意外とホントかも…。
構内に、博多行き新幹線のアナウンスが流れる。
「さあ、大阪へ帰りましょう」
「地域戦略部へのお土産のカステラは、文明堂と福砂屋、両方買いましたよ」
大杉主任が胸を張って報告する。

「湯村社長が言ってたんですけど――
お祝いの場には『文明堂』、お詫びの場には『福砂屋』を持っていくのが長崎の決まりごとだそうですよ」
大杉主任が真顔で言う。
「そんなの、ウソに決まってるじゃないの。ウソ、ウソ」
天野次長は吹き出しそうになりながら言った。
「え~、私騙されたんですか~」
大杉主任が嘆く。
「でも、全くのウソでもないかもしれないわねぇ。
――ザラメ砂糖の甘みが、怒りをやわらげるとか…」
そう言って天野次長は微笑み、「かもめ号」の扉をくぐった。
二人を乗せた「かもめ号」は、静かに発車した。
美しい稲佐山の夜景を、そっと車窓の向こうに置いたまま――。
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