地域戦略部には戦略が無い(136) | cb650r-eのブログ

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100年かかってもできないかもしれない。

 

しばらくすると、効きすぎていた車内の冷房がようやく落ち着いてきた。
アルファードの中に、ふわりと穏やかな空気が戻ってくる。

そのタイミングを見計らったように、伊達木社長が、芝居がかった声で切り出した。

「さて――そろそろ、お宅らの“本当の狙い”を教えてもらおうじゃないの」

唐突な問いかけに、大杉主任が肩をすくめる。
が、天野次長は涼しげな声であっさりと答えた。

「はい、伊達木社長のお察しの通りです」

「ふふ、まあそうなるわよね」
伊達木社長は、いたずらっぽく笑いながら、普段のトーンに戻って話を続けた。

「で、長崎市内に飲食ビルでもプロデュースするつもり?」

「いえ、それよりもう少し小規模で、でも地元密着のものを考えています。イメージとしては……金沢の近江町市場みたいな、“おさかなマルシェ”のような感じでしょうか」

 


「ほう。で、それを誰がやるの?」

「うーん……まずは行政に提案してみようかと……」
天野がそう言いかけた瞬間、伊達木社長が語気を強めた。

「それは――絶対やめておいた方がいいわよ。100年かかってもできないかもしれない」

「……たしかに」
天野次長が、少し考え込むように答えた。



ひと息ついたところで、伊達木社長がふっと表情をゆるめる。

「まあ、とりあえず仕事は一区切り。せっかくだし、長崎市内に戻って“美味しいもの”を食べましょうよ」

「そうですね。でも、ずーと美味しいもの続きですけど」

「ヤッホー!」
と、大杉主任が子どものように声を上げた。

その間に、天野次長はスマートフォンを取り出して、本社への報告を始めた。
今日一日の流れと成果、特にCCRCが継続案件として採用されたことは、丁寧に伝える。

通話が終わろうとしたそのとき、伊達木社長がスッと手を伸ばしてきた。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。