人が死ななければ動かない警察も、やっと動き出した。
<無謀自転車>警察庁が取り締まり強化 対歩行者事故増加で
3月20日19時4分配信 毎日新聞
歩道を猛スピードで走る自転車に歩行者がはねられるなどして起きる交通事故が増えていることを受け、警察庁は20日、全国警察に自転車による悪質運転の指導取り締まりを強化するよう通達した。同庁によると、自転車が関係する人身事故は昨年17万4262件で前年比5.1%減少したが、自転車と歩行者による事故は2767件で7.4%増加。歩行者の死者と重傷者は計335人で、前年に比べ26.4%増えた。
自転車の悪質運転取り締まりを巡り、同庁は昨年4月、罰金刑など刑事処分の対象になる交通切符(赤切符)の積極適用などを全国警察に指示したが、赤切符での摘発は昨年計268件だった。 また、違反者に注意を促す「指導警告票」を145万1353件(前年比28.7%増)交付した。内訳は、無灯火が約51万件、2人乗りが約41万件。歩道通行者に危険を及ぼす行為でも約12万件が交付された。【遠山和彦】 |
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070320-00000106-mai-soci
<引用終わり>
以前、歩行者を車道に追いやる自転車の恐怖(2月21日) という記事を書いた。その時に引用した記事では、『自転車通行不可の歩道でも実際には自転車が通行しているケースが多いから、自転車によって歩行者が危険に晒されていないか点検する』という趣旨だった。そして、4月末までには点検を終えたいとしていた。その後、点検はどうなったのだろうか。
今回は、その点検うんぬんと関係なく、自転車の取締りを強化するということらしい。
個人的な事情だが、最近家庭の事情で夜間自動車を運転する機会が増えた。また、夜道を歩くことも増えた。そこで怖いのが、無灯火の自転車である。暗くてよく見えないため、気付くと異常に接近していたりする。ライトを点けていれば、ある程度離れていても気付くことができ、適切に対処することができるのだが。無灯火で自転車に乗っている人は、自分は相手が見えているから平気だと思っているのかもしれないが、自転車のライトは、相手にも気付かせることに意味があるのだ。無灯火で乗るほどの人に、そんな配慮を期待する方が無駄だ。何しろ、マナー以前にルールを守っていないのだから。
また、歩道は基本的に歩行者のためのものである。「自転車通行可」という標識があっても、自転車は車道側の半分しか走行してはいけない。また、歩行者の歩行を妨げる可能性のあるときは、降りて通行しなければならない。これもルールである。
自転車に恨みでもあるのか、と言われそうだが、率直に言って恨みがある。今から十年近く前の夜、駅から自宅への帰り道の狭い歩道で、暗がりからいきなり現れた、若い女の乗った自転車のハンドルが突然私の左肘を直撃した。無灯火だったので気付くのが遅れたためだ。仮にライトが点いていたら、もっと早く気付いて車道に逃げる(!)なり、持っていたカバンで防御するなりの体制が取れたかもしれない(今は、対向する自転車に気付いた時点で防御体勢を取っているが)。しかし当然無灯火だったし、ライトを点けるほどの人なら、あのような狭い歩道を暴走したりはしないだろう。そして当然その女は逃げ去った。無灯火で、「自転車通行可」でない歩道を走行した上に、歩行者に衝突するという三つの罪を犯した女は、今夜もまた、無灯火で自転車に乗って歩行者を恐怖に陥れていることだろう、何の罪の認識もなく。
その当時住んでいたKO線S塚駅の周辺は放置自転車が凄まじかった。今はどうなっているか知らないが。駅前のショッピングモールには、車椅子などのためのスロープが設けられていた。そのスロープも自転車に占拠され、車椅子は通れない有様だった。当時1歳の子供をベビーカーに乗せて、何とかそのスロープを通っていた目の前に、いい年をしたオヤジが自転車を止めようとしていやがった。その自転車に止められると、こちらのベビーカーはもはや前進できない。腹に据えかねて、「ここは車椅子のためのスロープだ、自転車を止めるのはやめなさい」と注意したところ、そのオヤジは「だって、みんな止めてんだもん」ときたもんだ。いい年をした恐らく五十台後半からのオヤジが「だって、みんな止めてるんだもん」だぁ~? で、結局止めやがった。こちらは途中まで上ってきたスロープを引き返し、ベビーカーを抱えて階段を上る羽目に陥ったのである。
しかし、これはマナーの問題である。つまり、法律で規制されていないのだ。違反しても、今だったら逆ギレされて半死半生の目に遭うのを覚悟でお願いするしか、対抗手段がない。今だったら条例で一部の地域での駐輪が禁止されている自治体もある。その場合はルール違反として対処できる。しかし、あのモールの場合、私有地内だから仮に条例があっても手立てがない。
現在住んでいるT営地下鉄沿線の隣の駅では、条例と地下駐輪場建設の効果か、駅前の放置自転車が一掃された。おかげで実に広い歩道が歩行者に開放された、はずだった。しかしその広い歩道を、自転車が我が物顔に、猛スピードで暴走するようになった。老若男女関わらず。おかげで歩行者は、常に前後左右に気をつけて歩かなければならなくなった。また、ひったくり犯にとっても、格好の狩場ができたようなものだ。
自転車のルールの存在すら知らないような人に、走れる場所だけ提供すると良い結果は生まれない。
本当に取締りを強化するつもりがあるのかどうか知らないが(警察官も自転車のルール知らないし)、赤切符を切って犯罪者を増やすのではなく、自転車のルールを周知させることがまず必要だ。その点に関しては、今まで何もなされていなかったことが腹立たしいが、是非進めて欲しい。だから、よほど悪質なもの以外には違反者に注意を促す「指導警告票」を交付して、自らが法律違反を犯したことを気付かせるのが先決だろう。今まで、例えば目の前の無灯火や傘差し運転の自転車を注意する警官すら一度も見たことはないが、これからは少しはまともに取り組んで欲しい。
前回と同じことを繰り返す。自転車に乗る人に、マナーを守ってくださいなどと余りにも過大な要求をするのはするだけ無駄だからしないが、せめてルールだけは守ってください。でないと、違法自転車取締りを口実に、警察が生活の隅々まで目を光らせる監視社会になるという心配もある。
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