新幹線が運んできたチャンス
9月も下旬となり、ようやく夏の暑さも収まってきた。
週明け恒例の案件ミーティングが静かに始まる。
一通りの報告が終わったところで、千﨑部長が姿勢を正した。
「ひとつ、私から。国からの委託調査案件が来ています。テーマは――西九州新幹線開業後の、関係自治体への影響調査です。
ただ、本格的な広域調査ではありません。ピンポイント調査で構わないとのこと。イメージとしては佐賀県内を中心に……どなたか、担当してくれませんか?」
短い沈黙。だが次の瞬間、天野次長が手を挙げた。
「私が、担当します。」
語尾は落ち着いていて、迷いがない。
「前回の長崎出張で西九州新幹線には実際に乗りましたし、非常に興味のあるテーマです。」
「……なるほど。では天野次長にお願いしましょう。補佐は――大杉主任でよろしいですか?」
「もちろんですっ!」と、大杉主任が即座に答えた。
そして、少し間を置いてから笑顔で付け足す。
「逆に私からも部長にお願いがあるんですが……せっかく西九州に出張するなら、長崎まで足を延ばして、前にご報告した“ながさきオーシャン・エコノミー”について、実地で見てこようかと思います。よろしいでしょうか?」
「……ああ、魚の陸上養殖とかの話だったね?」と千﨑部長が思い出しながら頷く。
「はい。今、企画を進めている『長崎お魚マルシェ』にも関わってくる可能性がありますし、百聞は一見にしかず、です。」
「わかりました。佐賀一泊、長崎一泊。訪問先の調整やアポはご自身でお願いします。」
「承知しました。」
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