冗談はそれくらいにして
俺は、さらに踏み込んでみた。
「……実際の聖光学院って、男子の中高一貫校で、毎年東大をはじめとする難関大に大量合格者を出す“超”進学校ですよね。──『神山まるごと高専』も、いずれはああいう学校に……したいと?」
わずかに沈黙が流れたあと──
御上校長は、突然笑みを浮かべた。

「……いえいえ。山本さん。もう冗談はそれくらいにしてください」
声の調子が、高くなった。
「……千﨑さんから、私のことは聞いているはずです。ここからは、私の方からお話しさせていただいても、よろしいでしょうか?」
──空気が変わった。
「失礼しました。私、ドラマ『御上先生』が好きすぎて、つい調子に乗ってしまいました」
俺が頭を下げると、赤木さんが苦笑いを浮かべた。
「いやぁ……本当かと思って、びっくりしましたよ」
穏やかな空気が一瞬戻ったが、御上氏はそのまま真顔で口を開いた。
「……実を言うと、私がここに来た理由は、“教育現場の経営”を学び直すためです。経産省時代、何度も“教育改革”の施策に関わってきました。ですが、それは常に制度と数字の話でしかなかった。現場が何を感じ、何に悩み、何を犠牲にしているのか──私は見えていなかったんです」
「だから、ここに?」
「ええ。神山という場所は、挑戦には最高のフィールドです。都市型の競争とは違う文脈で、“生きた教育”ができる。だからこそ私は、経産省という枠を外れてでも、この地に身を置こうと思ったのです」

彼の口調は穏やかだが、ひとつひとつの言葉が重たかった。
「神山まるごと高専は、進学校を目指しているのではありません。社会とつながる“創造の場”をつくるための学校です」
その瞬間、俺は少しだけ──彼の本気を見た気がした。
このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。