地域戦略部には戦略が無い(160)御上校長はかく語る。 | cb650r-eのブログ

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御上校長はかく語る。

 

御上校長が、静かに話し始めた。

 



「経産省が“令和の教育改革”として打ち出したのが、『未来の教室』というプロジェクトです。──文科省の管轄とされてきた教育の領域に、経産省がここまで本格的に入り込むのは、極めて異例のことでした」

そこには明らかな決意がこもっていた。

「教育改革というのは、ひとつの省庁の中だけでは完結しません。社会の構造全体を見据えて、領域横断で進めるべきものなんです」

そう前置きした上で、彼は言葉を続けた。

「2017年、経産省に新設されたのが『教育産業室』。私も創設メンバーとして関わりました。その使命は──学校教育と民間教育サービスの間に橋をかけ、子どもたちが“自分の人生を自分で選べる”社会を支える、新しい学びの姿をつくることでした」

「なるほど……」

「これまでの教育は、“言われたことを正しくやる”ことが評価される世界でした。でも、これからの社会では、“自分で選び、自分で動く”ことが求められる。だから私たちは──みんなに同じお弁当を出す“幕の内型”の教育から、好きなものを自由に選べる“ビュッフェ型”への転換を目指したのです」

言葉のひとつひとつが、現場での実践を前提にした、骨太の理念に裏打ちされているのが伝わってきた。

「その実現のためには、ICTの活用が不可欠です。たとえば、プログラミングや創造的な“ものづくり”を選択肢として提供し、さらに学校の外にも学びの場を広げる。──いわば、“公教育プラスアルファ”の環境づくりが求められています」

「……なるほど。GIGAスクール構想も、まさにその一環ですね」

俺がそう返すと、御上校長は静かにうなずいた。

「そうです。文科省が主導するGIGAスクール構想──すべての子どもに一人一台のPCを配布する政策は、すでに全国に端末が行き渡り、次のステージに入りました。つまり、“どう使うか”が問われる段階です」

「使い方次第で、教育そのものが変わる……」

「はい。そして、私たちが取り組んでいるのは、まさにその“変わりゆく教育のあり方”を、この神山の地で実装することなんです」

御上校長の声には、一切の迷いがなかった。

 

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