【梟】 | シネフィル倶楽部

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洋邦ジャンル問わず最新作から過去の名作まで色んな作品ついて、ライトな感想や様々な解釈・評論を掲載orつらつらと私「どい」こと井戸陽介の感想を書く場にしたいと思います!観ようと思ってる作品、観たい過去の作品を探す時とかの参考書みたいに活用してもらえればと♪

NEWオススメ最新作(※ネタバレあり)

 

いんやーーー、ナニコレ。すんごい面白い。

 

既に今年のベストに入りそうな予感がしております。

 

実際にあった王族の不審死という史実を題材に、起こった事はそのままに、でも史実に残っていない谷間や空白をフィクションで埋めていく形で語られるサスペンススリラー。

 

"盲目"の主人公がある殺人を"目撃"してしまうことから始まる戦慄の一夜を、絶妙な緊張感と人間ドラマで描き出しています。

 

本作、暗がりが主戦場となる映画です。

 

それ故に、だからこそ、光量のある部屋で・テレビで、もしくは日常でスマホなんかで観たら勿体無い

 

映画館で観ないと!

 

『올빼미 / The Night Owl』

[邦題:梟 -フクロウ-]

(2024)

 

予告を観ても展開が分からなかったのと、映画が始まってしばらく「え?これはどゆこと?」という描写がいくつか続き、最後まで観客を惹きつける作品です。

 

どゆこと?と思った箇所は映画が進むつれ、ちゃんと明らかになっていきます。

 

その明らかになっていく過程が、まぁ巧い

 

 

本作のように史実とフィクションを絶妙に組み合わせるっていう取り組みをした作品、昔から好きなんですよねー。

 

『終戦のローレライ』『アルキメデスの大戦』『GOEMON』などなど。

 

本作もその系譜に位置する企画です。

 

「……!!」

 

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■『梟』あらすじ

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盲目の天才鍼師ギョンスは、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。

 

しかし、ある夜、王の子の死を“目撃” し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。

 

見えない男は、常闇に何を見たのか?

 

追われる身となったギョンスは、制御不能な狂気が迫る中、昼夜に隠された謎を暴くために闇夜を駆ける―──絶望までのタイムリミットは、朝日が昇るまで

 

 

映画『梟』公式サイトより)

 

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■全体評

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宮廷を舞台にしたサスペンス・スリラーの一級品

 

息を呑む不穏な空気と観客を和ませるコミカルなシーンなどのバランスも好きでした!

(⚫︎役の⚫︎さん、良い演技してるわぁ)

 

歴史モノで宮廷が舞台で───ってことは冒頭から重い空気や厳かな感じか?と身構えていましたが、それこそオープニング明けくらいから和やかでコミカルなシーンがありました。

 

主人公が宮廷に登用され馴染んでいく様と相まって、この映画の物語にスッと入っていくことができました。

 

 

前半は物語タネを撒きつつ、この映画の大事なところを知らずに観ると要所要所で「ん?」という違和感を感じさせがら映画が進んでいきます。

 

そして、主人公が王の家族と心を通わせたシーンの後から、いよいよ事件の一夜を描いた緊張感の高い後半まで一気に突き進んでいきます。

 

予告を観て「タイムリミットは夜明け」というのが、一体どういう展開なんだろう?と思いましたが、観て納得。

 

 

 

 

 

↓↓↓ここからネタバレあり↓↓↓

 

 

 

 

 

 

本作最大のキーとなるのが、主人公が「昼盲症」であるということ。

 

明るく光のあるところだと視えないけど、暗がりの中だと少し視えるというもの。

(恥ずかしながら今回はじめてそういう病があることを知りました)

 

この主人公の設定が、まぁこの物語にうまく活きまてるんです…!

 

絶妙なところで光が入り・消える、主人公が視える・視えないが切り替わる。

 

それだけでもなかなかハラハラするんですが、主人公は自分が少し視えるという事を隠して宮廷に登用されており、それ故に重宝されているのです。

だから目撃したこと自体を言えない訳ですね。

 

 

少し視える。

視えるけど、視えてることを言えない。

 

視えないハラハラ。

視えるけど言えないハラハラ。

 

観客は映画が終わるまでこの二重苦の狭間から抜け出せません。

 

視えるのに言えない───そんな人が事件の真相を目撃して時に何が起こるか?

 

そこにこの映画の旨味が凝縮されています。

 

 

そして、それだけでなく、サスペンスとして秀逸だなぁと思うのが、政治サスペンスの側面も取り入れることで、驚きの真相や二転三転する展開を作り出していること。

 

これにより、旨味倍増。

エンドロールまで物語に釘付けでした。

 

 

あと、主人公の人物像がいいですね。

 

市井の人であり身の丈に合う生活をする人で、真っ当な弱さがあります。

そんな彼がある心境の変化を経て決意した後に見せる強さが非常に説得力あります。

 

その演出や脚本もいいんですよー。

 

主人公が世子の息子である王子に真実と本音を打ち明けるところ。

 

好きなシーンです

 

 

あそこで英雄然としては振る舞えず、やはり保身に走る主人公の気持ちは非常に伝わるものがあり、それ故にその後の行動に説得力が出ました。

 

またそのさらに伏線となる世子とのやり取りが良かったですね。

 

実質的に主人公と世子がしっかり話すのはこの一回なのですが、それでもしっかり説得力があり、伏線としてバッチリ機能しています

 

その心境変化と決意に影響する大事なシーンになってました。

 

「いつまでも見て見ぬをするのか?」

 

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■あとがき

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オチも含めて非常に好きな作品です。

 

大好きな時代劇作品のひとつ、『隠し剣 鬼の爪』の後味に近いかもしれません。

 

公開当初から劇場も満席に近かったですし、満足度の高い作品ですので、その質に見合う興行になってくれることを願うばかりです!

 

 

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■予告編

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