お魚のプロ。
エンヨウの建物に入ってすぐの玄関ホールで、一行はしばらく待っていた。すると、奥の通路から若い男性が現れる。

姿勢よく歩み寄ってきたその男性と名刺を交わすと、肩書にはこうあった。
「エンヨウ漁業協同組合 主査 宮沢 幸正」
そしてその下に、小さくもう一行。
「長崎海洋大学 水産学科 客員教授」
「すごい、大学の客員教授なんですね」
天野次長が思わず感嘆の声を漏らす。
「いやいや、そんなたいそうなもんじゃないんです。趣味の延長みたいなもので」
宮沢さんは少し照れながら、肩をすくめてみせた。
「でも、正直驚きましたよ。そちらの千﨑部長からお電話いただいて」
「千﨑さん、以前うちの大学の夏季セミナーで講師をされてて。たしか、テーマは“海洋資源の可能性”だったかな。終わった後に意気投合しちゃって、長崎市内の料亭でご馳走になったのを覚えてます」
「その料亭って、『橋本』じゃ?」と、大杉さんが目を細める。
「そう、それです」
「やっぱり、ここでもやってますねぇ、次長」
「そうですねぇ」
天野次長が苦笑いまじりに返す。
そんな会話の余韻を引きつれながら、宮沢さんの案内で敷地内の食堂へと向かうことになった。
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