アルザスのロマネ・コンティ
「そうよ。今日は本当に“スペシャル”なの」
伊達木社長は、少し誇らしげに微笑んだ。
部屋の中には、すでに二人の男性が立っていた。
控えめに頭を下げながら、来客を迎える。
「こちらが、今はなきロシア料理の名店・ペチカのオーナーとシェフ――久保兄弟です」
伊達木社長が紹介する。

「うちの会社、いま“新領域ビジネス”として、出張シェフのマッチングプラットフォーム『Premiumシェフ』を展開しているんです。
でも、今日お越しいただいたこのお二人は……ビジネスではなく、友人としてご協力いただいてます」
「インディゴのレストランオープン時にも、いろいろと助言をいただいて。それがご縁で、ね」
そして、もうひとつ明かされた事実があった。
湯村社長は、2020年に閉店するまで、ペチカの三十年来の常連客だったのだ。
「週に二回は通ってましたよ。あの店の味は、忘れようがない」
湯村社長は、少し懐かしそうに目を細めた。
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