オススメ最新作(※ネタバレあり)
こーれーは!令和の世で新たな名作の誕生ですね。
こんだけ王道のラブストーリーを手放しで「好きだ!」と言う日が来るとは…。
めっちゃオススメです。
最近の「邦画のラブストーリー」といわれて想起するようなキラキラ系映画とは思うなかれ。
作品選びからして「演技者」の道をゆく有村架純×菅田将暉の競演、人と物語を手堅く観客に届ける土井裕泰監督の演出、そして何より坂元裕二の脚本に詰まった魅力的な価値観やセリフの数々。
はい、質の高い映画、一丁出来上がりです。
あー、良い映画観たー。
『花束みたいな恋をした』
(2021)
久しぶりの更新になってしまいました。
『テネット』公開時からここまで、いい作品やブログを書きたい作品はあったんですが、なかなか時間が取れずご無沙汰になってしまいました。
あの令和のモンスター級映画『鬼滅の刃』の連続一位を破って首位の座についてから、なんと4週連続一位を獲得している本作。
若い人を中心にSNSでバズったり、クチコミで広がったり、ロケ地巡りも流行っているそうです。
(確かに巡りたくなる気持ち、分かりますw)
※ここから先はネタバレになってる箇所もありますので、未見の方はご注意下さい。
邦画でラブストーリーを謳う作品を普段からモチベーション高く観ようとはしていない(物語の中に恋愛があるというのを観ることが多い)ので、正直予告編を観た段階では期待値が低かったのもあるんですが、蓋を開けてみたらこれがまぁ面白かった。
「東京の風景」と「サブカル」と「坂元裕二作の市井の人でも口にしたくなるセリフ達」を通して一組の男女の恋愛の始まりと終わりが描かれていますが、その細かいところを取っ払ってしまえば、とっても普遍的な男女の心の交流とすれ違いが作品の真ん中にあるような気がします。
(坂元裕二はトレンドに合わせてその”細かいところ”を取り替えられる技術を持っているので、『東京ラブストーリー』から今作まで、いろんな年代で名作恋愛モノを生み出せているんでしょうね)
結構いろんな人が「あーこんな恋愛してみたいなぁ」「覚えがあるなぁ」「羨ましいなぁ」と感情移入できるので、自分も含めて多くの世代が観られる作品だと思います。
結構最初からこの作品を対象外!ってしてる人も多いと思うんですw
なので、自分みたいなそれなりに歳重ねた男でも面白いと思えたことをこういったブログで表明することで、「おや、意外と観てるのもアリか?」と思ってもらえれば幸いです(^^)
坂元裕二も映画のプロモーションの中で言っていますが、本作は主人公ふたりの日記のような形式になっています。
自己紹介から始まり、細やかな価値観や自分の好き嫌い、日付や起こったこと、そしてその瞬間その瞬間で思ったことや感じたことをモノローグで観客に提示してくれます。
その仕掛けによって「こんな場面でこんな事を思っている」というのを具に描き出せているので、ここまで多くの観客の心を掴む作品になっているのではないでしょうか。
(ここまで「日記」の体をなした作品って意外と珍しいですよね?パッと出てくるのは『(500)日のサマー』とかですかね)
前振りが長くなりましたが、そろそろ作品の内容についてご紹介していきましょう♪
白状しますと、ワタクシ、最後泣きました(笑)
しかも菅田将暉演じる麦の涙に誘われてホロッとしてしまいました。
なので、大いに肩入れしてご紹介している部分はあると思いますので、悪しからず(笑)
「きっかけは、有村架純と菅田将暉だった──」
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■『花束みたいな恋をした』あらすじ
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東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った 山音麦(菅田将暉)と 八谷絹(有村架純)。
好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。
近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。
まばゆいほどの煌めきと、胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。
最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!
──これはきっと、私たちの物語。
(映画『花束みたいな恋をした』公式サイトより)
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■京王線沿い版LA LA LAND?
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これはネタバレにも近いのですが、本作は『LA LA LAND』と近い系統の作品になります。
(『LA LA LAND』を劇場で13回観た自分がこの作品にハマったのも自明のことですね…)
理想と現実
恋愛と社会
恋愛と恋愛
そんなそれぞれの価値観の間で翻弄される男女を描いた傑作でした。
恋愛も夢もそれぞれ体力も時間も奪われるものだから、どちらも成立させるというのことが難しい───だからこそどういう選択をするのかといったところにドラマが生まれますよね。
その2つの対立を描いたドラマが多い、またその中でも傑作が多いのも頷けます。
そして、登場人物がほぼふたりのみ。
これも両作品に共通していることですね。
もちろんキャスティングとして多数の役者さんが出てるんですが、映画の8〜9割が主役ふたりを映し出しており、彼らの主眼で物語が進んでいくので、他のキャラクターに起こっていることや背景や考えていることなどは基本出てきません。
そこも作品の没入感を高めている要因かと思います(^^)
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■市井の人でも口にしたくなる・できるセリフ達
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坂元裕二さんの台詞って、役者がすごく言いたくなりそう or 言いやすそうだなーと思います。
役を演じる以外に格好つける事を求められない台詞とでも言いましょうか。
飾ってるようで飾ってない感じ(いや、飾ってないようで飾ってる感じ?)とでも言いましょうか。
地上から3mm浮いた(浮き足立った)時に言えるセリフとでも言いましょうか。
- ダメ、まだ昨日の夜を上書きしないで
- (相手との相性について語る中で)お店のポイントカードならもうとっくに貯まってるわけで
- こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です
- はじまりはおわりのはじまり
他にも面白い価値観が描かれたセリフだったり…
- カラオケ屋に見えないカラオケ屋にいるのは大抵IT成功者の顔をしたマイルドヤンキーで…
- カラオケ屋に見えるカラオケ屋に行きたいです
- 夜景見て「きゃー綺麗」っていう人苦手なんだよね
- 猫に名前をつけるのは最も尊いこと
- じゃんけんで紙が石に勝つっておかしくないですか?
生々しくて心に刺さるのは麦と絹が終わりに向かっていく中のセリフだったり…
- またかとは思うよまたかだから!
- 面倒くさいって顔しないでよ…
- もう俺も今村夏子さんの「ピクニック」を読んでも何も感じないかもしれない
- またハードル下げるの?
どれが印象的だったかだけでも、観終わった後たくさん話せる映画です(^^)
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■有村架純と菅田将暉
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冒頭の方でも書きましたが、最初この映画のモチベーションはそんな高くなかったんですが、それでも観ようと思っていたのは何より主演の二人が理由です。
役者として大好きな二人なので、今作も見逃すわけにはいかないな、と♪
この映画、多くの男女にこんな恋愛したい!と思わせる(あの三浦しをんをもってして、「記憶を捏造してでも、自分もかつてこういう恋をしたことにしよう」と言わしめる)作品になっているんですが、それはやはり台詞や価値観とそれを体現した主役ふたりの功績が大きいと思います。
個人的な役者さんの好みって、その人がどんな作品に選ばれたか、どういう作品選びをしたか(どういうキャリアを築こうとしてるか)で結構決めてたりします。
有村架純は『ひよっこ』『SPEC』『3月のライオン』『関ヶ原』『かぞくいろ』『女子ーズ』『アイアムアヒーロー』『有村架純の撮休』『るろうに剣心』最新作に出演していたり、様々な監督や脚本家から愛される女優さんだというのが好きな理由です。
菅田将暉は『帝一の國』『3年A組』で、それまでただの若手俳優の一人だったのがガラっと印象が変わりました。
他にも『セトウツミ』『アルキメデスの大戦』『dele』『MIU404』の出演も自分の中ではすごくいいなぁと思った作品達でした。
いろんな作品の制作裏話やインタビューを見ていると、現時点ですでに作品のゼロイチのところから関われる俳優さんになっているところもとっても好きな理由です。
ふたりが付き合うまでの過程や付き合ってからの楽しい日々の表現も素晴らしく、観ている方もとっても楽しい気持ちになるんですが、それより何より徐々に倦怠期に入り気持ちが離れていっている期間のコミュニケーションを取らない・取れない時の表情や二人の空気感、気まずい瞬間の次に発するセリフのトーンがとっても観客の心を刺しにきてる感じがします(笑)
めっちゃ自然体でこの作品の中に存在できていて、もはやふたりのコンビ芸みたいです。
これからも楽しみな役者さんたちです!
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■個人的に気になったこと
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・そのドライヤー、アリ?ナシ?
出会って最初の日に髪をドライヤーで乾かすのはデリカシー的にというか距離の詰め方的にアリナシは分かれるところな気がします(笑)
結構賭けな気がします。
・卯内さん、なに言おうとしたん?
あの明大前の居酒屋で卯内さんが麦に何を話そうとしたのか、麦はどういうやり取りをして絹のもとに向かったのか?気になりました。
卯内さんの声かけの後すぐ次のシーンで絹を追いかける麦の場面に転換していて、あれ?なんでこういう編集になってるんだろうと不思議に思いました。
・オダジョー演じるイベント会社社長のあのシーン、怖くないデスカ?
これは「東京の怖い面」として挿入されたシーンなのかもしれませんが、ある時イベントの打ち上げの流れで絹が気付いたらオダジョー演じる社長の膝元で寝てたというシーン。
あれ、特に前後深掘られてないですが、お酒に何か盛られたとも取れなくないシーンですよね。
あそこだけ強烈な違和感というか、ちょっとゾッとしたものを感じました。
これらの違和感も含めて、丸ごと作品として評価してるのでちょっと気になった程度ではあるんですけどね、好きだからこそ言わずにいられない感じです(笑)(恋愛と一緒…w)
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■あとがき
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主人公ふたりは21歳〜26歳頃なので、そこの年代(20代)に刺さる作品と思われるかもしれませんが、実はその辺りも一通り経験して30歳前後〜30代前半の人たちに一番刺さるんじゃないかと思っていたりします。
もちろん冒頭に述べた通り多くの世代が楽しめる作品だと思います♪
やっぱり出会いから付き合うまでの過程や、恋人同士に発展してからの初期などは観ていてとても気分が上がりましたし、かくいう自分も、主人公二人のように帰り道に待ち合わせて家まで歩く時間の楽しさとかを思い出したりしました。
誰かと恋愛に落ちる時の、相手と同化していく感覚。
価値観が同じ、同じ笑うツボが同じ、好きな作品の好きなところが同じetc.
でもそうやって同化していくと、今度は反比例するように違う部分が目立ってくる。
その違う部分をどう埋めるか、埋められるか、埋めなくても済むかなどでカップルや人によって進む道が変わってくるような気がします。
前述の通りそこにドラマが生まれるわけですが、本作のドラマはとっても楽しめる上に観終わったあといろんな話ができるものになっていると思います。
そして映画の後味もとてもよくて、なんならその”後味”のところが一番爽やかかもしれない。
別れた後の方が、ある種の緊張感から解放されてスッキリいろいろ本音を話せたり楽しめたりすることもあるのでは?というのは本作の麦&絹を観て思ったところです。
(この辺りの「別れた男女・男女の別れ方」の描き方は、最高の離婚で素晴らしい物語やキャラクターを生み出した坂元さんの本領発揮という言ったところでしょうか)
まぁなんにせよ、ひと組の男女の付き合ってから別れるまでの5年間をこれだけ何も端折らずに、正面から描き切ったことに賞賛の拍手を贈りたいです!
コロナ禍だろうがなんだろうが、良い作品は生まれるし、ちゃんと観てる人がいます。
本作が観客の心を掴んで実績を残していることが何よりその証拠ですね。
あと、内容ももちろんのこと、映画本編やエンドロールなどに出てくるイラストの可愛さや、大友良英さんの”等身大”な音楽、ポップカルチャーの固有名詞が飛び交う様などいろんな楽しむポイントがある映画です。
是非劇場で花束みたいな恋模様にどっぷり浸かり、それが枯れゆく様──でも、振り返って思うのはとても綺麗だったと思えるその様を堪能していただければと思います♪
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■予告編
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