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cb650r-eのブログ

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壮大な実験室

「総務課の馬渡です。まずは簡単に研究所内を見学いただきます」そう言うと、来訪者用のヘルメットを差し出した。

――ここから先は、まさに「カーボンニュートラルの壮大な実験室」だ。

 



案内された敷地内を歩くたび、足元に重低音が響く。巨大なタービンの試運転だろうか。地響きのような振動が、胸の奥まで突き抜けてくる。

「こちらが『高砂水素パーク』です」
制服姿のスタッフが誇らしげに指し示す先に、ガラス張りの建屋が見えた。中では銀色に輝く装置群が整然と並んでいる。

「水電解装置による水素製造から、燃焼実験、発電利用まで。すべてを一貫して実証できるのは、世界でもここだけです」

成瀬代理が小声で付け加える。
「単なる研究施設じゃありません。ここは未来の“社会インフラの試金石”なんです」

俺はガラス越しに装置を見つめた。
――これだ。この迫力をどう伝えるかが、フォーラム成功のカギになる。数字や理屈ではなく、心を動かす“実例”。それを提示できれば、参加者の意識は確実に変わる。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

高砂製作所へ

体制はすでに決まっている。実務担当はカーボンニュートラルに詳しい成瀬代理、責任者は山本副部長。私を含め、他のスタッフも全面的にサポートに入る。

会議は終了した。
だが俺の胸の内には、静かに炎が灯っていた。
――ここからが正念場だ。

席に戻ると、成瀬代理が話しかけてきた。
「まずは、カーボンニュートラルについての知見を深めるために、四菱重工業の高砂(たかさご)製作所に行ってみませんか。神戸ですし、距離も近い」

その場で話は決まり、成瀬代理のネットワークを頼りに、翌日俺たちは神戸に向かうことになった。

神戸からさらに西へ50kmほどのところにある四菱重工業の高砂製作所に到着した。
車窓の向こうに、巨大な煙突と無機質な白い建屋が姿を現す。鉄とコンクリートの塊が並び立つ光景は、どこか要塞を思わせた。

 


ゲートで手続きを済ませ、来客駐車場に車を停め、本部がある建物に向かった。建物の入口では制服を着た若い男性が、俺たちを待っていた。

 

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機運の再醸成

千崎部長はさらにページを繰る。
鋭い視線で要点を指し示しながら、畳みかけるように言った。

「政府は、市民から中小・零細企業まで、幅広い層に情報を届け直し、意識を再び高める必要がある。そのための一手段――それが今回のフォーラム、またはシンポジウムの企画コンペです」

室内の空気が、一瞬で張りつめる。
この案件を落とせば、会社にとっても大きな前進。逆に逃せば――。

「プロポーザル形式のコンペになります。我々OBCにとって、この案件は是が非でも取りに行きたい」

誰もが無言で頷いた。

 

 

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カーボンニュートラル

珍しく臨時の会議だ。
午後四時、会議室に足を踏み入れると、机の上には数枚の資料が整然と置かれている。
ただ、それ以上に――目に見えぬ圧が、部屋を満たしていた。

腰を下ろした瞬間、千﨑部長の低い声が響いた。

 



「みなさん、まずは資料をご覧ください。大阪の自治体からの委託事業です。ただし――おおもとは経産省発の案件だ」

一枚目をめくった瞬間、大きな見出しが目に飛び込んでくる。

――カーボンニュートラル実現に向けた関西地区の機運再醸成。

息をのむ間もなく、部長の言葉が続いた。

「ご存じのとおり、米国では大統領が方針を大きく転換しました。パリ協定からの離脱、化石燃料増産の指示……」

資料の余白を、部長の指がコツ、コツと叩く。
不規則なリズムが、場の緊張をさらにかき立てる。

「エネルギー価格を抑える狙いはあるにせよ、再エネ支援は縮小。風力発電の建設禁止、脱炭素関連支払いの停止――一連の大統領令です。その影響で、せっかく盛り上がりかけたカーボンニュートラルの機運が、一気にしぼみかねない」

 



――なるほど。それで“再醸成”か。
俺は心の中で呟いた。言葉には出さずに。

 

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110円で救われた話


俺みたいなヘタライダーが、絶対にやっちゃいけないこと。
それは──「上り坂でのUターン」。

頭では分かってた。
なのに、なぜかやってしまった。

結果は、見事なまでの大立ちごけ。
右に倒れたCB650Rを、起こすのに苦労した。
情けないほど、体力が落ちていた。

それでも、救いはあった。
あの“110円のE-clutch対策スライダー”が、エンジンを守ってくれたのだ。


 

立ちゴケ後のスライダーは、傷だらけ。

 


でも、エンジンは無傷。
まさに“110円で救われた”話。

みっともなさ、10mm(いや、三苫の1mm)。
──でも、やっててよかった。


 

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甘い街の夜
 

その日の夕食は、結局、中華街の名店「江山楼」に決まった。

 


 

上田所長へのお礼も兼ね、天野次長が招待する形である。
 

コース料理は湯気とともに次々と運ばれてくる。
 

「長崎の中華って、とてもおいしいですけど、けっこう甘口ですよねぇ。」
大杉主任が箸を止め、首をかしげた。
「エビチリならぬ“エビマヨ”ですし。」
 

「ながさき発祥らしいですよ。」と上田所長。
 

角煮饅頭も甘い。でかいゴマ饅頭は、中にぎっしりとあんこ入り。
 

「ワンちゃんボールですね。」
 

「皿うどんの餡も甘めですよね……いや、ぜーんぶ甘い。」
 

「まあ、中華に限らず、長崎の料理は少し甘めです。歴史的な背景もあるんですよ。」
上田所長がザラメを入れた紹興酒の入ったグラスを置き、語り出す。
「鎖国時代、長崎の出島には主に中国・福建省から砂糖が大量に入ってきたそうです。当時、砂糖は貴重品でしたが、長崎では料理にふんだんに使えた。それが今も脈々と受け継がれている──と。」
 

「へぇ~。」大杉主任は素直に感心している。
 

「あ、思い出した。」天野次長が指を立てた。
 

「長崎カステラ、佐賀の小城ようかん、マルボーロ。福岡・飯塚の千鳥饅頭、北九州の金平糖。」
 

「“シュガーロード”ですね。」と上田所長。
 

「ピンポーン、正解です!」天野次長が声を弾ませる。
 

「では最終問題です──」
唐突に上田所長がクイズタイムを終わらせにかかった。
「ご高齢のおばあちゃんが、たまに使う言葉。“長崎が遠か~”とは、どういう意味でしょう? 大杉さん、お答えください。」
 

「うーん……えーと……あ、わかった。」
 

「ではどうぞ。」
「長崎は交通の便が悪い。特に新幹線!」

 


 

「ブブー!」紹興酒が効いた上田所長が、両手で大きくバツを作る。
 

「正解は──料理や食べ物の“甘みが足りない”ことを表す比喩でした。」
 

「その通り! さすが天野次長!」
 

上田所長は満足げにうなずく。
 

デザートの杏仁豆腐で締め、宴はお開きとなった。

店先で上田所長と別れ、二人はタクシーで定宿のホテル・インディゴ長崎へ向かう。
フロントでチェックインしていると──天野次長のスマホが軽く震えた。
「LINEにメッセージが入った。」
「伊達木社長だわ。」
 

『そろそろインディゴにチェックインした頃かしら。飯盛夫人から、鹿島の夜は楽しかったとの連絡あり。天野さん、大杉さんありがとね 伊達木』
 

天野次長はその画面を大杉主任に見せ、ポケットにスマホをしまうと、
 

「大杉さん、また明日。」

 


 

短くそう告げ、一人でエレベーターに乗り込んでいった。

 

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“オーシャン・エコノミー”と“お魚マルシェ”構想

 

全行程を終え、玄関先で矢野教授が言った。
「プロの上田さんはもちろんですが……天野次長と大杉主任も熱心ですね。感心しました。」


「恐れ入ります、矢野先生。」
「これまで漠然としていた“オーシャン・エコノミー”と、私たちの“お魚マルシェ”の構想が、ガチッとつながりました。本当にありがとうございます。」
天野次長の言葉は、胸の奥から出たものだった。


「大阪OBCさんの挑戦、私もアカデミーの立場から注目しています。何かあれば、いつでもご連絡を。」
教授は穏やかに微笑み、深く頷いた。


「必ずご連絡しますわ。」
力強く答えて、天野次長は研究施設を後にする。

 



車内に戻ると、上田所長がぽつり。
「すごい施設でしたねぇ。」
「本当に……来て、見て、よかったわ。」天野次長もしみじみと応じる。
 

「でも、夕食はやっぱりお肉がいいですね、今日は。」
大杉主任が、ふいに笑いを交えて言った。
 

「そうだねぇ。」
天野次長も、つられて小さく笑った。

 

 

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海と街をつなぐ発想

 

このあと、教授が語る「未来の養殖ビジネス」の青写真は、二人の胸に深く刻まれることになる。

「では、座学のまとめとして──“ながさきオーシャン・エコノミー”の三本柱をご紹介しましょう。」
矢野教授は、モニターに映るスライドをクリックし、画面を切り替えた。
 

三本柱が、簡潔な矢印付きで並んでいる。

作業を変える:生産者の負担を軽減する養殖技術の開発 → 沖合養殖システムの開発

育て方を変える:海の生物と環境への負担を減らす養殖技術の開発 → 人工種苗による生産体制構築、ブリ人工種苗センターの設置

働き方を変える:若者が魅力を感じるプラットフォームの構築 → 「JAPAN鰤」販売体制の構築、長崎マルシェの設置

「それです! 矢野先生!」
思わず天野次長が、椅子を押しのけるように立ち上がった。

 


「……え? どの部分をおっしゃってるんですか?」
やや戸惑い気味に、矢野教授。
 

「私たち、“長崎お魚マルシェ”を創りたいんです。」
天野次長の声には、もはや迷いがなかった。
 

「ほう。」
不意を突かれた矢野教授の口元に、わずかな笑みが浮かぶ。

「では、座学はこのあたりで。研究施設をご案内しましょう。」
促され、三人は陸上養殖研究施設へと足を運んだ。
ドアをくぐった瞬間、上田所長が低く唸る。
 

「これは……すごい。」
 

水槽の中を悠々と泳ぐ魚たち。水質や成長をリアルタイムで表示する壁面モニター。
人工種苗で育てられた個体が、健康そのものの光沢を放っている。

 


専門家ならではの鋭い質問が、矢継ぎ早に上田所長の口から飛び出し、教授は間髪入れずに的確な答えを返す。
そのやり取りは、天野次長と大杉主任にはやや専門的すぎたが、大杉主任はひたすらメモとカメラで記録に集中していた。
現場感覚と最先端技術が同居する空間に、二人はただ圧倒されるばかりだった。

 

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海面漁業と養殖業の現状

 

「では、矢野先生。長崎県の水産業、特に海面漁業と養殖業の現状についてお願いします。」
 

「はい、わかりました。」
 

矢野教授の声が、落ち着いた響きで会議室を満たす。
「長崎県の水産業は、生産量が全国3位、生産額では全国2位です。ただ、かつてのピーク──99万トンあった生産量は、今や31万トン。生産額も2,259億円から半分以下の996億円へ減少しています。就業者数も1979年の4分の1、約1万1千人。経営体と就業者数は全国2位ですが、この5年間で組合員は4,000人近く減っています。」
言葉を重ねるうちに、教授の表情は自然と厳しさを帯びていった。

 


「一方で、魚種の多さは日本一とも言われ、全国1位の魚種も多い。地域の強みを活かせばまだ可能性はある。ただ、天然資源の減少や漁獲制限による収入減で、生活は不安定。後継者不足と高齢化への対策は急務です。」
天野次長と大杉主任は、静かに頷く。

「では、今後の水産業のあり方について、ご教示ください。」
上田所長の言葉に、教授は軽く頷き、続けた。
 

「世界的に見ると、海面漁業は頭打ちで、養殖が急増しています。安定しておいしい魚介類や海藻を食べるためには、『とる漁業』と『養殖』の両輪が必要。日本でも国が養殖を推進しています。」
 

「やっぱり、そうなんだ…。」
天野次長と大杉主任が、同時につぶやく。

「養殖が推進される理由は、主に四つです。」


と言いながら、教授はパワーポイントのページを進めた。
 

・とることで資源が減ってしまう魚介類・海藻がある。
 

・安定供給が求められる魚介類・海藻がある。
 

・安全な生産のため養殖が必要な魚介類・海藻がある。
 

・生まれてからの履歴(トレーサビリティー)が求められる場合がある。
 

「ただ、日本は人口減少と魚食離れで、国内市場の拡大は難しい。だからこそ、質の向上による生産性アップと、海外販路の開拓が鍵になります。」


そこで教授は一拍置き、視線を鋭くした。
 

「海外に売るには、定時・定質・定量・定価格が必要。そして、環境に配慮しているかも問われます。つまり『量』と『質』の両立。そのためには養殖技術の高度化が不可欠です。」
 

さらに具体例を挙げる。
 

「環境に負荷をかけない人工種苗の利用、赤潮を起こさない養殖、魚由来ではなく植物由来の餌の開発…。そして、それらを可能にするのが、デジタル技術による精密な管理です。消費者は“その魚がどこで生まれ、何を食べ、どんな環境で育ったか”まで知りたがる時代なんです。」
 

「牛肉、豚肉、鶏肉と同じ考え方かぁ…」と大杉主任がつぶやく。
 

「その通り!」教授は即答した。

 

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ながさき海環境資源研究センター

 

長崎市内から車でおよそ30分。新長崎漁港に到着すると、上田所長が言った。
「お昼はここで食べましょう。」

 


案内されたのは「長崎水産食堂」。周囲には鮮魚店や魚料理の店が軒を連ね、地元客でごった返している。
威勢のいい声、陽の光を反射する魚の鱗──漁港特有の熱気が空気を満たしていた。
 

「こういうお店が集まって、街の真ん中に“お魚マルシェ”ができたら素敵ですよねぇ。」と天野次長が店の前でつぶやく。

 


「次長~、何してるんですか。入りましょ、入りましょ!」
大杉主任に促され、天野次長も笑顔で店に入った。

 

 


約束の14時。
二人は長崎海洋大学の「ながさき海環境資源研究センター」を訪ねた。
ここは、東シナ海の環境変動を科学的に把握し、その影響を多角的に検証する研究拠点だ。分野を越えた研究者たちが力を合わせ、持続可能な海の未来を探っている。


名刺交換と簡単な挨拶を終えると、本題に入る。
モデレーター役は上田所長が買って出た。

 

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