大変で高い費用を要する。このことがトリウムの利用が広まらなかった理由のひとつ。

しかし液体であれば遮蔽に全く問題がない。液体の溶融塩核燃料は遠隔操作で濃度調整・輸送などが行える。

このU232の強度ガンマ線の放出は逆に軍事利用に最悪となり、テロ対策にもなる。核兵器の盗難・監視や検出・検知がガンマ線で容易になる。

小型溶融塩中のウラン成分は他のウラン同位体もかなり含み、これで原爆を作ろうとすれば控え目でも総量10kgのウランを取り出す必要があるが、テロリストがたとえそれだけのウランを取り出せたとしてもそのウランから50センチの距離にいれば数時間で致死量の放射線を浴びてしまう。遮蔽しようとするとコンクリートで1m、鉛で25センチの厚さが必要となりこのようなものは処理も持ち運びもできない。テロリストが秘密に仕掛けてもすぐに探知されてしまう。ごく微量の232を含む物質を積んだ船の上空数百メートルを飛ぶヘリコプターから探知された実験がある。


容器の腐食

 

 

   

米テネシー州にあるORNL

オークリッジ国立研究所の全景

 

それではより具体的にフッ化トリウム溶融塩炉はどのような構造で、内部はどうなっており、燃料はどのように扱うのか? 簡単に見てみよう。

前に書いた溶融塩核燃料の溶媒となる液体:フッ化リチウム(L1F)とフッ化ベリリウム(BeF2)の二元系溶融塩が最適とされ、オークリッジ研究所所員はこれに「フリーべ(Flibe)」という愛称をつけていた。

 

ORNLの入り口 ↑

 

燃料塩としては L1Fを72モルパーセント、BeF2を16モルパーセント、にフッ化トリウム12モルパーセント、およびフッ化ウラン233(0・2~0・3モルパーセント)というごく少量を溶かして使用する。

黒鉛(炭素)は燃料塩に接触しても反応しないし腐食もしない。なので裸のまま燃料塩中で使用する。融点4000度、高い熱伝導度をもち、中性子照射損傷に耐える。


容器材料  ハステロイ-N

塩を構成するフッ化物よりも不安定なフッ化物しか作らない金属を容器材料に使えば腐食が起きない。ニッケルが主体でモリブデン・クロームを加えたハステロイ-N と称する耐熱合金が開発された。日系2世のイノウエ博士が基礎を作った。

炉心は燃料塩と黒鉛のみで構成され金属材料はまった存在しない。固体燃料炉で使われる薄い燃料被覆管のような激しい中性子照射損傷や熱応力に晒される部品は一切ない。


私が注目し驚いた興味深い点

1)黒鉛は炉が寿命を終えるまでは取り替えない。
2)燃料塩の総量をできるだけ少なくする。

こうすることによってウラン233への転換率が上がり、ほぼ100%となる。つまり燃焼したウランと同量を再生産する「核燃料自給自足」が達成できるのである。

容器の腐食問題解決として、簡単だが重要な点は、運転前の洗浄。燃料塩を注入する前の炉の内壁は空気に触れていた結果として酸化被膜で覆われているので、金属表面全体を脱水した純フリーべ溶融塩を注入して酸化被膜を塩で洗浄し完全除去することがだいじ。酸化被膜を残しておくと 金属容器内の腐食が進行する。


(つづく)