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cb650r-eのブログ

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新長崎漁港へ

 

翌朝。
宿の朝食は、地元で採れた野菜や魚が並び、やさしい味わいが体を目覚めさせる。二人はしっかり腹ごしらえを済ませ、長崎へと出発した。
ルートはいくつか迷った末、タクシーで武雄温泉駅へ向かい、西九州新幹線に乗り換えて一直線に長崎駅へ。

西口に降り立つと、「ながさき漁業協同センター」の上田所長が待っていた。
 

 

「お久しぶりです、天野さん、大杉さん。」
「またまたお世話になります、上田さん。ご厚意に甘えます。」


「そういえば、松尾市長が“上田さんによろしく”とのことでしたよ。」と天野次長が笑顔で伝える。
「松尾さん、私の悪口ばかり言ってたんじゃないですか?」
「そんなことは……あっても言えませんよ。」と大杉主任が茶目っ気たっぷりに返す。
 

一通りの挨拶が済むと、上田所長が話を切り出した。
「西日本魚市のエンヨウ経由で、矢野教授と連絡が取れたそうですね。」
「はい。本当に運が良かったです。」と天野次長は微笑む。
「実は私も、“ながさきオーシャン・エコノミー”には個人的に興味がありまして。今日の視察は、私自身も楽しみにしているんです。」

「では、長崎漁港へ向かいましょう。昔はJR長崎駅のすぐそば、長崎港内に漁港があったんですが、1989年に主要機能を北西部の三重地区へ移転したんです。今では“新長崎漁港”と呼ぶ人も多いですね。」
「さすが。魚の話になると、台本なしでスラスラですねぇ。」と大杉主任が笑う。
「大杉さん、上田さんに失礼ですよ。」と天野次長がたしなめる。
「いえいえ。本当のことですから。」と上田所長は笑って受け流した。

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

日本酒『鍋島』に合う

 

二人はチェックインを済ませた。

「お食事は六時からでよろしいですか?」
「はい。すでにお腹ペコペコですが…」大杉主任は、酒蔵での酔いも少し覚めたようだ。

 

そのとき、天野次長の携帯が震えた。
「伊達木社長からだわ」
――そうそう、前に贈ってもらった“対馬の黄金あなご”の御礼を言うのをすっかり忘れてたわ。知り合いのシェフに白焼きや煮あなごに料理してもらって食べたけど、おいしかったわー。で、話は変わるけどさ、今日の夕食は飯盛夫人と一緒に食べてもらってもいい?
「もちろん、構いませんよ」と即答すると、
――飯盛さん、とてもいい人だから、楽しい夕食になると思うわよ。じゃあ、よろしく!
軽やかな声とともに電話は切れた。
天野次長は携帯を閉じ、にやりと笑った。
「大杉さん、どうやら今夜は、もうひとつ“特別”が加わったみたいよ」

 

六時、二人は一階のカウンターレストランへ向かった。
「お待ちしておりました。」

 

シェフと飯盛夫人が笑顔で迎える。
 

「私もご一緒してよろしいですか? 伊達木社長から“面白いお二人だから、きっと楽しい食事になる”と伺ってまして。」
「面白いかどうかは分かりませんが、もちろんです。」

 

「うちのシェフは、もともと福岡のフレンチで修業していたんです。私がその腕に惚れ込んでスカウトしました。ただ、ここでお出しするのは基本的に、日本酒『鍋島』に合う和食なんですよ。」

「へぇ、それは楽しみです。」



最初の一皿は、唐津産の鮑と芋茎に、地元のすっぽんの煮こごりを合わせたものだった。

 

「おいしい。」と大杉主任。

「絶品ね。」と天野次長。
「ありがとうございます。」とシェフも飯盛夫人も、心底嬉しそうだ。
その後も、手の込んだ創作料理が次々と並び、それぞれに違うラベルの「鍋島」が添えられた。口に運ぶたび、この宿の料理と酒のレベルの高さがはっきりと伝わってくる。
食後も、女性経営者としての奮闘談から、伊達木社長の武勇伝まで話題は尽きず、笑いの絶えない夕食会が続いた。
やがて、鹿島の夜は、満ち足りた空気とともに静かに更けていった。

 

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いっちょ行きますか。

 

 

片山さんがにやりと笑った。

「山ちゃん、久々にK-1一緒に走ってみるか」

「……37年ぶりですかね。最後に走ったのは、大学卒業前ぐらいでしたから」

「そんなになるか」

「オイルがかかると悪いから、山ちゃん先行でいいよ」

「了解です」

内心、俺はほくそ笑んだ。――K-1の登り。これはチャンスだ。

スタート。序盤はぴたりと背後につかれたが、傾斜のきつい上りカーブを立ち上がるたび、少しずつ差が広がっていく。

TZR250。かつてレーサーレプリカの代名詞だった名車だ。軽快な排気音がコンディションの良さを物語っている。だが、とはいっても旧車。排気量の余裕とハイグリップタイヤの差がものを言い、テクニック抜きでも自然と引き離していける。

最終の直線――振り返れば、400メートルほど後方にTZR。
そのままゴール。


113敗。


ついにCB650Rを買って屈折10か月。ようやくK-1で初勝利を収めた。

片山さんは俺の横にバイクを止め、ヘルメット越しに声をかけてきた。

「まあ、そんなもんだろうな。でも――下りなら絶対負けないぞ。次は下りで勝負だ」

そう言うと、ひらりと手を上げ、街の方へと下っていった。


 

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『 御宿 富久千代 』

 

「酒蔵のご見学はここまでです。ここからは妻が『御宿 富久千代』へご案内します。私はここで失礼します」

「大変お世話になりました。本当にありがとうございました」

 

 

飯盛さんに深々と頭を下げ、天野次長と大杉主任は奥様に導かれ、今日の宿へと歩き出した。
胸の奥には、さっきまで味わっていた酒の余韻と、ほんの少しの期待が残っていた。


 

「ここから五分ほど歩いたところに宿がございます」
そう言いながら、飯盛夫人は酒蔵通りを来た方向へとゆったり戻っていく。
「うちは一日に一組しかお客様をお受けしないんです。だから、伊達木社長から“二名泊まれないか”とお電話をいただいたときは、正直、無理だと思いました。でも宿帳を確認したら──偶然、本日のお客様がキャンセルされていたんですよ」
「私たち、ついてますねぇ」大杉主任が嬉しそうに言う。
「正直、私もほっとしました」飯盛夫人の表情にも安堵がにじむ。
「伊達木社長も、よくお泊まりになるんですか?」
「はい。長崎に出張の際、お仕事が終わると、ふらりとお越しになります。特に宿の料理とうちの日本酒を、毎回とても楽しみにしてくださって」
「なるほど、納得です」天野次長はうなずきながら、心の中で“あの食へのこだわり方なら、確かに…”と思う。

やがて宿に到着。
 

 

「え、ここですか? さっき通ったときは酒蔵かと思って、通り過ぎてしまいましたよ」大杉主任が目を丸くする。
「御宿だとは気づかなかったけど、素敵な建物ですねぇ」天野次長も感嘆の声を漏らす。
 

 

「ありがとうございます。さぁ、中へどうぞ」
扉をくぐると、ふわりと木の香りが包み込む。
外のざわめきが嘘のように消え、静かな空気が足元まで染み込んでくる。

 

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40年間、そのまま…。

 

K-1の休憩所が、ふっとざわめいた。
θ(シータ)がぽつりとつぶやく。

「……あれ、珍しい。マモラさんだ」

まさか、と思った。目の前に止まったのは――TZR250。
そのオーナーは、マモラこと、やはり片山さんだった。



K-1の重鎮。あのTZR250初期型を、四十年ものあいだ乗り続けていたとは…。

「うそでしょう、片山さん。まだTZRなんですか?」

「まあね。後ろ走るとオイルが飛び散るから、気をつけてよ」

そう言って、にかっと笑う。還暦を越えた、いいおじさんの顔だ。

「タイヤ……細いっすね。特にリア。こんなんでしたっけ」

「チャンバー以外は、ほぼオリジナルだよ。コンディションも上々」

そう言いながら、今度は俺のCB650Rをじろじろ見てくる。

「山ちゃん、最近復活したんだって? 噂で聞いたよ。E-clutchかぁ、どうだい?」

「なかなかいいですよ。でも、片山さんには……ちょっとお勧めしませんけど」

「なるほどな。――でも昔は、よく走ったなぁ。飽きもせずに」

「そうですね。あの頃の俺は、RZ250Rから乗り継いで、SUZUKI WOLF250でした」

「そうそう、なつかしいなぁ」

 

 

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富久千代酒造

 

 

富久千代酒造に到着すると、蔵元の飯盛さんが笑顔で出迎えてくれた。

 

 

「ようこそ、佐賀県鹿島市へ。フォレスト・トラストの伊達木社長からも、よろしくとのお電話をいただいています」
 

「それは光栄です。本日はよろしくお願いします」
 

「では、通常はお見せしていない蔵の奥をご案内しましょう」
案内されたのは、古い酒蔵を見事にリノベーションした空間だった。

 


天井に走る黒光りした梁、白い漆喰の壁。ほのかな木の香りと温かな照明が、時の流れをゆっくりとほどいていく。


 

「特別なお客様やバイヤーの方に、落ち着いて吟味いただけるように整えたんです」
 

「素敵ですねぇ」天野次長の声が、自然とやわらぐ。
 

「では、早速ですが、うちの自慢『鍋島ブラック』をご試飲ください」
 

 

グラスから立ちのぼる香りは、深く、豊か。
ひと口含むと、驚くほどなめらかで、舌にやさしく広がっていく。
「……おいしいわ」
「本当に、おいしいです」
 

「ありがとうございます」飯盛夫妻の笑顔が、さらにやわらいだ。
「こちらは味わいの異なる二種類の鍋島です。ぜひ飲み比べを」
 

 

「これも美味しい!」
「本当だわ、まったく別の顔ね」
製法や米の違いを、飯盛夫妻は丁寧に語る。
その説明がまた、酒の旨さをひと回り引き立てていた。
 

「大杉さん、顔が真っ赤よ。飲みすぎちゃだめ」
「でも次長、ここで飲まずに帰るなんてもったいないですよ~」
「……まぁ、否定はしないけど」
 

やがて仕込み部屋なども見せてもらい、外に出ると、西日が白壁を黄金色に染めていた。
 

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肥前浜宿の酒蔵通り

 

「松尾市長、本当にお世話になりました」
天野次長が深々と頭を下げる。


「お二人は明日、長崎で上田君に会うんでしょう? よろしくお伝えください」
「かしこまりました。必ずお伝えします」

二人が降り立ったのは、「肥前浜宿の酒蔵通り」。
江戸時代から昭和にかけて酒や醤油の醸造業で栄えた通りで、今も三つの酒蔵──富久千代酒造、光武酒造場、峰松酒造場(肥前屋)が並ぶ。
白壁の連なる街並みに、ほんのり漂う酒の香り。歩くだけで、ほろ酔い気分になりそうだ。
 

平日にもかかわらず、試飲や見学、酒蔵スイーツ目当ての観光客が絶えない。
外国人の姿も多く、通りは静かな賑わいに包まれていた。

 


 

「次の訪問先は富久千代酒造さんです。今日は特別に、蔵元の飯盛さんが案内してくださいます」
と大杉主任が言うと、天野次長は「富久千代酒造って、たしか今日泊まる『御宿 富久千代』とも関係があったわよね?」と首をかしげた。
「はい。飯盛さんの奥様が、その『御宿 富久千代』の代表なんです」
「なるほど、夫婦で酒と宿を担ってるわけね」
「しかも今日は、普段は見られない酒蔵の奥まで案内していただけるそうです。それと……幻の酒『鍋島ブラック』も試飲できるとか」
「はぁ~、また伊達木社長に借りを作っちゃったわね」
「はい…。次長、またお礼に対馬の“黄金あなご”送ります?」
「うーん、今度は違うもので攻めましょうか……考えとくわ」

 

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祐徳稲荷神社

 

祐徳稲荷神社に到着すると、まばゆい朱色の社殿が森の緑と空の青に映えていた。

 


 

「祐徳稲荷神社――ここは“日本三大稲荷”のひとつに数えられます。商売繁盛、五穀豊穣の神さま。

“祐徳さん”として、古くから地元に親しまれてきました。今年で創建330年です」


「330年……」天野は深く感心して見上げる。
 

「年間で約300万人が参拝に来ます。近年はタイからのお客様が多くてね。映画『タイムライン』(2014年)やドラマ『きもの秘伝』(2015年)のロケ地にもなって、そこから“聖地巡礼”のように観光が広がったんですよ」
「へぇ……」天野と大杉はそろって頷く。
 

「もちろん、パンフレットはタイ語版もあります。鹿島は“酒と祈りと、もてなしのまち”ですからね」
市長は、祐徳の境内を見渡しながら、静かに言った。

 

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てのひら市役所

 

「それに、市政にはデジタルも使いますよ。我が市の“DX”、結構やるやつなんです!」


市長が笑って話し出したのは、鹿島市公式LINEアカウント「てのひら市役所」のことだった。
 

「2024年に本格運用を開始して、登録者は7,000人。市の人口の約4分の1ですよ。住民票の写しの申請など、各種手続きがスマホで完結できます」
「それはすごいですね」と天野は率直に驚く。
 

「それから、日本酒のまち・鹿島にとって、伝統的酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録されたのは追い風です。でも一方で、観光客が日帰り中心で、消費に結びつきにくい。宿泊施設が少ないのも課題でしてね……」
 

「実は、今夜はこちらに泊まらせていただきます。知人の紹介で、“富久千代”さんに」
「おぉ、それはすごい。普通は予約なんてなかなか取れませんよ」
「そうなんですね……」
(たぶん、伊達木社長が無理言ってねじ込んでくれたんだろうな……)と天野は心の中で苦笑した。
 

市長は満足げにうなずく。
「――百聞は一見に如かず、ですね。では祐徳稲荷神社にご案内しましょうか」

 

 

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祐徳の赤、鹿島の酒

 

「鹿島市はね、佐賀県……いや、九州随一の“酒どころ”として知られているんですよ」
市長は滔々と語り始めた。


「昨年――2024年には、おかげさまで市制70周年を迎えました。新幹線こそ通りませんでしたが、道路整備や観光振興では近隣自治体と連携しながら、地域全体の発展を目指しています」
「たとえば、有明海沿岸道路の延伸、それから酒蔵ツーリズムや祐徳稲荷神社へのインバウンド誘致……ですね」と天野が応じると、


「その通り!」
松尾市長は、声に力を込めた。

 


 

「今後のまちづくりにおいて、公共交通の維持は死活的に重要です。西九州新幹線の開業で、市内を走る長崎本線は“並行在来線”となり、大幅に減便されました」
その声には、悔しさと、それ以上の前向きさがにじんでいた。
 

「そこで、路線維持と利便性向上のため、沿線自治体とともに“期成会”を立ち上げ、JR九州へ要望活動を続けています。でもね、ただ文句を言うだけじゃだめなんですよ。自分たちで利用者を増やす努力が“一丁目一番地”だと、私は思っています」
取り組みは、すでに多岐にわたる。
 

「たとえば、肥前鹿島駅を発着する特急列車の利用者――市民や観光客への運賃補助やクーポン配布。そしてJR九州や隣町・太良町と連携して、スイーツや地酒をテーマにした観光列車の企画もやっています。鉄道利用の促進と交流人口の拡大、両面を見据えた施策です」
 

「なるほど……」天野は思わず手帳を開いてメモをとる。

 

 

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