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cb650r-eのブログ

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手加減というものを知らないやつ…。

 

8月30日、土曜日のK-1。
YAMAHA R1に跨るシータが、K-1の入口でエンジンに火を入れた。
「ピレリのディアブロの実力、見せてもらいましょうか」
還暦間近にしてもなお、挑発的な笑みを浮かべるその姿は若い頃と何も変わらない。

俺も続いてCB650Rを始動させ、シータの背中を追う。
一本目、上り。序盤はなんとか食らいつくが、中盤であっさり突き放され、終盤ではR1の姿すら見えなかった。
二本目の下りに至っては、最初から完全に置いていかれての一人旅。

「相変わらず手加減ってものがないなぁ、シータ」
ヘルメットを脱ぎながら声をかけると、先に休憩所に着いていたシータが、俺のバイクの右後方を眺めていた。


写真の左後ろには上原さんの超カスタムハーレの姿が…


「なに、この乙女チックなFILAバッグは…」
「おっと、またカスタムしちゃいましたけど、何か?」
「カスタムだと? ……だっせぇなぁ、お前ホントに」

そこへ、後から到着したハーレ乗りの上原君(彼も還暦)が笑いながら加わる。
「ハーレ乗りもやりますよ、こういう手作り感のあるカスタム」
「なわけねーだろ!」とシータが突っ込む。

やがて、シータはグローブをはめ直しながら言った。
「今日はここまでだ」
そう言い残し、排気音を残してK-1を下っていった。

時計はもうすぐ正午。じりじりと気温が上がり続けている。
「俺も今日は降りますわ、上原さん。熱中症になりそうで」
そう言って、俺もK-1を後にした。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

 

ロシア料理の名店 Pechka

 

「天野さん、代わって」

電話を受け取ると、柔らかく語りかける。

「千﨑さん? 週末、おふたりをご接待することにしたから――そのお返し、ちゃんと考えといてね」
そう言って電話を切ると、何食わぬ顔でスマホを天野に返した。

「……ありがとうございます」
天野次長が小さく頭を下げる。

その後、伊達木社長は、高速道路に乗るや否や、今度は自分のスマホで電話をかけ始めた。
立て続けに。

「もしもし、久保さん? 今夜、空いてる?」
「ええ、ええ、お願いできそう? お兄さんにもお手伝いお願いできるかしら?」
「じゃあ、ホテルには私の方から連絡しておくから」

次にかけた相手にも、同じように。

「湯村さん、お久しぶりです。今夜、ご予定あります?」
「それじゃあ、6時にインディゴ集合で、楽しみにしておいてくださいね」

ひと通り連絡を終えると、伊達木社長は満足そうに、にっこり笑った。

「……楽しい夜になりそうだわ」

「社長、気になりますって! 何が始まるんですか~?」
大杉主任がじりじりと詰め寄る。

伊達木社長は、少しおどけたように肩をすくめて言った。

 



「わかったわよ、わかった。実はね――昔、長崎に“Pechka”っていう老舗のロシア料理店があったの。2020年に惜しまれつつ閉店しちゃったんだけど」

「Pechka……?」

「ロシア語で“печь”。意味は“暖炉”よ。高級とは少し違うけど、センスが良くて、雰囲気も味も、ほんとに素敵なお店だったの」

「へえ……」

「で、今夜。そのPechkaが――インディゴホテルの中に、一夜限りで“復活”するのよ」

 



「……はあ」
天野次長と大杉主任は、情報量の多さに、まだ理解が追いつかない様子で目を見合わせた。

その表情を見て、伊達木社長は満足げに微笑んだ。
ただ、何かを、確かに動き出させようとしていた。

 

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100年かかってもできないかもしれない。

 

しばらくすると、効きすぎていた車内の冷房がようやく落ち着いてきた。
アルファードの中に、ふわりと穏やかな空気が戻ってくる。

そのタイミングを見計らったように、伊達木社長が、芝居がかった声で切り出した。

「さて――そろそろ、お宅らの“本当の狙い”を教えてもらおうじゃないの」

唐突な問いかけに、大杉主任が肩をすくめる。
が、天野次長は涼しげな声であっさりと答えた。

「はい、伊達木社長のお察しの通りです」

「ふふ、まあそうなるわよね」
伊達木社長は、いたずらっぽく笑いながら、普段のトーンに戻って話を続けた。

「で、長崎市内に飲食ビルでもプロデュースするつもり?」

「いえ、それよりもう少し小規模で、でも地元密着のものを考えています。イメージとしては……金沢の近江町市場みたいな、“おさかなマルシェ”のような感じでしょうか」

 


「ほう。で、それを誰がやるの?」

「うーん……まずは行政に提案してみようかと……」
天野がそう言いかけた瞬間、伊達木社長が語気を強めた。

「それは――絶対やめておいた方がいいわよ。100年かかってもできないかもしれない」

「……たしかに」
天野次長が、少し考え込むように答えた。



ひと息ついたところで、伊達木社長がふっと表情をゆるめる。

「まあ、とりあえず仕事は一区切り。せっかくだし、長崎市内に戻って“美味しいもの”を食べましょうよ」

「そうですね。でも、ずーと美味しいもの続きですけど」

「ヤッホー!」
と、大杉主任が子どものように声を上げた。

その間に、天野次長はスマートフォンを取り出して、本社への報告を始めた。
今日一日の流れと成果、特にCCRCが継続案件として採用されたことは、丁寧に伝える。

通話が終わろうとしたそのとき、伊達木社長がスッと手を伸ばしてきた。

 

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アゴは空を飛ぶ。

 

食事の後、西日本魚市の構内にある施設を見学させてもらった。

見学を終えた後の帰り際、宮沢さんが紙袋を手渡してきた。

「これ、おとなりの平戸市の名産なんです。“あご出汁のもと”です」

「“あご”って、あれですよね。東京で流行ってる“あご出汁ラーメン”の“あご”ですか?」
大杉主任がすぐに反応する。

 



「そうです、そうです」

「……え、大杉さん。“あご”って何の魚か知ってます?」
天野次長がいたずらっぽく尋ねる。

「魚、ですよね……?」

「“とびうお”よ」
と即答する天野に、大杉は目を丸くする。

「とびうお……?」

 



「そうなんです」
と、宮沢さんが補足する。

「長崎には“五島うどん”っていう名物があるんですが、その出汁にも“あご”を使うのが定番なんですよ」

「じゃあ……長崎のラーメンは、“あご出汁”が主流なんですか?」

「いや……長崎市内には、あるにはあると思いますけど、店の名前まではちょっと……。平戸の生月島に1軒あったような……今もやってるのかなぁ」

「えっ、長崎の人って、“あご出汁ラーメン”あまり食べないんですか?」

「どうでしょうねぇ……少なくとも、長崎市内ではそんなにメジャーじゃないかもしれませんねぇ」
宮沢さんが少し考えるように言う。

「……長崎の人の、“さかな”に対する向き合い方、ますます “わ・か・ら・ん”……」
大杉主任は困惑した顔で、テーブルの上を見つめた。

そんなやりとりも笑いに変わり、食後の満足とともに、店をあとにする。

「宮沢さん、本当にお世話になりました」
天野次長が丁寧に頭を下げる。

「いえいえ、こちらこそ。千﨑部長によろしくお伝えくださいね」

手を振って見送る宮沢さんに背を向けて、3人はアルファードへと乗り込んだ。
スライドドアが音もなく閉まり、午後の海風に背中を押されながら、車は静かに動き出した。

 

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季節外れの…。

 

「さて、私から皆さんに、ちょっとしたプレゼントをご用意しました」

食後の余韻に包まれていたテーブルに、宮沢さんの声がふわりと響いた。

「えっ、なんですか?」
天野次長が身を乗り出すように聞く。

「ちょっと季節外れではあるんですが……。こちらの食堂にお願いして、“サバしゃぶ”をご用意しました」

「ラッキー!」
大杉主任が思わず声を上げて、小さく手を叩く。

ほどなくして、カセットコンロと、見事なサバの刺身が運ばれてきた。透明感のある切り身が、皿の上で静かに輝いている。



「真夏にサバしゃぶなんて、私も食べないですけど……」
と伊達木社長が言いながら、一切れをそっと出汁にくぐらせて口に運ぶ。
「ちなみに、つけダレは、長崎の伝統の香酸柑橘「ゆうこう」を使った私のオリジナルです」と宮沢さんがいった。

 



しばらく黙って、噛みしめるように味わってから、ふとつぶやく。

「季節じゃなくても……この旨さ。冬の旬だったらもっと脂がのって……。もっとうまいってこと?」

その言葉に、他の3人も静かに箸を動かす。
出汁の香りがほんのり立ち上り、サバのうまみが広がっていく。

やがて、伊達木社長がぽつりと言った。

「不思議なのよね。どうして長崎の人って、“旬アジ”や“旬サバ”をもっと食べたり、アピールしたりしないのかしら」

 



「ほんとに。不思議ですねぇ」
と大杉主任が相槌を打つ。

そのとき、伊達木社長が宮沢さんの方に向き直った。

「宮沢さん。うちの会社、最近“新領域事業”として、レストラン事業とか、出張シェフのマッチングプラットフォーム――『Premiumシェフ』っていうサービスを始めてるの。今度、改めてご連絡させていただくわ」

「またビジネスしてる……」
と、大杉主任は心の中で小さくつぶやいた。

 

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ブランディングのきっかけ。

 

「実は松浦市では、1997年から『旬サバ』、そして続いて『旬アジ』というブランド作りに本格的に取り組み始めたんですよ」
宮沢さんが続ける。
「きっかけは、当時のサバの豊漁による価格暴落でした。良い魚を適正な価格で流通させるために、“ただ高く売るための名前づけ”からスタートしたんです。でも次第に、漁獲海域・時期・魚種・サイズ・漁法という5つの条件を明確に設定し、商標登録や広報活動によって、しっかりとブランドとして根づかせてきました」

「すごいですね……」と大杉主任が感心する。

 



「地元鉄道の中吊り広告や、シールやステッカー、クリップなどの販促グッズも使って、地域内外への認知拡大を図ってきました」
と宮沢さんが続ける。

「さらに、天然魚の漁獲量が年々減るなか、松浦では養殖マサバ『長崎ハーブ鯖』の開発にも着手したんです。餌の工夫、出荷マニュアルの統一、そして鮮度保持のための迅速な活〆と脱血処理も徹底して。今では航空便での全国出荷も実現しています」

「なるほど……」
伊達木社長も、思わず真剣な表情で聞き入っている。

「それだけじゃなくて、松浦市では水産業の価値を観光にも結びつけてるんですよ。修学旅行の学生向けに、漁業や農業の体験学習、家庭での宿泊、魚のさばき方や調理のレッスンなどを提供して、地域への理解を深めてもらってます」

「すごいな……」
と大杉主任が感嘆の声を漏らした。

「つまり、ブランドづくりにとどまらず、生産現場と消費者を直接つなぐ仕組み、そして体験の場まで用意して、地域振興と経済循環の両立を目指しているんです。2019年に『アジフライの聖地』を宣言したのも、そうした一連の流れの中にあります」

 



話を聞き終えた天野次長は、ゆっくりと湯飲みに口をつけたあと、しみじみと呟いた。

「なるほど……水産物が、地域振興に一役買うか……」

その言葉には、どこか希望のような響きがあった。

 

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ブランディング…。

 

レストラン「旬(とき)」のテーブルには、食べ終えたばかりの旬あじ定食の器が並んでいた。
どの皿もほとんど空っぽになっていて、満足感とともに少しの名残惜しさが漂っている。

そんな中、話題は自然と“アジ”そのものへと移っていった。

「実は、大分県では『関さば』『関あじ』という名称で、2006年に商標登録してるんですよ」
と、宮沢さんが言う。

「知ってます。大阪でもその名前は有名ですよ」
天野次長がうなずく。

「現在の卸売市場では、東京が全体の約5割。次いで福岡が2割、大分県内の消費も2割程度ですかね」
と、宮沢さんがさらりと続けた。

「ただ、『関さば』や『関あじ』にも課題はあります。まずは、魚の絶対数の減少。これはもう、業界全体の大きな問題です。地球温暖化の影響で海水温が変化し、魚の動きや“旬”の時期までもがズレてきているんですよ」

大杉主任が、なるほどと頷きながら、スマホで検索した日本各地のおいしい“アジ”について口を開いた。

「アジって、競合も多いですよね。ノーブランドを含めれば、愛媛の宇和島の大アジ、島根の『どんちっちアジ』、佐伯のアジに、淡路島のアジ……。どれもそれぞれ特徴がありますし」

「その通りです」
と宮沢さんが頷く。

「正直なところ、大阪では『関あじ』『関さば』の知名度はあっても、『旬(とき)アジ』『旬(とき)サバ』を知っている方は、あまりいらっしゃらないかもしれませんね」
天野次長がそう言うと、宮沢さんは軽く笑った。

 

 

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どちらにしようかな…。

 

「さあ、どちらにしましょうか」
宮沢さんが笑顔で尋ねる。

 



「大杉さん、決めてよ」
天野次長がパスを出す。

「ネーミングだけで選ぶなら『魚市食堂』一択なんですけど……ここはあえて逆張りで、『大漁レストラン旬(とき)』にしましょう!どうです、宮沢さん!」

「大丈夫ですよ、どちらも間違いなくおいしいですから」

軽く肩をすくめた宮沢さんに、大杉主任がズコッとずっこける仕草をしてみせる。
そのまま4人は、「レストラン旬(とき)」へと入っていった。

席につくと、大杉さんがメニューもよく見ずに注文する。

「旬(とき)アジフライ定食、4つください!」

運ばれてきた定食には、ふわふわのアジフライが美しく盛られている。箸をつけた瞬間、伊達木社長が思わず声をあげた。

 



「おいしい……!」

舌の肥えた彼女の口から出たその一言は、まぎれもない本音だった。

「宮沢さん、“旬”の時期って、いつ頃なんですか?」

「『旬あじ』は4月から8月、『旬さば』は10月から2月ですね」

「なるほど。そりゃあ、うまいはずだわ……。このアジフライ、絶品。ふわふわでサクサク、ほんの少しだけレア感を残した感じが絶妙だわ」

伊達木社長の言葉に、他のメンバーもうなずいている。

「ネットか何かで、松浦市が“アジフライの聖地”って呼ばれてるって記事を見たことがありますよ」
と、大杉主任がふと思い出したように言う。

「そうなんですよ」
宮沢さんが嬉しそうに頷く。

「2019年に、松浦市が“アジフライの聖地”を公式に宣言したんです。それが話題になって、今では観光にも地域振興にも、しっかりとつながっています」

 



昼のひとときは、旨いものと、ちょっとした地元の誇りとともに、穏やかに流れていった。
 

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タイヤで走りは変わるか…。


友人θ(シータ)のすすめで「ピレリ・ディアブロ・スーパーコルサ」に履き替えた、CB650R。
果たして、その走りの違いを体感できるのか。

「公道も走れるレーシングタイヤ」という触れ込みだが、その真価やいかに。

今朝のK-1はバイクの姿が一台もない。

 


まあ、今日はまず皮むきが目的。ひとりで軽く流してみる。

グリップ力は問題なし。純正で付いていたダンロップ・スポーツマックス2もかなり良かったけど、ディアブロもそん色ない。
コーナーの倒し込みも、正直あまり変わらない気がする。

ということで――素人の俺が公道で違いを感じ取れるはずもなく、皮むき終了。

 



…どうやら「違いの分かる男」には、まだまだなれそうにない。

 

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お魚のプロ。

 

エンヨウの建物に入ってすぐの玄関ホールで、一行はしばらく待っていた。すると、奥の通路から若い男性が現れる。



姿勢よく歩み寄ってきたその男性と名刺を交わすと、肩書にはこうあった。

「エンヨウ漁業協同組合 主査 宮沢 幸正」
そしてその下に、小さくもう一行。

「長崎海洋大学 水産学科 客員教授」

「すごい、大学の客員教授なんですね」
天野次長が思わず感嘆の声を漏らす。

「いやいや、そんなたいそうなもんじゃないんです。趣味の延長みたいなもので」
宮沢さんは少し照れながら、肩をすくめてみせた。

「でも、正直驚きましたよ。そちらの千﨑部長からお電話いただいて」

「千﨑さん、以前うちの大学の夏季セミナーで講師をされてて。たしか、テーマは“海洋資源の可能性”だったかな。終わった後に意気投合しちゃって、長崎市内の料亭でご馳走になったのを覚えてます」

「その料亭って、『橋本』じゃ?」と、大杉さんが目を細める。

「そう、それです」

「やっぱり、ここでもやってますねぇ、次長」

「そうですねぇ」
天野次長が苦笑いまじりに返す。

そんな会話の余韻を引きつれながら、宮沢さんの案内で敷地内の食堂へと向かうことになった。

 

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