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高すぎる宿泊費

 

――鹿島市・松尾市長との面談。
――長崎・郊外の研究施設にて矢野教授との面談、および施設視察。

プリンターから出てきた「西九州出張旅程表」を手に、大杉主任が胸を張って天野次長のデスクにやって来た。

「我ながら、完璧な出来映え」と大杉主任が低い声でつぶやく。

「確かに……短時間で、よくここまで調整できたわね」
旅程表を眺めながら、天野次長も感心したようにつぶやく。

「大杉主任のサポートのおかげで・す・よ!」――と、自ら言い放つ大杉主任。
「もっと褒めてもいいんですよ? 私、ほめられて伸びるタイプなので。次長は“ほめ”が足りないんですよ」

 



「あなたは、褒めると調子に乗りすぎるタイプだから…」

「これが世にいう令和の“ほめ”不足。なんちゃって」

「ほら……やっぱり調子に乗るじゃない」

天野はくすっと笑い、旅程表を手に千﨑部長のもとへ向かった。

「たった一日で、よくここまで調整できましたね……」
旅程表に目を通しながら、千﨑部長が感心したように言う。

だが、その視線が欄外に移った瞬間、眉間にしわが寄った。

 



「……で、この“佐賀の宿泊費”という欄。数字が一桁、多いような気がしますが?」

「……はあ。伊達木社長のご紹介で、今さら断ることもできず……」

「二人分の料金でも高いと思いましたが……まさかの“一人当たり”ですな、この料金」

「……はい」
 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

開けた視界

 


「……あった。エンヨウ漁業協同組合 主査・宮沢幸正」

「宮沢さん……あ! 西日本魚市で“サバしゃぶ”をご馳走してくれた方ですよね?」

「そう。確かあのとき……長崎海洋大学の客員教授やってるって話、してなかった?」

「してましたしてました!」

天野は即座に名刺の番号に発信した。

「はい、宮沢です」

 



「あっ、宮沢さん! ご無沙汰しています。大阪OBCの天野です」

「おや、天野さん。お久しぶりですね。どうされました?」

「実は、来月の中ごろに長崎へ伺う予定がありまして……“ながさきオーシャン・エコノミー”について、何か情報いただけないかとお電話を…」

「ご存じも何も、“ながさきオーシャン・エコノミー”は長崎海洋大学の矢野教授が中心になって動かしているプロジェクトですよ。私たちも技術面でがっつり協力しています」

「えっ! そうだったんですか! それなら……急で申し訳ないのですが、矢野教授とお会いする機会、作っていただけないでしょうか?」

「矢野先生なら、新長崎漁港の近くにある研究施設にだいたいいらっしゃってるはずです。携帯に電話してみますね」

「ありがとうございます! 本当に助かります」

受話器を置いた瞬間、天野の胸に“視界が一気に開けた”ような感覚が広がった。
これまで曇っていた空に、陽光が差し込むように。

 



そして翌日の午前中は、驚くほどスムーズに、すべてが決まっていった。

 

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ひらめきは雑談の中に


退社時刻が近づいていたが、天野はまだ「ながさきオーシャン・エコノミー」へのアプローチの糸口をつかめずにいた。
頼みの「ながさき地域戦略研究所」の亀田主任調査役は韓国出張中で、来週まで帰国しない。
“ながさき漁業協同センター”の上田さんも伝手はなく、他に紹介してくれそうな人物も思い当たらない。

机の上の資料を見つめながら、指先でペンを回していると――

「サバしゃぶ〜♬ サバしゃぶ〜♬」

 



またしても、能天気な声が後ろから近づいてきた。大杉主任である。

「……残念でした。伊達木社長は上海出張中。サバしゃぶは、お流れです」

「え〜! じゃあ……せめてアジフライだけでもお願いします、お奉行様〜」

「今回、“アジフライの聖地”にも行けませんっ」



「ええーっ。“お魚マルシェ”の名が泣きますぜ、旦那!」

「ふざけてる場合……待って。ちょっと待ってよ」

天野の声色が急に変わった。
背筋を伸ばし、名刺フォルダーを手に取る。
パラパラとページをめくる指が、ある一点で止まった。

視線の先にあったのは――これまで忘れていた、ある人物の名刺。

 

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鹿島市への糸口

 

「鹿島市? ああ、佐賀の?」

 

 

 

「はい。新幹線関係の影響調査で行こうと思ってるんですが、まったく伝手がなくて……」

 

「あら、それなら――市長をご紹介しましょうか?」

 

「えっ、市長ですか!?」

 

「ええ。松尾市長。私よりだいぶ年上ですが、実は長崎海洋大学 水産学部の先輩でして。昔からの知り合いで、いまでもたまに飲んでる仲なんですよ」

 

「松尾市長って、水産学部のご出身なんですか?」

 

「そうなんです。鹿島市出身で、地元に戻って市政に関わるようになって……」

 

「それはぜひ! お取次ぎ、お願いできますか?」

 

「もちろん。すぐ連絡とってみますね」

 

「ありがとうございます!」

 

通話を切った直後、スマートフォンが軽やかな通知音を立てた。

画面には「伊達木社長」の名前。

 

開いてみると、添付されていたのは二件の宿泊予約明細の写真。

ひとつは、前回も泊まったホテル・インディゴ長崎。

そしてもうひとつは――

 

「……“御宿 富久千代”?」

 

住所は佐賀県鹿島市、肥前浜宿。

 

天野はゆっくりと背もたれに体を預け、思わず口元を緩めた。

 

「……鹿島市、か。偶然……なのかな」

 

次の瞬間、姿勢を前に乗り出す。

「宿泊料金、ひとり、な・な・な……」 言葉が途中で止まった。

 

窓の外では、夕暮れの空がほんのりと茜色に染まっている。

その色を見つめながら、天野は心の中でつぶやいた。

 

 

――今さら、断れないわよ。今さら。

 

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海の経済と、つながらない糸

 

さて、お次は「ながさきオーシャン・エコノミー」の調査である。

天野はデスクの上に一枚の名刺を置き、その文字を目で追いながら携帯電話をかけていた。

 

「はい、ながさき地域戦略研究所です」

 

「大阪ビジネスコンサルタントの天野と申しますが、亀田主任調査役はいらっしゃいますか?」

 

「あいにく、亀田は今週いっぱい韓国に出張しておりまして、出社は来週からとなっております」

 

「わかりました。いえ、またこちらからお掛けしますので、結構です」

 

通話を終えると、軽くため息。

「困ったなぁ。“ながさきオーシャン・エコノミー”のアポは、亀田主任を当てにしてたのになぁ」

 

 

午後の光が少し傾き始めたころ、天野はもう一本、電話を取った。

相手は、前回の長崎出張で世話になった“ながさき漁業協同センター”の上田さんだ。

 

「はい、ながさき漁業協同センターの上田です」

 

 

「あ、上田さん。ご無沙汰しています、大阪OBCの天野です」

 

「あら! 天野次長。お久しぶり。弟さんから聞きましたよ、前回の長崎訪問は、その後“トンデモない展開”だったとか?」

 

「はは……大人の大遠足でした。楽しかったですよ」

 

「そりゃ何より!」

 

朗らかな笑いのあと、天野は少し声を落として本題に入った。

 

「今日はお願いがありまして。10月中旬に、長崎と佐賀の鹿島市へ出張予定なんですが、“ながさきオーシャン・エコノミー”関連の施設を見学できないかと思いまして」

 

「“ながさきオーシャン・エコノミー”ねえ。話には聞いてますけど、うちは漁協ですから、直接は関わってないんですよ。あれは、どちらかというと大学とか研究機関の領域ですね」

 

「そうですか……ちょっと残念です」

 

「お力になれず、すみません」

 

「いえ、とんでもないです。逆に、鹿島市について、何かご存知ないですか?」

天野の声には、転んでもただでは起きない、いい意味でのしつこさが宿っていた。

 

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候補地は一択

 

その日の午後。

外から差し込む秋の陽光が、書類の白い紙面をやわらかく照らしていた。

オフィスは電話の音もなく、静かに時間が流れている。

 

「天野次長〜。こんなん出ましたけど」

 

ご陽気な声とともに現れたのは、大杉主任。手には数枚の紙が揺れている。

 

「何それ?」

 

「ネット記事をプリントしてみました。調査対象の候補地、三件です!」

 

勢いよく広げられた資料が、天野の机の上に小さな風を起こした。

 

「まず一枚目は、『 嬉野温泉駅 』周辺。開業後、観光客がぐっと増えて地元が潤ってるって話です」

 

「ふむ」

 

「二枚目は『 武雄温泉駅 』。こちらも乗り換えターミナルとして脚光を浴びて、新しい商業施設ができたそうです」

 

「なるほど」

 

「そして……最後がこれ。『 鹿島市 』。新幹線が通らなかったせいで、在来線の特急が大幅減便。アクセスが悪化して、観光業や通勤通学に影響が出てるって……かなり深刻です」

 

 

天野は、鹿島市の資料をじっと見つめた。

文字だけでなく、その向こうに広がる駅前通りや人々の表情まで、頭の中で描いてしまう。

 

「……こりゃ、“鹿島市”の一択ですね」

 

「はい、そう思います」

 

大杉の答えは短く、それでいて口元に浮かぶ得意げな笑みを隠しきれない。

 

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20.9km!(前回比+1km)

 

燃費をCB650R E-clutch の購入判断項目にする方はあまりいらっしゃらないかと思いますが、ご参考までに私の最近のケースをご紹介します。

若干、走りが日和ましたかね。まあ誤算の範囲かもしれません。

 

カタログ値:WMTCモード:21.3km/ℓ

私の平均燃費は今のところ20.9km/ℓ

ちなみに、油種はレギュラーです。

 

 

 

 

 

以下、前回2025年3月12日のご報告です。(ご参考)

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19.9km!

 

燃費をCB650R E-clutch の購入判断項目にする方はあまりいらっしゃらないかと思いますが、ご参考までに私のケースをご紹介します。

 

カタログ値:WMTCモード:21.3km/ℓ

私の平均燃費は今のところ19.9km/ℓ

ちなみに、油種はレギュラーです。

 

 

バイクライフにかかるメンテ費、用品、ウェアなどは切り詰めておりますがガソリン代だけはどうにもなりませぬ。

 

 

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サバしゃぶの誘惑

 

会議が終わるやいなや、大杉主任が待ってましたとばかりに天野次長の隣へすり寄ってきた。

 

「サバしゃぶ〜♬ サバしゃぶ〜♬」

 

 

「……気持ちは分かるけど、スケジュール的にタイトかもしれないから、約束はできないわよ」

 

「え〜、伊達木社長との約束、忘れたんですか? “次に来たらサバしゃぶ食べさせてあげる”って!」

 

「伊達木社長も、そうそう暇じゃないし、いつも長崎にいらっしゃるとは限らないのよ。それより、大杉さん。佐賀県内で新幹線の影響を受けていそうな町を、二、三カ所ピックアップしてくれる?」

 

「了解ですっ!」

 

――と返事を残して、大杉はデスクへ。

その横で、天野次長は迷いなくスマートフォンを手に取り、連絡先リストから「伊達木社長」の名前をタップした。

呼び出し音が続く間、自然と背筋が伸びる。

 

「……はい、伊達木です」

 

「伊達木社長、ご無沙汰しております。大阪OBCの天野です」

 

「あら、めずらしい。天野さんが自分から電話かけてくるなんて、台風でも来るんじゃない?」

 

 

「あはは。実は10月中旬に、佐賀と長崎に出張がありまして。大杉と私の二人で行くんですけども、もし長崎にいらっしゃれば、お目にかかれないかと思いまして」

 

「10月中旬ねぇ……あー……ダメだわ、ごめんなさい。その時期、上海。浦東のフォレスト・タワーでイベント出席が入ってるの」

 

 

「……残念ですねぇ。こちらは、長崎と佐賀、それぞれ一泊ずつする予定です」

 

「それなら、長崎はインディゴを押さえてあげる。でも、シーズンだから空いてるかな~。佐賀はうちの系列がないから……あ、そうだ! 私のプライベートの定宿を紹介してあげるわ」

 

「ええ、ぜひ」

 

「“富久千代”っていう宿。銘酒“鍋島”で有名な酒蔵の奥様がやってるの。小さいけど、日本酒に合う料理が絶品よ」

 

「それは楽しみです。ありがとうございます」

 

「それじゃ、予約できるか、できないか確認してまた連絡するわ。……あ、大杉ちゃんにもよろしくね〜」

 

「はい。伝えておきます」

 

通話が切れると同時に、天野次長は「やっぱり、緊張するわっ。ホント」と呟いて、ひとつ深く息をついた。

 

「……さて、調査ルートを組むか」天野次長はまた、ひとり呟いた。

 

独りごちたその声は、どこか嬉しそうだった。

 

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新幹線が運んできたチャンス

 

9月も下旬となり、ようやく夏の暑さも収まってきた。

週明け恒例の案件ミーティングが静かに始まる。

 

一通りの報告が終わったところで、千﨑部長が姿勢を正した。

 

「ひとつ、私から。国からの委託調査案件が来ています。テーマは――西九州新幹線開業後の、関係自治体への影響調査です。

ただ、本格的な広域調査ではありません。ピンポイント調査で構わないとのこと。イメージとしては佐賀県内を中心に……どなたか、担当してくれませんか?」

 

短い沈黙。だが次の瞬間、天野次長が手を挙げた。

 

「私が、担当します。」

 

語尾は落ち着いていて、迷いがない。

 

「前回の長崎出張で西九州新幹線には実際に乗りましたし、非常に興味のあるテーマです。」

 

「……なるほど。では天野次長にお願いしましょう。補佐は――大杉主任でよろしいですか?」

 

「もちろんですっ!」と、大杉主任が即座に答えた。

 

 

そして、少し間を置いてから笑顔で付け足す。

 

「逆に私からも部長にお願いがあるんですが……せっかく西九州に出張するなら、長崎まで足を延ばして、前にご報告した“ながさきオーシャン・エコノミー”について、実地で見てこようかと思います。よろしいでしょうか?」

 

「……ああ、魚の陸上養殖とかの話だったね?」と千﨑部長が思い出しながら頷く。

 

「はい。今、企画を進めている『長崎お魚マルシェ』にも関わってくる可能性がありますし、百聞は一見にしかず、です。」

 

「わかりました。佐賀一泊、長崎一泊。訪問先の調整やアポはご自身でお願いします。」

 

「承知しました。」

 

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『事実は小説より奇なり』

 

「本日はお忙しい中、ありがとうございました」

俺と赤木さんは、校舎の“くまの窓”を開けて見送ってくれる御上校長に、会釈をして「神山まるごと高専」をあとにした。

 



阿波経済研究所で赤木さんを下ろし、俺は大阪に向かってハンドルを切った。

途中、サービスエリアで車を停めて、千﨑部長に電話をかける。

「『事実は小説より奇なり』──まさに、それでしたよ」

電話越しの千﨑部長が、楽しげに言った。

 



「『神山まるごと高専』で、これから何が起きるか。絶対に注目ですね、山本副部長」


「……そのとおりです」



そう言って、俺は静かに電話を切った。

 

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