695.蜃気楼のように
あるレッスンをしていた時に感じたこと。その生徒の演奏は決して悪くはなく、美しい響きでショパンが演奏されていた。ふと思って指先と鍵盤の関係を変えさせたところ、要するにほんの少しだけタッチを変えたのだが、それまでよりも、より美しく多彩に楽器が鳴り出した。楽器の横から聴いている私には、響きが天井まで膨らみ、まるで蜃気楼でも見ているかと思わせるほどだった。蜃気楼は目の錯覚かもしれないが、そのような想像性を彷彿させてくれる演奏は、世の中にいくらでもあるようで実はなかなかないと思う。(残念ながら、私の楽器で私の生徒ではない人が演奏すると響きは天井には舞い上がらず、横にいる私を直撃するような横にしか響かないことが多いが。)響きが天井まで広がることは、音楽の持つエネルギーと響きの持つエネルギーが合致した瞬間に生まれる奇跡に他ならない。ピアノという楽器の持つ性能を存分に発揮した演奏だから実現可能な領域。ピアノという楽器の本当の扱い方を知ることに終わりはない。にほんブログ村