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トリウム発電について考える

今日はじゃあ「フッ化物トリウム溶融塩炉」とは具体的にどんな炉なのか? 簡単に要約してみることから始めましょう。

既存の原発の炉との根本的な違いは、この炉の燃料が液体だということ、さらに常圧で500℃を超える高温の液体ということ。

忙しい読者のために先に結論から。


リチウムとベリリウムのフッ化物、それぞれ LiF と BeF の二元素を液状にしたものを溶媒とし、そこにトリウムとごく少量のウラン235を加え常圧の炉の中で液体を乱流させる。すると核分裂反応がゆっくりと始まってやがては500℃を超える高温に達し、この熱を利用して熱交換器で水を水蒸気に変えタービン発電機を回して電力を得る、とまあごく簡単な仕組みです

ではまず、「塩」とは何か? から始めます。

私たちになじみ深い食塩(塩化ナトリウム NaCl )のように固体の塩が高温で液体になったものが「溶融塩」。

食塩を800℃以上の高温に熱すると薄桃色のさらさらした透明な液体になる。

温度を下げればまた元に戻り全く変質しない。

食塩の結晶はナトリウム陽イオン Na+ と 塩素陰イオン Cl- が規則正しく交互に並んだ構成をしている。これを「イオン性結晶」と呼びます。

これが高温になり溶融すると、各イオンがばらばらに運動を始め液体になる。

私たちの身の回りにも溶融塩がある。ガラスも溶融塩の一種。

ガラスと同種で不純物が混ざってるのが溶岩でこれは「溶融珪酸塩」。

製鉄、製鋼に利用され、精錬用溶鉱炉で鉄を鋼鉄にするのに使われる「スラグ」も溶融塩。

核燃料用には、塩素、硝酸、硫酸、炭酸、燐酸など様々な材料で実験した結果いずれも容器材料の腐食問題が解決できず不適合とされた。

米オークリッジ国立研究所の化学者たちは1947年から金属フッ化物溶融塩に注目し、研究開発を進め1950年に飛躍の機会を得た。

ジェット爆撃機の推進用の超高温炉の開発で、ナトリウム冷却、酸化ベリリウム減速、酸化ウラン固体燃料炉だったが温度が上がると核反応が激しくなる危険な炉であることが判明、その対策にこの「フッ化物溶融塩」燃料構想が採用された。

これはARE (航空機実験炉)と呼ばれ溶融塩炉として最初の挑戦。実験炉は10日間運転され860度の高温に達し、運転制御も満足できるものだった。

最終的に民間原発用としては、フッ化リチウム(LiF)とフッ化ベリリウム(BeF)の二元素溶融塩を溶媒とするのが最適と解った。

この3種の原子量は小さく、フッ素の原子量は19、リチウム7、ベリリウムは9 で熱中性子の吸収が少ないだけでなく減速材の補助となる。

三つの元素の頭文字をとって F Li Be フリーべと呼ぶようになった。


(つづく)