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cb650r-eのブログ

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お味はどう?

 

やがて料理が運ばれ、3人は静かに箸を進めていった。

 



しばしの沈黙。
語られることは少ないまま、それぞれが目の前の握りに向き合っていた。

やがて食事が終わると――

「さて、大杉さん。お味はどうだった?」
伊達木社長が問いかける。

「はい……」
大杉主任は一呼吸おき、ゆっくりと答えた。

「大阪の人間には、十分おいしく感じられました。でも……」

「天野さんは?」
伊達木社長が向き直る。

「はい……」
天野次長は、慎重に言葉を選びながら話しはじめた。

「ご馳走になっておいて非常に恐縮ですが……正直に申し上げると、
私たちが求めている“お寿司”とは、少し違う気がしました」

「違う、というと?」
伊達木社長の目が細くなる。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

長崎スタジアム・シティ

翌日の昼、土曜日。

ホテル・インディゴをチェックアウトし、3人は再びアルファードに乗り込んだ。
目指すは、JR長崎駅のすぐそばにそびえる新名所――
長崎スタジアム・シティ(長崎ピーススタジアム)。

約20分後、アルファードはスタジアムのホテル棟の正面玄関に横付けされた。

エレベーターを乗り継ぎ、ホテル12階の和食ダイニング「旬(とき)」へ。
朝の光が大きなガラス窓から差し込み、市街地と港を一望する絶景が広がっていた。

 



「わぁ、すごく眺めがいいですね」
大杉主任が思わず声を漏らす。

その横で、伊達木社長はやや真剣な口調で言った。

「今日は、ちょっと“真面目なお願い”があるの。――長崎の“寿司”の現在地を体験してもらいたかったの。
正直な感想、聞かせてね」
 

 

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かつての“食”の中心地

 

「もともと築町(つきまち)は、長崎の“食”の中心地でした。
鯨肉の専門店、蒲鉾(かまぼこ)店、からすみ屋、乾物店……老舗が軒を連ねていて、まさに“食文化の交差点”だったんです」

「それを1998年、古い市場を建て替えて、新しい“食の発信基地”として再生したのが――『マルシェつきまち』でした」



「現在は、民間企業が運営するビルの賃貸業務が主ですが……残念ながら、多くの空き店舗を抱え、苦労しています。
賃料が周辺より高いという声もあり、経営体質を見直しながら、競争力ある賃料設定を模索中です」

「なるほど……」
天野次長が、真剣な顔で考え込む。

「思ったより、簡単な話ではなさそうですね。ただ……」

「ただ?」と伊達木社長。

「このインディゴホテルも、最初は“到底無理だろう”と言われていたんですよね?」

「そう。でも、今はこうして実現してる」
伊達木社長が、柔らかく微笑みながら頷いた。

「だから言うの。天野さんなら、できるわ」

そして、力強く言い切った。

「3年――いえ、2年で。『おさかなマルシェ』、一緒に必ず実現させましょう」



その言葉に、天野次長は静かに頷いた。

「分かりました。まずは、大杉と二人で案を練って、部内で相談してみます」

「千﨑部長がどう判断するか、楽しみにしてるわ」
伊達木社長がにっこりと笑う。

「はい、全力を尽くします」

――一夜限りで復活した、ロシア料理の名店「ペチカ」の夜。
会話と料理、笑いと余韻が、まだ静かに続いていた。

 

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―K-1の晩夏―

 

さて、夏もそろそろ終わりを告げる頃だ。
この夏、K-1では俺もすっかりスポーツ走行を堪能させてもらった。

本日のバトル相手は――
K-1の古株のひとり、「竹ちゃん」である。
歳は俺より五つほど下だったはずだが、走りに関しては雲泥の差。

コースはK-1往復、二本勝負。

……結果は、ご想像のとおり。惨敗である。
これでまた記録更新、連敗街道まっしぐら。

ちなみに、竹ちゃんの愛車はスズキのモタード、400cc単気筒。
650cc4気筒に乗る俺が、400の単気筒に毎度やられるとはどういうことか。



だが、奴のライディングは実に絵になる。
コーナー進入でスッと足を出すモタードフォーム。
切れ味鋭いライン取り。
気がつけば、俺の視界からすでに消えている。

K-1復帰後の俺の戦績――「
0勝12敗」。
この夏も連敗記録は更新中。

ひとつだけわかったことがある。
乗り続けたアラ還ライダーは強い。バイクの排気量や車種なんて大した問題じゃない。

……まあ、いいんだ。
今、俺は心から楽しんでいる。

CB650R e-clutch のある人生。これ以上、何を望もうか。

 

 

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ここからは……


静かに余韻を楽しんでいると、久保弟シェフがテーブルのそばにやってきた。
「本日の料理は、お口に合いましたでしょうか?」

湯村社長が満足げに微笑む。
「おいしかったよ。料理も、当時の味そのものだね。完全に再現できていた」
女性陣3名も口々に「すごくおいしかった」と続く。

「ありがとうございます」
久保弟は深く頭を下げると、静かに厨房へ戻っていった。

続いて、久保兄がグラスの位置を整えながら、テーブルの上を丁寧に片づけていく。
卓上は再び、凛とした空気に包まれた。

そのタイミングを見計らったように、伊達木社長が口を開く。
「さて……少し、次の話をしましょうか」

 



その一言に、場の空気が再び引き締まった。

「ここからは、少しだけ“ビジネスの話”をしましょう」
伊達木社長の声に、皆が自然と姿勢を正す。

「早っ……昼に話したことが、その日の夜に具現化するとは。
これが、グローバル企業“フォレスト・トラスト流”のスピード感か……」
天野次長は、心の中でつぶやいた。

そして、湯村社長に、これまでの経緯を簡潔に説明しはじめた。
 

――実家が対馬のアナゴ商社であること。
――近江町市場の視察。
――長崎の寿司文化、旬アジや旬サバの話。
――アジフライの聖地・松浦のこと……。

 


湯村社長は頷きながら耳を傾けていたが、やがて静かに口を開いた。

「名刺に書いてある通り、私は『マルシェつきまち』の代表です。
……少し、築町(つきまち)の昔話をしてもよろしいですか?」

一同が静かに頷くと、湯村社長は、ゆっくりと語りはじめた。

 

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本日のMenu

 

「ALSACE RIESLING CLOS SAINTE HUNE 2019を選びました。アルザスの辛口リースリング、最高峰の一本です」

「出ましたね、アルザスのロマネ・コンティ」
湯村社長がうれしそうに言った。

 



「名門トリンバック家の誇る一本。フランスでも常に高得点を叩き出す、辛口白ワインですな」

料理も、ワインも、会話も。
すべてが自然とテーブルに溶け込んでいく――。

<本日のMenu>

 



前菜の盛り合わせ

サラダ

岩ガキ(石川県産)

ボルシチ

田舎風パテ(ガーリックトースト添え)

雲仙ポークの腸詰め

長崎ビーフのストロガノフ(サフランライス添え)

デザート

コーヒー

最後のデザートとコーヒーは、ホテル・インディゴのレストランからサーブされた。

 

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まずは乾杯!


「まずは乾杯からね」
伊達木社長が、涼やかな声で言った。

「今夜のシャンパンは、《La Grande Année 2015》をご用意したわ」

 



その言葉に呼応するように、久保兄がシャンパンクーラーから丁寧にボトルを取り出し、水気を拭う。
そして、静かに栓を抜いた。澄んだ音とともに、立ち上る香りがシャンパングラスにふわりと広がる。

4つのグラスに金色の泡が注がれた瞬間、伊達木社長が言った。

「今日という素晴らしい出会いに、カンパーイ」

グラスが軽やかに触れ合う。音が消えたあと、一瞬の沈黙。
そして、自然と笑顔がこぼれた。

久保兄が前菜をサーブする。
そこへ、発泡スチロールの箱を抱えた久保弟がテーブルに近づいた。

 



「本日は、石川県の岩ガキが入っております。生牡蠣が苦手な方はいらっしゃいますか?」

そう言って、大ぶりの岩ガキを披露する。
全員が「いただきまーす」と声を合わせた。

「夏のペチカ名物といえば、この岩ガキですよ」
湯村社長が嬉しそうに言う。

「この料理には、白ワインを合わせましょう」
伊達木社長が、空になったグラスを静かにテーブルに置き、次のボトルを促した。

 

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アルザスのロマネ・コンティ

 

「そうよ。今日は本当に“スペシャル”なの」
伊達木社長は、少し誇らしげに微笑んだ。

部屋の中には、すでに二人の男性が立っていた。
控えめに頭を下げながら、来客を迎える。

「こちらが、今はなきロシア料理の名店・ペチカのオーナーとシェフ――久保兄弟です」
伊達木社長が紹介する。

 

 



「うちの会社、いま“新領域ビジネス”として、出張シェフのマッチングプラットフォーム『Premiumシェフ』を展開しているんです。
でも、今日お越しいただいたこのお二人は……ビジネスではなく、友人としてご協力いただいてます」

「インディゴのレストランオープン時にも、いろいろと助言をいただいて。それがご縁で、ね」

そして、もうひとつ明かされた事実があった。
湯村社長は、2020年に閉店するまで、ペチカの三十年来の常連客だったのだ。

「週に二回は通ってましたよ。あの店の味は、忘れようがない」
湯村社長は、少し懐かしそうに目を細めた。

 

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名刺の主は……。

 

名刺には、こう記されていた。
「株式会社マルシェつきまち 代表取締役社長 湯村純一」

 



「……マルシェつきまち……」
天野は名刺をじっと見つめたまま、動かない。

その様子に気づいた伊達木社長が、さらりと声をかける。

「だって天野さん、長崎に“おさかなマルシェ”を作りたいんでしょ? だから湯村さんをお呼びしたのよ」

すると、湯村社長が豪快に笑った。

「いやいや、私は美味しい料理とワインに釣られて来ただけですよ。ハハハ!」

「はい、ビジネスの話は……料理を食べ終わるまで“禁止”ですからね」
伊達木社長は楽しげにそう言って、二人を特別ルームへと案内した。

入り口には、かつて長崎で愛されたロシア料理店「ペチカ」の看板が掲げられていた。
ロシア語で「печь(ペチ)」――暖炉を意味する、あの店のプレートだ。

「えっ……まさか、あのペチカですか? 伊達木さん」
湯村社長が驚いたように声を上げた。

 

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6時集合...。

 

午後5時ちょうど。アルファードはホテル・インディゴ長崎に滑り込むように到着した。



「天野さん、大杉さん。1階ロビーに6時集合でよろしくね」
伊達木社長はそう言い残すと、颯爽とエントランスへ消えていった。

「分かりました。遠慮なく、二人でお世話になります」
天野次長が丁寧に頭を下げる。

それから約一時間後――約束の5分前。
天野次長と大杉主任はロビーに降り、静かに伊達木社長の到着を待っていた。

そのとき、恰幅のいいスーツ姿の男性が玄関から現れた。
 

彼がロビーの中央付近に差しかかったころ、ちょうどタイミングよく伊達木社長も姿を見せる。

「湯村さん、急に呼び出してごめんなさい。でも、今日はきっと楽しんでいただけるはず」
伊達木社長は笑顔でそう言い、天野と大杉を紹介した。

「こちらが、大阪ビジネスコンサルタンツの天野次長と大杉主任です」

紹介を受け、天野と大杉は慌てて名刺を差し出す。
男性の名刺を受け取った瞬間、天野次長の表情がふっとこわばった。

 

 

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